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ASCEND A Study of Cardiovascular Events in Diabetes
結論 明らかな心血管イベントのない糖尿病患者において,aspirinは重篤な血管イベントを抑制したが,大出血が増加した。aspirinの絶対ベネフィットは出血の害により大きく相殺された。
コメント  アスピリンの心血管疾患発症に対する血栓抑制効果は,元々の基礎リスクの大きさに依存する。その効果が,重篤な出血性副作用の増加をどれだけ凌駕するか,もしくはしないかが推定できれば,アスピリンの臨床的有用性を判断できる。本試験は,このような理論を明確に意識してデザインされ,実行されている。すなわち,①総数15,000人を7.5年間ほぼ完全に追跡し,②脳出血(頭蓋内出血)は有効性アウトカムではなく,重篤な糖尿病性眼内出血とともに安全性評価項目に含め,③一次有効性評価項目に途中でTIAを追加することで,④一次評価項目を構成する個々のイベント別には有意なものはなかったが,複合エンドポイントで12%の有意な減少を“ついに示す”ことができた。一方,出血性副作用は,アスピリンによって29%増加し,実数的にも虚血イベント減少数をほぼ相殺した。眼内出血は増加せず,頭蓋内出血,特に消化管その他の出血が有意に増加した。
 本試験の結果は,現在のアスピリンの一次予防ガイドラインを変えるものではないかもしれないが,虚血リスクと出血リスクの兼ね合いで,個々の糖尿病患者に対するアスピリン投与を考慮する際に大いに参考になる。(島田和幸

目的 糖尿病は心血管イベントリスク上昇と関連している。aspirinは閉塞性血管イベントリスクを低減するが,出血リスクが上昇する。糖尿病患者における初発心血管イベント予防のリスク・ベネフィットのバランスは不明である。そこで,明らかな心血管疾患のない糖尿病患者において,aspirinの有効性および安全性をプラセボと比較した。有効性主要評価項目:初発の重篤な血管イベント(非致死的心筋梗塞[MI]+非致死的脳卒中[頭蓋内出血を除く]+一過性脳虚血発作[TIA]+全血管死[頭蓋内出血を除く])。安全性主要評価項目:初発の大出血(頭蓋内出血+失明の恐れのある眼内出血+消化管出血+入院や輸血を要するか致死的なその他の出血)。副次評価項目:消化管がん。
デザイン ランダム化,2×2ファクトリアル試験(aspirinおよびω-3脂肪酸)。NCT00135226。
セッティング 多施設,英国。
期間 ランダム化期間は2005年6月~2011年7月。平均追跡期間7.4年。
対象患者 15,480例。≧40歳,糖尿病の診断をうけており,既知の心血管疾患がなく,抗血小板療法によるベネフィットが得られるかどうか不確実な患者を,地域の糖尿病患者登録または実地医家より特定。
【除外基準】aspirinの適応または禁忌,試験薬への5年以上のアドヒアランスは難しいと思われる病態を有する患者。
【患者背景】平均年齢はaspirin群63.2歳,プラセボ群63.3歳。各群の男性62.6%,62.5%。白人96.5%,96.5%。現喫煙8.3%,8.3%,喫煙経験45.6%,45.5%。高血圧61.6%,61.6%。スクリーニング前のaspirin使用35.4%,35.8%。2型糖尿病94.1%,94.1%。
治療法 8~10週のrun-in期間後,以下の2群にランダム化。
aspirin群:7,740例。100mg 1日1回投与。
プラセボ群:7,740例。
追跡完了率 99.1%。
結果

●評価項目
ω-3脂肪酸についても同様にランダム化が行われ,両群に有意差は認められなかった(N Engl J Med 2018 Aug 26)。
有効性主要評価項目はaspirin群658例(8.5%)のほうがプラセボ群743例(9.6%)より抑制された(RR 0.88,95%CI 0.79-0.97,p=0.01)。
非致死的MI:191例(2.5%),195例(2.5%),RR 0.98,0.80-1.19。
非致死的脳梗塞:202例(2.6%),229例(3.0%),RR 0.88,0.73-1.06。
TIA:168例(2.2%),197例(2.5%),RR 0.85,0.69-1.04。
全血管死(頭蓋内出血を除く):197例(2.5%),217例(2.8%),RR 0.91,0.75-1.10。
安全性主要評価項目はaspirin群314例(4.1%)のほうがプラセボ群245例(3.2%)より多かった(RR 1.29,1.09-1.52,p=0.003)。出血部位は,消化管出血41.3%,失明の恐れのある眼内出血21.1%,頭蓋内出血17.2%,その他20.4%。
がんについての有意差はみられなかった。
消化管がん:aspirin群157例(2.0%),プラセボ群158例(2.0%),RR 0.99,0.80-1.24。
すべてのがん:897 例(11.6%),887例(11.5%),RR 1.01,0.92-1.11。

●有害事象

文献: ASCEND Study Collaborative Group. Effects of Aspirin for Primary Prevention in Persons with Diabetes Mellitus. N Engl J Med 2018; : . pubmed
関連トライアル AAA, APPRAISE, APPRAISE-2, ASPIRE, aspirinの一次および二次予防効果(ATT), aspirin連日投与による短期の癌発生,癌死,非血管死抑制効果, CHARISMA, COGENT, COMPASS, COMPASS, DAPT, Dutch-TIA Trial, EAFT 1993, ESPRIT , HOT post-hoc subgroup analysis, JPAD, JPAD2, JPPP, MATCH, NAVIGATE ESUS, OXVASC age-specific risks of bleeding, PEGASUS-TIMI 54, PEGASUS-TIMI 54 diabetic patients, PEGASUS-TIMI 54 peripheral artery disease, PEGASUS-TIMI 54 multivessel coronary disease, PEGASUS-TIMI 54 prevention of stroke, PRoFESS, SOCRATES, SOCRATES prior-aspirin usage, SOCRATES subgroup analysis, SPIRIT, SPS3, TRA 2P-TIMI 50 diabetes mellitus, TRA 2P-TIMI 50 previous myocardial infarction, WASID, WHS, 脳卒中/TIA後のDAPTによる二次予防
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