抗血栓トライアルデータベース
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COMMAND VTE Registry
結論 静脈血栓塞栓症(VTE)患者において,抗凝固療法の期間はばらつきが大きく,現行のガイドラインと異なっていた。抗凝固療法の至適期間は,VTE再発,出血,死亡リスクにもとづくべきである。
コメント わが国におけるVTE患者3,027例についての後ろ向きコホート研究であり,がん患者,一過性リスク患者,unprovoked患者の3群間での治療内容や予後が比較されている。がん患者において,VTE再発や大出血発生率,死亡率が高かった点はこれまでの報告と同様であるが,意外な結果としては,がん患者は3群の中で抗凝固療法継続期間がもっとも短かった。これは,がん患者での出血性合併症の発生を危惧しての結果と思われる。また,unprovoked患者において抗凝固療法中止後のVTE再発率が高率であることは,これまで欧米では示されていたが,今回日本人でも示されたことは意義深い。わが国での抗凝固療法継続期間を考えるうえで,おおいに参考となる研究結果といえる。(山田典一

目的 VTEは長期再発リスクがあるが,抗凝固療法により予防できる可能性がある。ただし,抗凝固療法の至適期間については明らかになっておらず,日常臨床では期間に幅がみられる。本研究では,リアルワールドの急性症候性VTE患者連続例において,臨床特性,治療の管理,長期転帰を検討した。主要評価項目:VTE再発。副次評価項目:ISTH大出血および全死亡。
デザイン 後ろ向きコホート研究。
セッティング 多施設(29施設),日本。
期間 登録期間は2010年1月~2014年8月。追跡期間中央値1,218日。
対象患者 3,027例。症状発現から31日以内,画像検査(超音波,造影CT,換気-血流肺シンチグラフィ,肺動脈造影,静脈造影)または剖検により客観的に診断された急性症候性VTE患者連続例。
【除外基準】-
【患者背景】平均年齢は一過性リスク群65.7歳,特発性VTE群68.3歳,悪性腫瘍群66.5歳*。各群の女性71%,57%,60%*。BMI(kg/m2)23.5,23.6,22.1 *。慢性腎臓病15%,22%,17%*。脳卒中既往12.6%,8.5%,5.2%*。心房細動5.4%,4.0%,3.5%。VTE既往0%,9.3%,5.8%*。大出血既往10.8%,4.5%,10.4%**p<0.001
治療法 悪性腫瘍を有する患者を悪性腫瘍群(695例[23%]),悪性腫瘍がなく,VTEの一過性リスクもVTE既往もない患者を特発性VTE群(1,477例[49%]),一過性リスクを有する患者を一過性リスク群(855例[28%])とした。
急性期以降に抗凝固療法が行われたのは一過性リスク群92%(warfarin 86%,直接作用型経口抗凝固薬3.2%,未分画heparin 2.7%),特発性VTE群95%(92%,2.1%,0.5%),悪性腫瘍群88%(83%,2.9%,2.6%)。
追跡完了率 1年後95.1%。
結果

●評価項目
1年後の抗凝固療法の中止率は,悪性腫瘍群がもっとも高かった(一過性リスク群37.3%,特発性VTE群21.4%,悪性腫瘍群43.5%,p<0.001)。
5年後のVTE再発,大出血,全死亡の累積発生率は,悪性腫瘍群がもっとも高かった(すべてp<0.001)。
VTE再発:一過性リスク群7.9%,特発性VTE群9.3%,悪性腫瘍群17.7%。
大出血:9.0%,9.4%,26.6%。
全死亡:17.4%,15.3%,73.1%。
抗凝固療法中止後から3年後のVTE累積再発率は,一過性リスク群がもっとも低かった(一過性リスク群6.1%,特発性VTE群15.3%,悪性腫瘍群13.2%,p=0.001)。
4年後のVTE累積再発率について,1年後の抗凝固療法継続の有無により解析を行った。特発性VTE群では,抗凝固療法非継続例(12.2%)のほうが継続例(3.7%)にくらべ,再発率が有意に高かった(p<0.001)。一過性リスク群(2.5%,1.6%,p=0.30),悪性腫瘍群(8.6%,5.6%,p=0.44)では,継続の有無による差異はみられなかった。

●有害事象

文献: Yamashita Y, et al.; COMMAND VTE Registry Investigators. Anticoagulation Therapy for Venous Thromboembolism in the Real World - From the COMMAND VTE Registry. Circ J 2018; 82: 1262-1270. pubmed
関連トライアル CATCH, Martinez C et al, PADIS-PE, SWIVTER
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