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Chao TF et al Oral Anticoagulation in Very Elderly Patients with Atrial Fibrillation – A Nationwide Cohort Study
結論 ≧90歳の心房細動(AF)患者において,warfarinは脳梗塞リスク低下と関連し,ネットクリニカルベネフィット(NCB)が良好であった。非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)はwarfarinにくらべ,頭蓋内出血(ICH)リスク低下と関連していた。したがって,高齢であっても血栓症の発症抑制として経口抗凝固療法を検討すべきであり,NOACがより有効な選択肢であることが示された。
コメント 90歳以上のAF患者における抗血栓療法の有用性をナショナルデータベースより検討した,貴重な報告である。ただ,ワルファリン群において脳梗塞リスク31%低下,ICHは有意差なしという結果から,おそらくPT-INRコントロールは軽度,あるいは1.6以下の症例が少なからず含まれていると考えられる。コントロールの程度は不明であり,その点を考慮する必要がある。NOACが利用可能な時代,NOACはワルファリンに比しICHリスク低下となっているが,NOACのない時代をあわせて考えると,NOACによるICHは無投薬と同等あるいはそれ以下という解釈もできる。2012年以降の抗血栓薬なしでICH発症率が示されていないので,この点は研究の限界と考えられる。(是恒之宏

目的 超高齢のAF患者では,warfarinのモニタリングに対処できないことや出血リスクへの懸念から,OACが処方されないことがある。これらの患者においてVKAとNOACと比較した適切なRCTのエビデンスはなく,90歳以上でもAFが脳梗塞リスク上昇と関連するかについては不明である。本研究では,(1)90歳以上の脳梗塞およびICHのリスクをAFの有無により比較,(2)90歳以上のAF患者において脳卒中,出血転帰,warfarinのNCBを検討,(3)warfarinまたはNOACが投与されている90歳以上のAF患者において脳卒中および出血のリスクを比較,を行った。
デザイン コホート研究。
セッティング 多施設,台湾。
期間 試験期間は1996~2015年。NOACのない時代(1996年~2011年)の平均追跡期間は2.06年。
対象患者 17,502例。≧90歳のAF患者。NOACのない時代の患者15,756例,NOACが利用可能な時代の患者1,746例。
【除外基準】表記なし。
【患者背景】平均年齢はNOACのない時代の患者92.6歳,NOACが利用可能な時代の患者92.4歳。それぞれの男性39.2%,44.6%。CHA2DS2-VAScスコア5.3,5.2。高血圧74.1%,90.8%。糖尿病23.9%,34.2%。うっ血性心不全55.1%,47.3%。脳卒中/一過性脳虚血発作既往49.3%,40.7%。血管疾患既往12.7%,14.9%。大出血既往8.6%,21.6%。
治療法 台湾の国民健康保険研究データベースを用いた。
・NOACのない時代(1996年~2011年):脳卒中発症抑制のために用いられた薬剤別に3群に分類(抗血栓薬なし11,064例,抗血小板薬4,075例,warfarin 617例)。無治療群の11,064例と,年齢・性別を合致させた抗血栓療法を行っていない非AF患者14,658例で,脳梗塞およびICHのリスクを比較した。
・NOACが利用可能な時代(2012~2015年):≧90歳の新規診断AF患者1,746例(warfarin 768例,NOAC 978例[dabigatran 361例,rivaroxaban 557例,apixaban 60例])の脳梗塞,ICH,大出血のリスクを比較した。
追跡完了率
結果

●評価項目
[NOACのない時代]
AF患者は非AF患者にくらべ,脳梗塞リスクが上昇していたが(742/11,064例[5.75%/年]vs 1,399/14,658例[3.00%/年],補正後HR 1.93,95%CI 1.74-2.14),ICHには有意差を認めなかった(131/11,064[0.97%/年]vs 206/14,658例[0.54%/年],補正後HR 0.85,0.66-1.09)。
AF患者において,warfarin群は抗血栓薬なし群にくらべ脳梗塞リスク低下と関連していたが(39/617例[3.83%/年]vs 742/11,064例[5.75%/年],補正後HR 0.69,0.49-0.96),ICHについては有意差を認めなかった(補正後HR 1.26,0.70-2.25)。
抗血栓薬なしまたは抗血小板薬にくらべ,warfarinはNCBが良好であった。

[NOACが利用可能な時代]
NOACはwarfarinにくらべ, ICHリスク低下と関連していたが(4/978例[0.42%/年]vs 19/768例[1.63%/年],HR 0.32,0.10-0.97),脳梗塞(37/978例[4.07%/年]vs 51/768例[4.59%/年],HR 1.16,0.61-2.22),大出血(54/978例[6.14%/年]vs 73/768例[6.75%/年],HR 0.95,0.63-1.44)については有意差を認めなかった。

●有害事象

文献: Chao TF, et al. Oral Anticoagulation in Very Elderly Patients with Atrial Fibrillation - A Nationwide Cohort Study. Circulation 2018; 138: 1-3. pubmed
関連トライアル ATRIA on and off anticoagulants, Chao TF et al, da Vinci, ENGAGE AF-TIMI 48 valvular heart disease, GWTG-Stroke ICH and in-hospital mortality, Ho CW et al, Lamberts M et al, Larsen TB et al, Nielsen PB et al, Ontario Stroke Registry, PROSPER antithrombotic treatment and outcomes, ROCKET AF elderly patients, ROCKET AF intracranial hemorrhage, ROCKET AF post hoc analysis, ROCKET AF temporary interruption, Staerk L et al, 弁膜症合併心房細動患者に対するNOAC
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