抗血栓トライアルデータベース
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WAKE-UP
結論 発症時間が不明の脳卒中患者に対し,梗塞部位のMRI拡散強調画像(DWI)とFLAIR法のミスマッチにもとづいて行われたalteplase静注は,90日後の転帰は良好であったが,頭蓋内出血が数値的には多く発症した。
コメント 本研究は,MRIでDWI-FLAIRミスマッチを呈する発症時刻不明の虚血性脳卒中に対して,rt-PA静注療法の有効性を示した論文である。血管内治療で同様のエビデンスが示される中で,軽症~中等症で閉塞血管の有無を問わず有効性を示せた点で意義がある。登録患者のスクリーニングでは,約3分の2(63%)が除外された。その内訳は,明らかな病巣(FLAIR陽性)が半数(53%),虚血病巣不明(DWI陰性)が6分の1(16%),頭蓋内出血(10%)がおもな病態であり,臨床現場でも役立つ情報といえよう。(岡田靖

目的 現行のガイドラインでは,脳卒中に対する血栓溶解療法は,発症から4.5時間以内と確認できれば行うこととされている。本研究では,発症時間が不明,かつMRI上で最近の脳卒中が示唆される脳卒中患者に対し,alteplase静注が機能的転帰を改善するか検討した。有効性主要評価項目:90日後の転帰良好(modified Rankin Score(mRS) 0~1)。安全性主要評価項目:90日後の死亡および死亡+高度障害の複合(mRS 4~6)。
デザイン ランダム化,二重盲検,プラセボ対照試験。intention-to-treat解析。NCT01525290。
セッティング 多施設(61施設),8ヵ国(欧州)。
期間 登録期間は2012年9月24日~2017年6月30日。
対象患者 503例。18~80歳,脳卒中の臨床症状を呈し,脳卒中発症前は介助を必要とせずに日常生活が送れていた患者で,目覚めに症状が認められたか発症時間が不明,最後に健常な姿が確認されてから4.5時間以上(上限なし)経過している,DWIでは異常がみられるがFLAIR法では脳実質高信号域がみられない(脳卒中発症から4.5時間以内であることを示す)症例。
【除外基準】MRI上頭蓋内出血または中大脳動脈領域の1/3を超える病変,血栓除去術施行予定,重症脳卒中(National Institute of Health stroke scale(NIHSS) ≧25),発症時間不明以外にalteplaseへの禁忌を有する。
【患者背景】平均年齢はalteplase群65.3歳,プラセボ群65.2歳。それぞれの男性65.0%,64.3%。最後に健常な姿が確認されてから治療開始までの経過時間中央値10.3時間,10.4時間。高血圧53.1%,52.6%。糖尿病16.9%,15.7%。高コレステロール血症36.6%,34.1%。心房細動11.8%,11.6%。脳梗塞既往14.6%,12.4%。NIHSS中央値6,6。
治療法 年齢(≦60歳または>60歳),重症度(NIHSS≦10または>10)で層別化後,以下の2群にランダム化。
alteplase群:254例。0.9mg/kgを,10%はボーラス,残りは60分かけて静注。
プラセボ群:249例。
追跡完了率 intention-to-treat解析からの脱落は13例(alteplase群8例+プラセボ群5例)。
結果

●評価項目
本研究は800例の登録を予定していたが,503例登録後,研究資金の供給打ち切りのため,早期中止となった。
90日後の転帰良好はalteplase群131/246例(53.3%)で,プラセボ群102/244例(41.8%)にくらべ多かった(補正後OR 1.61,95%CI 1.09-2.36,p=0.02)。
90日後のmRS中央値は,alteplase群1,プラセボ群2(補正後OR1.62,1.17-2.23,p=0.003)。
90日後の死亡は,alteplase群で10例(4.1%),プラセボ群3例(1.2%)(補正後OR 3.38,0.92-12.52,p=0.07),mRS 4~6は33例(13.5%),44例(18.3%)(補正後OR 0.68,0.39-1.18,p=0.17)に認められた。
脳実質内出血(タイプ2)はalteplase群10例(4.0%)で,プラセボ群1例(0.4%)より多かった(補正後OR 10.46,1.32-82.77,p=0.03)。症候性頭蓋内出血に関しては,数値的にはalteplase群のほうが多かったが,どの出血基準でも有意差を認めなかった(SITS-MOST定義:2.0%,0.4%,補正後OR 4.95,95%CI 0.57-42.87,p=0.15)。

●有害事象
重篤な有害事象はalteplase群56例(22.3%),プラセボ群52例(21.3%)(p=0.83)。

文献: Thomalla G, et al.; WAKE-UP Investigators. MRI-Guided Thrombolysis for Stroke with Unknown Time of Onset. N Engl J Med 2018; : . pubmed
関連トライアル AbESTT-II, alteplase静注における治療時間の遅れ,年齢,脳卒中重症度の影響, Cappellari M et al, CLEAR III, ECASS, ECASS III, ECASS III additional outcomes, ENCHANTED, ENCHANTED prior antiplatelet therapy, ENCHANTED renal impairment, EPITHET, ESCAPE, HERMES, IST-3 18-month follow-up, IST-3 brain imaging signs, J-MARS, Kruetzelmann A et al, NOR-TEST, SITS-ISTR unknown-onset stroke, SITS-ISTR young patients, SWIFT PRIME, SYNTHESIS Expansion, 発症からalteplase静注までの時間と転帰
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