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血管イベントおよびがんに対するaspirinの有効性:体重と用量別の解析
Effects of aspirin on risks of vascular events and cancer according to bodyweight and dose: analysis of individual patient data from randomised trials
結論 低用量aspirin(75~100mg)による血管イベント予防は,体重<70kgの患者でのみ有効であり,≧70kgの男性の80%,女性の50%ではベネフィットは認められなかった。対照的に,高用量aspirinは≧70kgの患者でのみ有効であった。がんを含む他の転帰に対するaspirinの有効性を考慮すると,身体サイズとの交互作用が認められた。全例に同じ用量のaspirinを投与するアプローチは至適ではなく,個々の患者にあわせたストラテジーが求められる。
コメント アスピリン服用中の血栓性疾患の発症は,アスピリンレジスタンスと称し,さまざまな解釈がなされてきた。これまで,ノンアドヒアランス,糖尿病における血小板活性化,腸溶錠の生体利用率低下などの他に体重(体のサイズ)のことが云々されてきた。本論文は,個人データに基づく大集団を集めたメタ解析で,現実に体重の影響があることをデータで示したものであり,画期的である。低用量アスピリンは70kgを境に,体重の重い人には効果を失う。すなわち,低用量アスピリンの量は,70kg以上の人には血小板を十分に不活化するのに不十分である。逆に高用量アスピリンは,70kg未満の人では効力を失う。すなわち,高用量アスピリンは血管系のプロスタサイクリン系を維持するためには,70kg未満の人には過剰である。このような仮説が立てられる。一方,低用量アスピリンの出血のリスク増加に関しては,90kg以上で消失する。つまり低用量アスピリンは,70~90kgの範囲では効力がなく,出血のリスクが増すということになる。したがって,リスクとベネフィットを考慮すると,単純に70kgを境に低用量と高用量を適用するというわけにもいかない。(島田和幸

目的 全例に同じ用量のaspirinを投与するアプローチは,身体が大きい患者では用量が過小,小さな患者では過大投与となることなどから,心血管イベント長期予防についてわずかなベネフィットしか得られない。本論文では心血管イベント一次予防のRCTより,患者個々のデータを用い,体重(10kgごと),身長(10cmごと)がaspirin低用量(≦100mg)・高用量(300~325mgまたは≧500mg)に及ぼす影響を解析した。また年齢,性別,血管リスク因子により結果を層別化し,aspirinによる脳卒中二次予防の試験での検証も行った。さらに,大腸がんの長期リスクに対するaspirinの影響についても検討した。
方法 Antithrombotic Trialists’(ATT),aspirinの試験に関する先行のシステマティックレビュー,Cochraneデータベースより,血管イベント一次予防についてaspirinを対照薬と比較した試験を検索。
対象:対象患者をaspirin(毎日/隔日)または非aspirinにランダム化した試験(ファクトリアル試験も対象とした),1,000例以上において脳卒中二次予防のためにaspirinを対照薬と比較した試験。
除外:追跡期間が短い試験(≦90日)。
対象 10研究(BDTPHSTPTWHS,POPADAD,AAAHOT PPPJPAD JPPP )。
主な結果 ・体重
体重は試験により約4倍の変動があり,中央値は60.0~81.2 kgであった(p<0.0001)。

・低用量aspirin(75~100mg)
低用量aspirinによる全心血管イベント抑制効果は,体重が増加するにつれて低下した(交互作用p=0.0072)。体重50~69kgではベネフィットがみられたが(HR 0.75,95%CI 0.65-0.85),≧70kgではみられなかった(HR 0.95,0.86-1.04)。初回心血管イベント致死率は,≧70kgでは低用量aspirinにより上昇した(OR 1.33,1.08-1.64,p=0.0082)。
低用量aspirinによる大出血リスク上昇は,体重≧90kgで消失した(交互作用p=0.024)。

・高用量aspirin(≧325mg)
高用量aspirinは体重と逆の交互作用があり(交互作用p=0.0013),心血管イベント抑制効果は高体重例でのみみられた(交互作用p=0.017)。

低用量,高用量の両方について,結果は男女,糖尿病,aspirin二次予防の試験,身長との関連(交互作用p=0.0025)で同様であった。

・大腸がん
低用量aspirinによる大腸がんの長期リスク低下は,高体重では消失した(<70kg:HR 0.64,0.50-0.82,≧70kg:HR 0.87,0.71-1.07,交互作用p=0.038)。

・身体のサイズによる解析
低体重例ではaspirinの過大投与による害がみられ,突然死リスクが上昇した(交互作用p=0.0018)。また,全死亡リスクはaspirin 75~100mgを服用していた<50kgの患者で上昇した(HR 1.52,1.04-2.21,p=0.031)。≧70歳では,3年のがんリスクはaspirin投与(HR 1.20,1.03-1.47,p=0.02)で上昇し,特に<70kg(HR 1.31,1.07-01.61,p=0.009),女性(HR 1.44,1.11-01.87,p=0.0069)で高かった。
文献: Rothwell PM, et al. Effects of aspirin on risks of vascular events and cancer according to bodyweight and dose: analysis of individual patient data from randomised trials. Lancet 2018; 392: 387-99. pubmed
関連トライアル AAA, aspirinの一次および二次予防効果(ATT), aspirinの糖尿病患者心血管イベント一次予防効果, aspirin長期連用による癌死リスク抑制効果, aspirin連日投与による癌転移抑制効果, aspirin連日投与による短期の癌発生,癌死,非血管死抑制効果, ENGAGE AF-TIMI 48 dose and outcomes, JPAD2, JPPP, OXVASC age-specific risks of bleeding, PICASSO, PPP, 脳梗塞再発予防におけるaspirin早期投与の効果
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