抗血栓トライアルデータベース
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ASPREE cardiovascular events and bleeding
結論 高齢者における一次予防としての低用量aspirin使用はプラセボにくらべ,大出血リスクを上昇させ,心血管疾患リスクは低下させなかった。
コメント 3部作のうち,2次エンドポイントである心血管疾患と重篤な出血性副作用についてのデータである。アスピリン群は,脳出血,心不全も含めた複合心血管イベント発症率は,対照群と同等(HR 0.95)であった。アスピリンの抗血栓効果が期待できる心筋梗塞,虚血性脳卒中の発症に限っても約10%の減少であったが,有意差は得られなかった。試験前,対照群の発症率を年間2%と推定していたが,実際にはその半分程度で,アスピリンの効果が期待できる十分なハイリスク集団ではなかったことが原因として考えられる。逆に,出血性副作用は高齢者集団であるがために,アスピリン群で38%増加し,頭蓋内出血は50%,上部消化管出血は90%増加した。これらのデータは,最近のprimary preventionの成績と一致しており,アスピリンを降圧薬やスタチンと同様に,一般的な抗血栓予防薬としてこれらと併用して処方することは少なくとも推奨されない。アスピリンをすでに長年服用しているハイリスク高齢者に対して,ただちにアスピリンを中止するかどうかについては,現段階では明確な解答はない。(島田和幸

目的 aspirin投与は心血管イベント二次予防の確立された治療法である。しかし,特にリスクが上昇している高齢者においては,aspirinによる心血管疾患一次予防の役割は不明である。本解析では,事前に定められた副次評価項目(心血管疾患[致死的冠疾患+非致死的心筋梗塞+致死的/非致死的脳卒中+心不全による入院]ならびに大出血[出血性脳卒中+症候性頭蓋内出血+臨床的に重篤な頭蓋外出血])に焦点を当て,解析を行った。また,事前に定められたものではないが,主要有害心事象(致死的冠疾患[心不全死を除く]+非致死的心筋梗塞+致死的/非致死的脳梗塞)についても検討した。
デザイン ランダム化,プラセボ対照,二重盲検試験。NCT01038583。
セッティング 多施設,2ヵ国(米国,オーストラリア)。
期間 登録期間は2010年3月~2014年12月。追跡期間中央値4.7年。
対象患者 19,114例。70歳以上(米国では黒人・ヒスパニック系は65歳以上),明らかな冠疾患/明らかな脳血管疾患/心房細動/認知症の臨床診断/臨床的に重篤な身体的障害/出血高リスク/貧血/既知のaspirin禁忌または摂取不能のない地域社会住民。
【除外基準】aspirin以外の抗凝固薬または抗血小板薬使用,SBP≧180mmHgまたはDBP≧105mmHg,aspirinを定期的に使用する臨床的病態または禁忌を有する,推定余命5年以内。
【患者背景】年齢≧74歳はaspirin群50%,プラセボ群50%。各群の男性44%,44%。黒人5%,5%。肥満30%,30%。糖尿病11%,11%。高血圧74%,75%。脂質異常症65%,66%。慢性腎臓病26%,26%。定期的なaspirin使用歴11%,11%。
治療法 以下の2群にランダム化。
aspirin群:9,525例。100mg腸溶錠投与。
プラセボ群:9,589例。
追跡完了率 追跡不能はaspirin群1.5%,プラセボ群1.6%。
結果

●評価項目
心血管疾患はaspirin群10.7件/1,000人・年,プラセボ群11.3件/1,000人・年発症した(HR 0.95,95%CI 0.83- 1.08)。
主要有害心血管事象:7.8件/1,000人・年,8.8件/1,000人・年,HR 0.89,95%CI 0.77-1.03。
致死的心血管疾患:1.8件/1,000人・年,1.9件/1,000人・年,HR 0.97,95%CI 0.71-1.33。
心不全による入院:2.1件/1,000人・年,1.9件/1,000人・年,HR 1.07,95%CI 0.79-1.44。
致死的/非致死的心筋梗塞:4.0件/1,000人・年,4.3件/1,000人・年,HR 0.93,95%CI 0.76-1.15。
致死的/非致死的脳梗塞:3.5件/1,000人・年,3.9件/1,000人・年,HR 0.89,95%CI 0.71-1.11。

大出血は8.6件/1,000人・年,6.2件/1,000人・年(HR 1.38,95%CI 1.18-1.62,p<0.001)であった。
出血性脳卒中:1.0件/1,000人・年,0.8件/1,000人・年,HR 1.27,95%CI 0.81-2.00。
上部消化管出血:2.1件/1,000人・年,1.1件/1,000人・年,HR 1.87,95%CI 1.32-2.66。
頭蓋内出血:2.5件/1,000人・年,1.7件/1,000人・年,HR 1.50,95%CI 1.11-2.02。

●有害事象

文献: McNeil JJ, et al.; ASPREE Investigator Group. Effect of Aspirin on Cardiovascular Events and Bleeding in the Healthy Elderly. N Engl J Med 2018; 379: 1509-18. pubmed
関連トライアル AAA, AAASPS 2003, ACTIVE A, APPRAISE, APPRAISE-2, ARRIVE, ASCEND, ASPIRE, aspirinの一次および二次予防効果(ATT), ATACAS, ATLAS ACS 2-TIMI 51, CHANCE, CHARISMA, CLARITY-TIMI 28, COGENT, COMPASS, COMPASS CAD, COMPASS PAD, CURE, DAPT, DAPT BMS or DES, ECLAP, EUCLID, GEMINI-ACS-1, HOT post-hoc subgroup analysis, JPAD, JPAD2, JPPP, NAVIGATE ESUS, OXVASC age-specific risks of bleeding, PEGASUS-TIMI 54, PEGASUS-TIMI 54 prevention of stroke, POINT, POISE-2, RE-DUAL PCI, Selak V et al, SOCRATES, SPS3, TPT, TRA 2P-TIMI 50, TRACER, TRILOGY ACS, TRILOGY ACS elderly patients, TRITON-TIMI 38, WARCEF, WARFASA, WASID, WAVE, WHS, 血管イベントおよびがんに対するaspirinの有効性:体重と用量別の解析
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