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ARRIVE Aspirin to Reduce Risk of Initial Vascular Events
結論 aspirinによる心血管イベント一次予防について,イベント発症率は想定より大幅に低かった。これは,今日のリスク管理ストラテジーを反映したためと考えられ,本試験はより低リスク患者を対象とすることとなった。本試験では,中等度リスク患者の一次予防におけるaspirinの有効性を示すことはできなかった。しかしながら,aspirinの有効性は最近出版された低リスク一次予防試験における結果と一致していた。
コメント アスピリンが虚血性脳・心血管疾患の再発予防に有効であることを確定したのは,ATT(Antithrombotic Trialists’ Collaboration)の二次予防試験のメタ解析による結果である。そのときの対照群は,血管イベント発症が年間2%かそれ以上に達する患者層であった。一方,脳・心血管疾患が未発症の患者に対しても,アスピリンが心血管疾患の発症予防に効果を示したのは,US Physicians’ Health Studyである。この試験は,心筋梗塞の発症抑制があまりに著明である一方,脳出血を増やす傾向があったために,予定より前に試験を中止した。それ以来,アスピリンの一次予防については,さまざまな臨床試験が実施され,結果は必ずしも一致していなかった。
本試験では,二次予防に近い一次予防,すなわち血管イベント未発症だが高齢,糖尿病など他のリスク因子を合併,多重リスク因子を保有するなど,年間1~2%の中程度の発症リスクを有する患者を対象とした。デザインや結果は,すでに報告されている本邦のJPPP試験とよく一致している。①プライマリーケアのセッティングで1万例を超える高齢者を対象,②あらかじめ想定していた発症リスクよりも実際のイベント発症は下回った(年間1%未満),③トータルとして心血管イベントの抑制効果は有意でなかった,④心筋梗塞発症に対しては予防傾向(per-protocol analysisで有意)を示したが,脳血管疾患には効果がなかった,⑤出血性副作用がアスピリンによって増加した,などが一致している。現在,「アスピリンの心血管疾患一次予防については,リスク/ベネフィット比からみて一概にガイドラインとしては薦められない」という風潮を本試験は支持するものとなった。(島田和幸

目的 aspirinによる心・脳血管イベント二次予防の有効性については確立されているが,一次予防については議論が分かれている。本試験では,初発心血管イベントリスクが中等度(糖尿病患者を除き,10年間の心血管リスクが10~20%)と推定される患者において,aspirinの有効性ならびに安全性をプラセボと比較した。有効性主要評価項目:心筋梗塞(MI),脳卒中,心血管死,不安定狭心症,一過性脳虚血発作(TIA)初発までの経過時間。安全性主要評価項目:出血イベント(GUSTO出血基準),その他の有害事象。
デザイン ランダム化,二重盲検試験。NCT00501059。
セッティング 多施設(501施設),7ヵ国(欧州,米国)。
期間 登録期間は2007年7月5日~2016年11月15日。追跡期間中央値60ヵ月。
対象患者 12,546例。≧55歳かつ2~4個のリスク因子(男性)または≧60歳かつ≧3個のリスク因子(女性)を有する患者。リスク因子の定義は,高コレステロール,喫煙,低HDLコレステロール,高血圧,心血管疾患家族歴とした。
【除外基準】血管イベント既往,抗血小板療法必要例,消化管または他部位出血高リスク(胃/十二指腸潰瘍,消化管出血既往を含む),抗凝固薬併用を要する,またはNSAIDsを頻回に使用する症例,糖尿病患者。
【患者背景】平均年齢はaspirin群63.9歳,プラセボ群63.9歳。各群の女性29.5%,29.6%。白人97.8%,97.9%。現喫煙28.8%,28.5%。平均BMI 28.3kg/m2,28.5 kg/m2。総コレステロール高値58.2%,58.3%。低HDL 13.7%,13.9%。高SBP 62.5%,62.9%。
治療法 以下の2群にランダム化。
aspirin群:6,270例。腸溶錠100mg 1日1回投与。
プラセボ群:6,276例。
追跡完了率
結果

●評価項目
主要評価項目はaspirin群269例(4.29%),プラセボ群281例(4.48%)で,同程度であった(HR 0.96,95%CI 0.81-1.13,p=0.6038)。
MI:95例(1.52%),112例(1.78%),HR 0.85,0.64-1.11,p=0.2325。
脳卒中:75例(1.20%),67例(1.07%),HR 1.12,0.80-1.55,p=0.5072。心血管死:38例(0.61%),39例(0.62%),HR 0.97,0.62-1.52,p=0.9010。不安定狭心症:20例(0.32%),20例(0.32%),HR 1.00,0.54-1.86,p=0.9979。
TIA:42例(0.67%),45例(0.72%),HR 0.93,0.61-1.42,p=0.7455。
全死亡:160例(2.55%),161例(2.57%),HR 0.99,0.80-1.24,p=0.9459。
消化管出血(ほとんどが軽度)はaspirin群61例(0.97%)のほうがプラセボ群29例(0.46%)より多かった(HR 2.11,95% CI 1.36-3.28,p=0.0007)。

●有害事象
重篤な有害事象(aspirin群1,266例[20.19%],プラセボ群1,311例[20.89%]),有害事象(5,142例[82.01%],5,129例[81.72%])は両群で同程度であった。両群における治療関連有害イベント発症率は低かったが,aspirin群で有意に多かった(1,050例[16.75%],850例[13.54%],p<0.0001)。

文献: Gaziano JM, et al.; ARRIVE Executive Committee. Use of aspirin to reduce risk of initial vascular events in patients at moderate risk of cardiovascular disease (ARRIVE): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet 2018; : . pubmed
関連トライアル AAA, ATLAS ACS-TIMI 46 , CASISP, COMPASS CAD, COMPASS PAD, CSPS 2, ESPRIT , GEMINI-ACS-1, JPAD2, JPPP, MATCH, PERFORM, PICASSO, SOCRATES subgroup analysis, TRA 2P-TIMI 50 previous myocardial infarction
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