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TROPICAL-ACS age and outcomes
結論 P2Y12阻害薬のガイド下de-escalationの治療効果は患者の年齢に依存し,70歳以下では正味の臨床ベネフィットが認められた。70歳超におけるガイド下de-escalationの安全性・有効性はprasugrel投与と同程度であったが,患者数が少なかったため,更なる検討が必要である。
コメント  欧米のガイドラインでは,ACSのPCI後の抗血栓療法として,アスピリンに追加してクロピドグレルよりも強力なP2Y12阻害薬であるプラスグレルやチカグレロルを用いるDAPT療法を1年間継続することを推奨している。その場合,アスピリンとクロピドグレルの標準DAPT療法に比べて,出血性副作用と薬剤費用の増加が懸念される。そこで,易血栓傾向を過ぎたPCI後14日目の早期にプラスグレルをクロピドグレルに変更するde-escalation療法の有用性を検証した試験がTROPICAL-ACS試験である。その際,すべての症例に薬剤を変更するのではなく,クロピドグレルの薬効が低下している患者(対象者の40%)を血小板機能試験で抽出して(guided),6割の患者にクロピドグレルにスイッチした。結果は,de-escalationの非劣性が証明されたが(Lancet 2017; 390; 1747-57),本論文は,70歳を境とした年齢別の既定のサブ解析であり,ステップダウンの効果が若年程出血(軽症)イベントが少なく,有効であることを示唆したものである。年齢別解析といっても,高齢群の人数があまりにも少なく(70歳以上370例,70歳未満2240例),かつ高齢者には低用量(5mg)のプラスグレルを投与しており,本論文の大きな限界となっている。
 本邦における実臨床の状況とは,血小板機能検査を実施すること,プラスグレルの用量が異なっていること(10 or 5mg vs 3.75mg)など相当の違いがある。それ以前に,日本人の低血栓形成性,易出血性,クロピドグレル低反応性などの人種差もあり,虚血性心疾患に対するP2Y12阻害薬の種類による違いを知るためには,日本人を対象にした試験が必須である。(島田和幸

目的 PCIを施行する急性冠症候群(ACS)患者において,P2Y12阻害薬のガイド下de-escalationは有効な選択肢とされている。本ストラテジーの安全性・有効性は,患者の年齢により異なる可能性がある。本解析はTROPICAL-ACS試験の事前に定められたサブ解析として,抗血小板薬のガイド下de-escalationについて,年齢が臨床転帰に及ぼす影響を評価した。主要評価項目:12ヵ月後の心血管死+心筋梗塞+脳卒中+BARC出血基準タイプ≧2の出血
デザイン PROBE法。intention-to-treat解析。NCT01959451。
セッティング 多施設(33施設),複数国(欧州)。
期間 登録期間は2013年12月~2016年5月。
対象患者 2,610例。18~80歳,バイオマーカー陽性のACS患者をPCI成功後に登録。
【主要除外基準】一過性脳虚血発作(TIA)/脳卒中既往,抗凝固療法の必要性。
【患者背景】[70歳超]症例数は対照群176例,ガイド下de-escalation群194例。それぞれの平均年齢74.3歳,74.4歳。女性30.1%,30.4%。心筋梗塞既往13.1%,10.8%。糖尿病27.8%,27.3%。ヘモグロビン(g/dL)13.5,13.9(p=0.02)。
[70歳以下]症例数は対照群1,130例,ガイド下de-escalation群1,110例。それぞれの平均年齢56.0歳,56.3歳。女性20.4%,19.5%。心筋梗塞既往11.5%,10.7%。糖尿病21.1%,16.8%(p=0.01)。ヘモグロビン(g/dL)14.3,14.3。
治療法 以下の2群にランダム化。
ガイド下de-escalation群:1,304例。退院後,第1週はprasugrel 5または10mg/日,第2週はclopidogrel 75mg/日を投与。その後は血小板機能検査にもとづき,血小板反応が高ければprasugrelに戻り,血小板阻害が十分であればclopidogrelを継続した。
対照群:1,306例。prasugrel 5または10mg/日を12ヵ月投与。
本論文では,70歳以下2,240例(86%),70歳超370例(14%)に分けて解析を行った。
追跡完了率 12ヵ月後の追跡完了率は96%。
結果

●評価項目
主要評価項目は,70歳以下ではガイド下de-escalation群は対照群にくらべ抑制されたが,70歳超では同程度であった。70歳超は70歳以下にくらべ,絶対イベント発症率が高かった(p<0.0001)。
70歳以下:ガイド下de-escalation群5.9%,対照群8.3%,HR 0.70,95%CI 0.51-0.96,p=0.03,治療必要数(NNT)=42。
70歳超:15.5% vs 13.6%,HR 1.17,95% CI 0.69-2.01,p=0.56。
BARC出血基準タイプ≧2の出血について,70歳以下では数値的にはガイド下de-escalation群で抑制されたが,70歳超では有意差は認められなかった。
70歳以下:ガイド下de-escalation群3.9%,対照群5.6%,HR 0.69,95%CI 0.47-1.02,p=0.06。
70歳超:10.8% vs 9.1%,HR 1.23,95% CI 0.64-2.35,p=0.54。

年齢の影響を連続型変数として解析したところ,ガイド下de-escalation群は対照群にくらべ,年齢が下がるにつれて相対リスク減少の増加が認められた(交互作用p=0.02)。これは出血の有意な減少によるものであった。

●有害事象

文献: Sibbing D, et al., TROPICAL-ACS Investigators Age and outcomes following guided de-escalation of antiplatelet treatment in acute coronary syndrome patients undergoing percutaneous coronary intervention: results from the randomized TROPICAL-ACS trial. Eur Heart J 2018; : . pubmed
関連トライアル ANTARCTIC, APPRAISE-2 post hoc analysis, Elderly ACS 2 , GRAPE Registry, Ohya M et al, PRAGUE-18 one year outcomes, PRASFIT-ACS, PRODIGY impact of clinical presentation, SMART-DATE, TRANSLATE-ACS aspirin dose, TRILOGY ACS elderly patients, TRILOGY ACS prior clopidogrel, TRILOGY ACS secondary analysis , TRITON-TIMI 38, TRITON-TIMI 38 discharge aspirin dose, TRITON-TIMI 38 early and late benefits, TRITON-TIMI 38 PCI
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