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ASPREE Aspirin in Reducing Events in the Elderly
結論 健康な高齢者における5年間のaspirin使用は,障害のない生存期間を延長せず,大出血発症率はプラセボ群より高かった。
コメント 1980年代初頭,アスピリンが“魔法の薬”ではないかと騒がれていた頃,僻地診療に従事する若い医師が,健康な村人全員に低用量アスピリンを投与するというアイデアを述べていたのを聞いたことがある。ASPREEは,70歳以上の健常高齢者に対する低用量アスピリンの効果を検証したものであり,死亡率,認知症,日常生活に支障をきたす「身体的障害」の3つを複合エンドポイントとしているところがユニークで,この年齢層に相応しいアウトカムターゲットである。しかし,低用量アスピリンの抗血栓効果が理論的にはあくまでも血管疾患が対象であることを考えると,本研究のプライマリーエンドポイントは,若干飛躍しすぎたきらいがある。実際に生じた複合エンドポイントの中身は,半分は死亡で,認知症30%,身体的障害20%であった。果たして結果はネガティブであったが,ある意味では“妥当”な結末である。もしもポジティブになっていれば,アスピリンがアンチ・エイジングのチャンピオンになったかも知れない。
アスピリンのエビデンスとしては,急性期の致死的虚血性心疾患の予後改善がもっとも劇的で確実である。続いて慢性期の虚血性疾患の再発予防に対象が拡大され,現在では,心筋梗塞や脳卒中後に半永久的にアスピリンを投与することが行われている。虚血性疾患未発症の一次予防については,一定の虚血リスク(たとえば年間2%以上の発症リスク)以上で,アスピリンの血栓予防が出血性副作用を上回ると計算されている。わが国のJPPPや最近のアスピリン一次予防試験(ARRIVEASCEND)は,血圧や糖脂質代謝などのリスク因子に対する介入が浸透した結果,一次予防対象者のリスクがこのレベルを下回り,アスピリンの出番が縮小しつつあるのが現状である。むしろ,アスピリンは,現在血栓とは別に,新たに「がん予防」に対して注目されているのだが,ASPREEは,この領域においても冷や水を投げかける結果となった。本論文は3部作であり,他の二つの論文で,このへんのことが扱われている。(島田和幸

目的 高齢者において,健康寿命を延ばすためのaspirin使用に関する情報は不足している。本試験では,健康な高齢者に対し,低用量aspirinの5年の投与が障害のない生存期間を延長するか検討を行った。主要評価項目:死亡,認知症,持続する身体的障害の複合。
デザイン ランダム化,プラセボ対照,二重盲検試験。NCT01038583。
セッティング 多施設(50施設),2ヵ国(米国,オーストラリア)。
期間
対象患者 19,114例。70歳以上(米国では黒人・ヒスパニック系は65歳以上),生存期間を<5年に制限しうる慢性疾患がなく,心/脳血管疾患もない地域社会住民。
【除外基準】認知症,出血高リスク,aspirin禁忌,修正Mini-Mental State Examination<78点,Katz ADL Index 4~5点。
【患者背景】年齢65~73歳はaspirin群49.5%,プラセボ群50.3%,≧74歳50.5%,49.7%。各群の女性56.4%,56.4%。国:オーストラリア87.4%,87.4%,米国12.6%,12.6%。白人:オーストラリア85.8%,85.4%,米国5.7%,5.7%,黒人4.7%,4.7%,ヒスパニック系2.5%,2.6%。現喫煙3.7%,4.0%。糖尿病10.8%,10.7%。高血圧74.2%,74.5%。定期的なaspirin使用歴11.1%,10.9%。
治療法 プラセボを4週間投与し(run-in期間),アドヒアランスが≧80%であった者について,施設,年齢で層別化後,以下の2群にランダム化した。
aspirin群:9,525例。100mg腸溶錠投与。
プラセボ群:9,589例。
追跡完了率
結果

●評価項目
本試験は,aspirinの使用は主要評価項目に関しベネフィットがある可能性はきわめて低いとの判断がなされた後,追跡期間中央値4.7年経過時に中止となった。
主要評価項目発症率はaspirin群21.5件/1,000人・年,プラセボ群21.2件/1,000人・年,HR 1.01,95%CI 0.92-1.11,p=0.79。
最後の12ヵ月間における割り付けられた治療へのアドヒアランスはaspirin群62.1%,プラセボ群64.1%。
全死亡はaspirin群12.7件/1,000人・年のほうがプラセボ群11.1件/1,000人・年にくらべ多かった。
認知症,身体的障害については,両群に差異はみられなかった。
大出血はaspirin群のほうが高かった(3.8% vs. 2.8%,HR 1.38,95%CI 1.18-1.62,p<0.001)。

●有害事象

文献: McNeil JJ, et al., ASPREE Investigator Group Effect of Aspirin on Disability-free Survival in the Healthy Elderly. N Engl J Med 2018; 379: 1499-508 . pubmed
関連トライアル AAA, AAASPS 2003, ACTIVE A, APPRAISE-2, ARRIVE, ASCEND, ASPIRE, ATACAS, AVERROES, CASISP, CASPAR , CHAMPION PLATFORM, CHANCE, CHARISMA, CLARITY-TIMI 28, COGENT, COMPASS, COMPASS CAD, COMPASS PAD, CREDO, DAC, DAPT, DAPT BMS or DES, ECLAP, EUCLID, GEMINI-ACS-1, HOT post-hoc subgroup analysis, JPAD, JPPP, NAVIGATE ESUS, OXVASC age-specific risks of bleeding, PEGASUS-TIMI 54, PEGASUS-TIMI 54 prevention of stroke, POINT, POISE-2, PRISMS, PRoFESS, PRoFESS disability and cognitive function, PURSUIT 1998, RE-DUAL PCI, Selak V et al, SOCRATES, SPS3, TPT, TRA 2P-TIMI 50, TRACER, TRILOGY ACS elderly patients, TRITON-TIMI 38, WARCEF, WARFASA, WARSS, WASID, WHS
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