抗血栓トライアルデータベース
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メタ解析
PCI施行AF患者における2剤 および3剤抗血栓薬併用療法の比較
結論 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行後の心房細動(AF)患者において,抗血栓薬2剤併用療法(DAT)は抗血栓薬3剤併用療法(TAT)にくらべて,TIMI大/小出血が47%減少し,主要有害心イベント(MACE)は同程度であった。本研究より,PCI施行後の多くのAF患者では,DATはTATよりよい選択肢であることが示された。
コメント  心房細動になっても全員が脳卒中になるわけではない。PCI後の抗血小板療法を忘れても,全員が血栓イベントを起こすわけもない。日本では,心房細動患者の脳卒中発症率は年間2%程度,PCI後の血栓イベント発症率は年間0.2%程度との報告がある。各種のランダム化比較試験ではPT-INR 2~3を標的としたワルファリン,各種NOACともに年間2~3%,抗血小板薬を併用すれば年間0.5~1.5%に重篤な出血イベントが起こる。過去において,非可逆的な血栓イベントと輸血により復活できる出血イベントを同一に扱うべきではないとの議論があった。しかし,24時間以上持続する神経学的巣症状にて定義された脳卒中,バイオマーカーの上昇で定義された心筋梗塞はいずれも「非可逆的病態」と言えない時代となった。輸血で回避できると思った重篤な出血イベント後の死亡率が高いこともわかってきた。時代は血栓イベント予防から,出血も含めた総イベント予防にシフトしている。
 ランダム化比較試験,そのメタ解析による標準治療の転換では個別症例がメリットを実感できない時代に,新しい医学の論理が必要である。(後藤信哉

目的 AF患者における抗血栓予防として経口抗凝固療法(OAC)は有効であるが,一部の患者には冠動脈疾患の併発によりPCIが施行され,抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を追加,すなわちTAT(OAC+DAPT)が適応される。TATでは出血が課題となる。これまで,多数の研究にてDAT(OAC+抗血小板薬単剤)とTATの比較が行われ,全体として,DATではTATにくらべ血栓塞栓イベントは同等,出血は約半数に低下したと報告されている。本研究では,それらの研究についてのシステマティックレビューおよびメタ解析を行った。安全性主要評価項目:TIMI出血基準大/小出血,有効性主要評価項目:MACE(定義は各試験により異なる)。   
方法 PubMed,Embase,EBSCO,システマティックレビューのコクランデータベース,Web of Scienceにて,それぞれの開始日から2017年7月25日まで検索。出版されているシステマティックレビュー/メタ解析における文献,主要関連学会抄録もスクリーニングした。言語の制限は設けなかった。
検索対象:AF診断後PCIを施行した患者におけるDATとTATを比較した第III相ランダム化試験。
除外:ランダム化されていない観察研究,登録研究,結果が出ていない進行中の試験,論説,症例シリーズ研究など。
対象 4試験(WOESTISAR-TRIPLEPIONEER AF-PCIRE-DUAL PCI)。
5,317例(DAT群3,039例,TAT群2,278例)。
患者背景:平均年齢はDAT群70.9歳,TAT群71.1歳。それぞれの女性25%,23%。当該イベント:急性冠症候群(ACS)47%,45%,非ACS 53%,55%。ステントの種類:薬剤溶出性ステント79%,79%,ベアメタルステント19%,19%。OACの適応病態:心房細動96%,95%,機械弁1%,2%,その他3%,3%。CHA2DS2-VAScスコア2点超75%,82%。HAS-BLED出血リスクスコア3点超66%,71%。
主な結果 平均追跡期間は9~14ヵ月であった。いずれの試験も出版バイアスは低値であった。

・TIMI大/小出血
TIMI大/小出血はDAT群4.3%で,TAT群9.0%より少なかった(HR 0.53,95%CI 0.36-0.85)。研究間に中等度の不均一性がみられた(I2=42.9%)。

・MACE
MACEはDAT群10.4%で,TAT群10.0%と同程度であった(HR 0.85,0.48-1.29)。研究間に高い不均一性がみられた(I2=58.4%)。
 
・副次評価項目
すべての項目について,DAT群とTAT群の間に有意差は認められなかった。
頭蓋内出血:HR 0.58,0.23-1.49,I2=0%。
全死亡:HR 0.85,0.46-1.37,I2=39.3%。
心臓死:HR 0.89,0.41-1.54,I2=28.7%。
心筋梗塞:HR 1.07,0.58-1.95,I2=15.8%。
ステント血栓症:HR 1.00,0.32-2.82,I2=32.1%。
脳卒中:HR 0.94,0.45-1.84,I2=0%。
文献: Golwala HB, et al. Safety and efficacy of dual vs. triple antithrombotic therapy in patients with atrial fibrillation following percutaneous coronary intervention: a systematic review and meta-analysis of randomized clinical trials. Eur Heart J 2018; 39: 1726-35a. pubmed
関連トライアル ACTION Registry-GWTG triple therapy, APEX-AMI atrial fibrillation, DES留置後のDAPT延長投与, Lamberts M et al, ORBIT-AF registry triple vs. dual antithrombotic therapy, PCI施行患者における抗血栓療法:2剤併用と3剤併用の比較, TRITON-TIMI 38 discharge aspirin dose, 新規経口抗凝固薬4剤のwarfarinに対する有効性・安全性
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