抗血栓トライアルデータベース
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SLSR South London Stroke Register
結論 脳梗塞患者において,alteplase静注は長期生存期間および機能的転帰の改善と関連していた。
コメント アルテプラーゼ静注療法施行群と傾向スコアを一致させた対象群について,10年後までの生存期間と脳梗塞再発率および5年後の機能予後を比較した結果,アルテプラーゼ静注療法施行群の生存期間が長いこと,機能予後がよいことが示された。アルテプラーゼ静注療法の短期(3ヵ月後)予後の改善効果は周知の事実であるが,長期の生存期間や5年後の機能予後改善と関連していた点が本研究で明らかにされた。両群間に再発率の差異はないことから,急性期の再灌流療法の長期予後改善効果を強調する結果と考えられる。(矢坂正弘

目的 先行研究から,alteplase静注により脳梗塞患者の機能的転帰が改善することが示されているが,長期的な死亡への効果についてはまだ明らかになっていない。このことから,血栓溶解療法に関連する早期リスク(頭蓋内出血など)が予後良好へ経時的に変わるのかについての懸念が生じている。本研究では,英国の標準的な日常診療として行われるalteplase静注により,脳梗塞から10年後までの長期生存率が改善するかを検討した。また,機能的状態の改善が5年後も維持されるか,alteplase静注が脳卒中再発に影響するかについても評価を行った。主要評価項目:初回脳梗塞から10年後までの生存率。副次評価項目:脳卒中再発,5年後の機能的転帰。
デザイン 地域住民をベースとしたコホート研究。
セッティング 多施設,英国。
期間 登録期間は2005年1月~2015年12月。追跡期間は中央値5.45年。
対象患者 738例。初発脳梗塞患者2,052例のうち,傾向スコアを合致させたalteplase群246例,対照群492例。
【除外基準】-
【患者背景】平均年齢はalteplase群68.0歳,対照群69.4歳。それぞれの男性50.0%,47.8%。脳卒中前の平均Barthel index(BI)19.1,19.1。National Institute of Health stroke scale(NIHSS)中央値10,9。脳卒中の病型:全前方循環梗塞28.1%,25.0%,部分的前方循環梗塞46.8%,49.8%,ラクナ梗塞13.8%,14.2%,後方循環梗塞11.4%,11.0%。TOAST分類:大血管アテローム動脈硬化性15.9%,11.4%,心原性30.9%,27.9%,小血管閉塞15.0%,17.3%,その他1.2%,2.0%,不明37.0%,41.5%。
治療法 alteplase静注は全例に行った。治療の時間枠は,試験開始時は発症後3時間であったが,2009年以降は4.5時間とした。
脳卒中前および追跡時の評価にはBIを用い,BI≧90の場合に機能的自立とした。追跡中の応用的日常生活動作の評価にはFrenchay活動指数(FAI)を用いた。
greedy nearest neighbor法を用い,alteplase群と対照群を1:2でマッチングさせた。
追跡完了率
結果

●評価項目
生存期間中央値はalteplase群のほうが対照群より長く(5.72年 vs 4.98年,p<0.001),5年後の絶対リスク低下は8.33%(95%CI 8.19-8.47),治療必要例数(NNT)12,10年後では絶対リスク低下5.07%(95%CI 4.92-5.22),NNT 20であった。
年齢,脳卒中前のBI,脳卒中前の抗凝固療法,急性期のNIHSS,脳卒中後の抗血小板療法を調整後,alteplase静注のより5年後(HR 0.72,95%CI 0.60-0.87),10年後(HR 0.63,95%CI 0.48-0.82)とも死亡率低下と関連していた。
alteplase静注と発症後3時間以内の来院の病院到着の交互作用をモデルに含めると,3時間以内に来院した患者の死亡率低下は,5年後はHR 0.67,95%CI 0.52-0.88,10年後はHR 0.58,95%CI 0.40-0.82であった。
全追跡期間におけるリスクが非比例であったため,restricted mean survival time(RMST)を算出したところ,alteplase群6.06年,対照群5.18年であった(10年間の推定群間差0.88年,95%CI 0.18-1.59,p=0.015)。
年齢,性別,人種,脳卒中前BI,急性期NIHSS,脳卒中の病型を調整後,alteplase群は対照群にくらべ退院時の自立(OR 2.01,95%CI 1.27-3.20),5年後の自立(OR 3.76,95%CI 1.22-13.34),5年後のFAIスコア上昇(比例OR 2.37,95%CI 1.16-4.91)と関連していた。脳卒中再発については群間差を認めなかった。

●有害事象

文献: Muruet W, et al. Long-Term Survival After Intravenous Thrombolysis for Ischemic Stroke: A Propensity Score-Matched Cohort With up to 10-Year Follow-Up. Stroke 2018; 49: 607-13. pubmed
関連トライアル alteplase静注における治療時間の遅れ,年齢,脳卒中重症度の影響, Bern Stroke Project, Cappellari M et al, Danish Stroke Registry, ECASS III, ENCHANTED renal impairment, IST-3 18-month follow-up, Merkler AE et al, Power A et al, REVASK, Sarikaya H et al (posterior circulation stroke), SITS-ISTR unknown-onset stroke, SITS-ISTR sex differences, SITS-ISTR within-day and weekly variations, SPOTRIAS, Strbian D et al Ultra-Early Thrombolysis
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