抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
Ohya M et al
結論 出血リスクが高い急性冠症候群(ACS)患者において,prasugrel維持用量(2.5mg/日)投与は一つの選択肢のようであった。
コメント ACS患者のDES留置後のDAPTについて,従来の標準薬であるクロピドグレルに対して新規のP2Y12阻害薬プラスグレルをどのように使用すべきか,ハイボリュームセンターである施設の臨床データをまとめた成績である。したがって,何らかの結論を得るための研究ではない。本施設においては,プラスグレル3.75mgを標準薬としているが,虚血イベントの年間発症率は0.4%ときわめて良い成績である。クロピドグレル,プラスグレル2.5mg群は,3.5%と虚血抑制が劣るように見えるが,対象者がもともとハイリスクなので単純な比較はできない。プラスグレル3.75mgを投与しなかった2群は,出血性リスクが高い(したがって,虚血リスクも高い)ことを理由にしている。そこで出血性副作用についてみると,3群共に同様であった。すなわち,プラスグレル3.75㎎の使用にあたっては,出血のハイリスク群(高齢者,脳血管障害,腎機能障害,低体重,出血の既往)などを除外すれば,出血を増やさずに虚血を抑制できそうである。プラスグレル2.5㎎の有用性については,クロピドグレル群と対象者は異なるが,虚血抑制,出血性イベントともに2群の間に差はないようにみえる成績であり,クロピドグレルの標準療法との比較が必要であろう。(島田和幸

目的 リアルワールドの日本人ACS患者において,出血イベントに関するデータは不足している。本研究では,日本人ACS患者の院内虚血・出血イベント発症率を検討し,さらに出血高リスク患者について,prasugrel維持用量(2.5mg/日)の有効性ならびに安全性を評価した。安全性主要評価項目:院内大出血(BARC出血基準タイプ3,5)。有効性主要評価項目:院内主要心脳血管イベント(MACCE;心臓死+非致死的心筋梗塞[MI]+非致死的脳卒中)。
デザイン 前向き,非ランダム化,介入研究。
セッティング 単施設,日本。
期間 登録期間は2014年8月~2017年4月。追跡期間中央値528日。
対象患者 1,167例。ACSの疑いでPCIを施行する患者連続例。
【除外基準】安定冠動脈疾患/陳旧性MI,血栓性MI,バルーン単独治療/paclitaxelコーティングバルーン/ベアメタルステント,薬物溶出性ステント留置後ticlopidine使用。
【患者背景】平均年齢はclopidogrel群73.3歳,prasugrel 2.5mg群80.0歳,同3.75mg群61.9歳*。それぞれの男性77%,52%,89%*。平均体重62.8kg,53.9kg,68.5kg*。高血圧80%,74%,58%*。糖尿病39%,31%,33%。脂質異常症57%,41%,52%(p=0.003)。MI既往30%,11%,9%。脳卒中26%,5%,4%。抗凝固薬使用25%,0.4%,0.4%。臨床症状:ST上昇型MI 52%,59%,57%,非ST上昇型MI 25%,18%,21%,不安定狭心症24%,24%,22%。冠動脈疾患:1枝病変53%,54%,61%,2枝病変30%,26%,24%,3枝病変18%,20%,15%,左主幹部13%,11%,6%。
*p<0.001
治療法 thienopyridineをすでに服用していた症例を除き,prasugrel負荷用量20mgを投与した。インターベンションの手技は術者の裁量とした。手技終了後,aspirin 100mg/日+thienopyridine(clopidogrel 75mg/日,prasugrel 3.75mg/日,同2.5mg/日)を全例に投与した。抗血小板薬2剤併用の推奨期間は8ヵ月以上としたが,実際の期間は担当医が判断した。
抗凝固療法中またはその予定,脳梗塞/一過性脳虚血発作既往,重篤な出血既往例に対してはclopidogrel 75mg/日(192例),低体重(≦50kg),高齢(≧75歳),腎機能障害(eGFR≦30 mL/分/1.73m2)に対してはprasugrel 2.5mg/日(284例),それ以外の患者にはprasugrel 3.75mg/日(487例)を処方した。
追跡完了率
結果

●評価項目
[評価項目]
院内イベントは992例,院外イベントは院内死亡29例を除く963例について評価した。
安全性主要評価項目は34例(3.4%)に発症した。多変量解析によると,高齢(OR 4.46,95%CI 1.68-11.8,p=0.003),低体重(OR 2.38,1.03-5.52,p=0.04),腎機能障害(OR 2.95,1.21-7.19,p=0.02),脳卒中既往(OR 2.73,1.09-5.73,p=0.04),大腿動脈アプローチ(OR 2.49,1.09-5.73,p=0.03),大動脈内バルーンパンピング(OR 4.38,1.53-12.6,p=0.006),経皮的心肺補助使用(OR 9.55,1.78-51.4,p=0.009)は院内大出血の独立予測因子であった。
有効性主要評価項目は33例(3.3%)に発症した。
1年後の累積院外大出血率はprasugrel 2.5 mg/日群(1.6%)と3.75 mg/日群(0.7%)で,有意差を認めなかった(log-rank p=0.24)。MACCEは2.5mg(3.5%)のほうが3.75mg群(0.4%)より多かったが(log-rank p=0.001),院外ステント血栓症(definite/probable)は両群0例であった。傾向スコアマッチング後,院外臨床イベントは両群で同程度であった。

●有害事象

文献: Ohya M, et al. In-Hospital Bleeding and Utility of a Maintenance Dose of Prasugrel 2.5 mg in High Bleeding Risk Patients With Acute Coronary Syndrome. Circ J 2018; 82: 1874-83. pubmed
関連トライアル ACCOAST predictors of bleeding, ANTARCTIC, De Luca G et al, Elderly ACS 2 , GRAPE Registry, OPTIMIZE, Parodi G et al, PRASFIT-ACS, PRASFIT-Elective, TRANSLATE-ACS aspirin dose, TRILOGY ACS elderly patients, TRILOGY ACS secondary analysis , TRITON-TIMI 38, TRITON-TIMI 38 discharge aspirin dose, TRITON-TIMI 38 early and late benefits, TRITON-TIMI 38 PCI
関連記事