抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
RETRACE I+II German-wide Multicenter Analysis of Oral Anticoagulation-associated Intracerebral Hemorrhage
結論 機械弁留置患者において,脳内出血発症後13日目までの治療用量の抗凝固療法(TA)再開は,出血性合併症リスク上昇と関連していた。血栓塞栓リスクと出血リスクを最小にする至適再開時期は第6日である。

目的 機械弁留置患者に関し,脳内出血発症後の急性期におけるTAについてのエビデンスは不足している。本研究では,脳内出血が発症した機械弁留置患者において,出血性および血栓塞栓性合併症の発症率をTAの有無に応じて評価することにより,TAの中和と再開のストラテジーを調査した。また,TA再開の至適時間枠を確立するために,安全性およびリスク・ベネフィットの時間依存性を解析した。主要評価項目:入院中の大出血。
デザイン 本論文は前向きコホート研究2件(RETRACE-1[NCT01829581]およびRETRACE-2[NCT03093233])を統合した後ろ向き解析。
セッティング 多施設(22施設),ドイツ。
期間 登録期間は2006年1月1日~2010年12月31日(RETRACE-1)および2011年1月1日~2015年12月31日(RETRACE-2)。
対象患者 137例。機械弁を留置されかつ弁の位置(大動脈/僧帽弁)が記録されたTA関連脳内出血発症例。
【除外基準】TAに直接由来しない脳内出血,追跡期間中の画像データ欠如による早期治療の制限,入院後72時間以内の死亡。
【患者背景】平均年齢は非TA群71歳,TA群69歳。それぞれの女性36.6%,31.8%。病前平均mRS 0,0,Glasgow coma scale中央値 12,14*,脳内出血スコア中央値2,1*。既往:高血圧80.3%,84.8%,糖尿病31.0%,25.8%,脳梗塞19.7%,18.2%,うっ血性心不全19.7%,21.2%,腎機能異常28.2%,39.4%,抗血小板薬併用12.7%,10.6%,機械弁の部位:大動脈弁71.8%,59.1%,僧帽弁21.1%,33.3%,両方7.0%,7.6%。平均CHADS2スコア2.0,2.1,平均HAS-BLED出血リスクスコア2.5,2.6,脳内出血部位:深部39.4%,43.9%,脳葉47.9%,40.9%,小脳8.5%,9.1%,脳幹1.4%,3.0%,原発性脳室内2.8%,3.0%,脳内出血容量中央値23.9mL,14.7mL(p=0.02),脳室内45.1%,39.4%,入院時INR 2.68,2.76,中和後初回INR 1.28,1.33。入院日数中央値:13日,15日。*p<0.01
治療法 脳内出血発症後に画像診断を行い,脳内出血量はABC/2およびABC/3法により算出した。入院中の一連の画像から転帰を評価した。
非TA群:71例。入院中に抗血栓薬非投与16例,または静脈血栓塞栓症予防のため,予防用量の未分画/低分子ヘパリンのみを投与した55例。
TA群:66例。ビタミンK拮抗薬を用いた経口抗凝固療法(初日のINR≧1.5)を再開した13例,または未分画ヘパリン(APTT延長が治療域の1.5~2.5倍となる用量)/低分子ヘパリン(抗Xa活性が0.5~1.0U/mLとなるよう体重に応じて調整した用量)の継続的な静注または/皮下投与を行った53例。
追跡完了率
結果

●評価項目
主要評価項目は,TA群17例(25.8%)のほうが非TA群4例(5.6%)より多かった(p<0.01)。
血栓塞栓性合併症は,TA群1例(1.5%)のほうが非TA群7例(9.9%)より少ない傾向がみられた(p=0.06)。
治療のクロスオーバー(予防用量→治療用量またはその逆)補正後,大出血の粗累積発症率はTA群3.53%/日(95%CI 2.05-5.65)で,非TA群0.34%/日(0.09-0.88)にくらべ不利益が示された(罹患率比[IRR]10.31,3.67-35.70,p<0.01)。血栓塞栓性合併症では群間差はみられず(IRR 0.35,0.02-2.24,p=0.34),出血+血栓塞栓合併症の複合ではTA群のほうが非TA群にくらべIRRが高かった(IRR 3.97,1.88-8.69,p<0.01)。
脳内出血発症後のTAの再開は,13日目までは出血性合併症リスク上昇(HR 7.06,2.33-21.37,p<0.01),6日目までは出血+血栓塞栓合併症の複合のリスク上昇(HR 2.51,1.10-5.70,p=0.03)と関連していた。

●有害事象

文献: Kuramatsu JB, et al. Management of therapeutic anticoagulation in patients with intracerebral haemorrhage and mechanical heart valves. Eur Heart J 2018; 39: 1709-23. pubmed
関連トライアル CHIRONE, GWTG-Stroke ICH and in-hospital mortality, Hernandez I et al, Kuramatsu JB et al, Nielsen PB et al, Staerk L et al, Swedish Atrial Fibrillation cohort study, XALIA, 機械弁留置妊婦に対する抗凝固療法, 抗凝固療法のセルフモニタリング
関連記事