抗血栓トライアルデータベース
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Olier I et al
結論 primary経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行した英国のST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者約89,000例において,prasugrelはclopidogrelおよびticagrelorにくらべ,30日後および1年後の死亡率低下と関連していた。適切な検出力のあるRCTの実施は困難であることから,本知見は実臨床に影響を及ぼす可能性がある。
コメント  クロピドグレルは有効,安全,特許切れして安価となった。プラスグレル,チカグレロールとP2Y12ADP受容体阻害薬の選択肢は増えたが,価格以上の価値を示すことは難しい。データベースの充実した英国の観察研究は,2007~2014年に登録された症例でも圧倒的多数にはクロピドグレルが使用されたことを示した。観察研究であるため,クロピドグレル,チカグレロール,プラスグレルの選択にはバイアスがかかっている。30日後,1年後の死亡率がプラスグレル群において低かったことは興味深いが,プラスグレル群が比較的若年に使用されたことを考えると解釈は難しい。重要な出血もプラスグレル群にて少ないので,年齢の影響が大きいのであろう。
 追跡率100%を可能とする英国のデータベースは日本の手本となる。(後藤信哉

目的 PCI施行において,aspirinとclopidogrelなどのP2Y12阻害薬を用いた抗血小板薬2剤併用療法により,臨床的転帰が改善した。しかし,clopidogrelは作用発現が比較的遅いため,STEMI患者に対するprimary PCIといった救急医療では不都合である。そのため,作用発現がすみやかで血小板活性阻害作用がより強力なprasugrelならびにticagrelorが開発された。しかし,両剤を比較したデータは限定的で,将来的にも適切な検出力を有するRCTが行われる可能性は低い。そのため本研究では,英国心血管インターベンション学会(BCIS)のPCIレジストリを用い,英国で行われたPCI症例の99%以上を網羅した大規模コホートにおけるさまざまなP2Y12阻害薬の転帰を検討した。主要評価項目:30日後および1年後の死亡率。
デザイン 前向き登録研究の後向き解析。
セッティング 多施設,英国(イングランドおよびウェールズ)。
期間 登録期間は2007年1月1日~2014年12月31日。
対象患者 89,067例。登録期間にprimary PCIが行われ,BCISデータベースに記録のある患者。
【除外基準】転帰,年齢,性別が記載されていないデータ。
【患者背景】年齢中央値はclopidogrel群64.0歳,prasugrel群61.0歳,ticagrelor群63.0歳*。それぞれの男性73.5%,77.6%,74.2%*。糖尿病14.8%,13.4%,15.0%*。末梢血管疾患既往3.6%,2.5%,2.7%。高血圧44.9%,37.5%,40.5%*。高コレステロール血症41.7%,40.4%,37.6%。冠動脈バイパス術(CABG)施行歴4.7%,2.5%,4.2%*。心筋梗塞(MI)既往14.0%,10.7%,12.3%*。脳卒中既往4.2%,1.9%,3.3%*。PCI施行歴9.9%,8.3%,8.7%**:3群間の比較においてp<0.0001
治療法 処方によりclopidogrel群58,248例,prasugrel群17,714例,ticagrelor群13,105例に分けて解析した。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
30日後の死亡率はclopidogrel群6.4%,prasugrel群3.6%,ticagrelor群5.5%(p<0.0001),1年後の死亡率はそれぞれ10.2%,5.9%,8.5%であった(p<0.0001,p値は3群間の比較)。
多変量ロジスティック解析において,clopidogrelにくらべ,prasugrelは死亡率が低かったが,ticagrelorは同程度であった。
prasugrel :30日後OR 0.87,95%CI 0.78-0.97,p=0.014,1年後OR 0.89,0.82-0.97,p=0.011。
ticagrelor:30日後OR 1.07,0.95-1.21,p=0.237,1年後OR 1.06,0.96- 1.16,p=0.247。
ticagrelorはprasugrelにくらべ,30日後(OR 1.22,1.03-1.44,p=0.020),1年後(OR 1.19,1.04-1.35,p=0.01)ともに,死亡率が高かった。
clopidogrelにくらべ,prasugrel は院内大出血率は低かったが,院内主要有害心イベント(MACE)は同程度であった。一方, ticagrelorは院内大出血率が低かったものの,MACE発症率は有意に高かった。
prasugrel:院内大出血OR 0.73,0.59-0.91,p=0.005,院内MACE OR 0.94,0.84-1.06,p=0.296。
ticagrelor:院内大出血OR 0.65,0.49-0.85,p=0.002,院内MACE OR 1.17,1.04-1.32,p=0.011。
ticagrelorはprasugrelにくらべ,院内大出血率は同程度であったが(OR 0.87,0.60-1.25,p=0.441),院内MACE発症率は高かった(OR 1.25,1.06-1.47,p=0.008)。

●有害事象

文献: Olier I, et al., British Cardiovascular Intervention Society and the National Institute for Cardiovascular Outcomes Research Association of different antiplatelet therapies with mortality after primary percutaneous coronary intervention. Heart 2018; : . pubmed
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