抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
Chen YL et al Clinical outcomes of solitary atrial flutter patients using anticoagulation therapy: a national cohort study.
結論 抗凝固療法をうけていない孤立性心房粗動(AFL)患者は,心房細動(AF)が発症したAFL患者より臨床転帰が良好であった。抗凝固療法をうけている孤立性AFL患者は,CHA2DS2-VAScスコア≧3では,抗凝固療法をうけていない患者より脳梗塞の発症率が低かった。抗凝固療法は,同スコア≧4の孤立性AFL患者で正味のベネフィットが得られる可能性がある。
コメント 台湾の国民医療保険データベースより,孤立性AFL,孤立性AF,AFを発症したAFLの3群で抗凝固療法の有用性を検討した研究である。結論として,CHA2DS2-VAScスコア4点以上のAFL患者では,複合エンドポイント(脳梗塞+全身性塞栓症+大出血)の発症率が抗凝固療法群で低く,そのメリットが得られる可能性があるとしている。これまで,AFLの抗凝固療法はAF患者に準じて行うことが推奨されていたが,これは主として専門家の意見にもとづくものであった。今回の研究は,AFLの抗凝固療法に一定の指針を示すものとなろう。ただ,今回のデータは主としてワルファリン時代の解析であり,NOACでどうなるかは示されていない。また,TTRについてのデータはなく,コントロールがどれくらいであったかは不明である。さらに,AFL症例でアブレーションをされたかどうかについてはわからず,本研究の限界の1つとしてあげられる。(是恒之宏

目的 AFL患者のリスク層別化や管理は,AF患者と同様に行うことが推奨されている。しかし,推奨はおもに専門家の意見にもとづくもので,またAFL患者とAF患者では予後が異なる。さらに,AFが発症したAFL患者はAF患者と同程度に脳卒中が発症するが,CHA2DS2-VAScスコアで層別化しても発症率が同程度であるかは不明である。本試験では,(1)抗凝固療法をうけていない孤立性AFL,孤立性AF,AFが発症したAFL患者における転帰の差異,ならびに(2)孤立性AFL患者における抗凝固療法の有効性と安全性を検討した。
デザイン 観察コホート研究。
セッティング 多施設,台湾。
期間 登録期間は2001年1月1日~2012年12月31日。平均追跡期間2.88年。
対象患者 台湾の国民医療保険データベースに登録されている,新規にAF/AFLと診断された患者295,706例のうち,(1)抗凝固療法をうけている242,926例(孤立性AFL群8,064例,孤立性AF群230,367例,AFが発症したAFL群4,495例),(2)孤立性AFL患者8,764例(抗凝固療法群700例,抗凝固療法なし群8,064例)。
【除外基準】<20歳,AFLの既往があるAF。
【患者背景】平均年齢*は孤立性AFL患者67.7歳,孤立性AF患者73.3歳,AF発症AFL患者69.8歳。それぞれの男性*60.5%,54.5%,62.5%。合併症:高血圧*52.5%,56.6%,56.7%,糖尿病(p=0.002)19.0%,18.5%,16.6%,虚血性心疾患*34.6%,37.7%,38.9,心不全*13.4%,14.6%,10.7%,脂質異常症*11.6%,10.1%,9.5%,慢性腎臓病*15.7%,15.1%,11.5%。既往:脳梗塞*12.8%,17.6%,14.6%,全身性塞栓症(p=0.02)1.8%,2.2%,1.8%,頭蓋内出血*2.4%,2.5%,1.6%,大出血*10.6%,11.4%,7.2%。平均CHA2DS2-VAScスコア*2.9,3.4,3.0,平均HAS-BLED出血リスクスコア*2.1,2.3,2.3。*p<0.001
治療法
追跡完了率
結果

●評価項目
(1)孤立性AFL,孤立性AF,AF発症AFL患者における転帰
[脳梗塞]孤立性AF群,AF発症AFL群は孤立性AFL群にくらべ,脳梗塞発症率が高かった。
孤立性AF群:階層化(S)HR 1.68,95%CI 1.54-1.83,p<0.001。
AF発症AFL群:SHR 1.82,1.63-2.04,p<0.001。
[大出血]孤立性AF群,AF発症AFL群は孤立性AFL群にくらべ,大出血発症率が高かった。
孤立性AF群:SHR 1.23,1.13-1.34,p<0.001。
AF発症AFL群:SHR 1.15,1.02-1.30,p=0.021。

(2)孤立性AFL患者における抗凝固療法
[CHA2DS2-VAScスコア≧3]脳梗塞発症率は,抗凝固療法群のほうが抗凝固療法なし群にくらべ低かった(SHR 0.58,0.38-0.88,p=0.010)。
頭蓋内出血発症率は,抗凝固療法群のほうが非抗凝固療法群にくらべ高かった(SHR 2.48,1.39-4.42,p=0.002)。
[CHA2DS2-VAScスコア≧4]脳梗塞+全身性塞栓症+大出血の発症率は,抗凝固療法群のほうが非抗凝固療法群にくらべ低かった(SHR 0.68,0.50-0.93,p=0.014)。

●有害事象

文献: Chen YL, et al. Clinical outcomes of solitary atrial flutter patients using anticoagulation therapy: a national cohort study. Europace 2018; : . pubmed
関連トライアル CHA2DS2-VASc 1点の心房細動患者における脳梗塞リスク, Lip GY et al, ORBIT-AF bridging
関連記事