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Elderly ACS 2
結論 高齢の急性冠症候群(ACS)患者を対象とした本試験において,prasugrel減量投与とclopidogrel標準用量で主要評価項目に有意差を認めなかった。しかし,本結果は試験が早期中止となった点を考慮して解釈する必要がある。
コメント  プラスグレルの作用発現機転はクロピドグレルと類似している。活性体が非可逆的にP2Y12 ADP受容体を阻害する点にも共通性がある。世界の第三相試験にて使用された60mgローディングと10mg/日では,有効性が強く発現しても安全性の問題が大きかった。日本の20mgローディングと3.75mg/日がそれなりに成功していることから考えても,5mg/日は有力なチョイスであった。
 本研究は75歳以上の症例を対象として,イタリアにおいて5mg/日のプラスグレルを標準用量のクロピドグレルと比較した興味深いランダム化比較試験である。認可承認を目指す第三相試験とは異なり,何が何でも結果を出したい意志は弱い。また,比較的少数例にて仮説の検証を目指すため,エンドポイントは「死亡・心筋梗塞・後遺症のある脳卒中・心血管または出血イベントによる再入院」と,臨床的に意味があってもソフトなエンドポイントとされた。
 1,443例は大規模であるが,TRITON-TIMI38の1/10に過ぎない。プラスグレルとクロピドグレルにて差がなかった。高齢者でも安価な特許切れしたクロピドグレルを使うように解釈することも,減量したプラスグレルを高齢者でも安心して使えると解釈することも可能である。高齢者の抗血小板薬併用療法の選択は重要な問題であるが,エビデンスを提示することは難しい。(後藤信哉

目的 先行研究より,高齢患者はclopidogrel服用中の抗血小板反応性が高いことが多いが,prasugrel 5mgへの変更により有効な血小板阻害が得られることが示されている。また,保存的治療を行った高齢の非ST上昇型(NSTE)ACS患者において,prasugrel 5mgはclopidogrelにくらべより予測可能で,わずかに強い有効性が示されている。本研究では,早期PCIを施行する高齢ACS患者において,aspirinに追加する場合のprasugrel 5 mgをclopidogrel 75 mgと比較した。主要評価項目:1年以内の死亡+心筋梗塞(MI)+後遺障害のある脳卒中+心血管(CV)/出血による再入院の複合。
デザイン PROBE試験。intention-to-treat解析。NCT01777503。
セッティング 多施設(32施設),イタリア。
期間 登録期間は2012年11月15日~2017年1月25日。追跡期間中央値は12.1ヵ月(範囲3~13ヵ月)。
対象患者 1,443例。>74歳,PCI施行ACS患者。NSTE-ACSでは,トロポニン上昇,糖尿病,MI既往,当該入院中の標準治療下において新規の虚血性エピソード,ステント血栓症のうちひとつ以上を有する症例。
【除外基準】脳卒中既往,臨床的に意義のある消化管または泌尿生殖器出血過去から6週以内,入院時のヘモグロビン<10g/dL(腎機能障害または既知の骨髄異形成に起因すると考えられる場合は除外しない),血小板数<90,000/mL,二次的虚血,経口抗凝固療法中またはスクリーニング時の自然INR>1.5,重度閉塞性肺疾患の併発,追跡または試験プロトコル遵守を制限する悪性腫瘍または神経障害,prasugrelまたはticagrelorを服用中。
【患者背景】年齢中央値はprasugrel群80歳,clopidogrel群80歳。それぞれの男性59%,61%。CV疾患の家族歴14%,16%。糖尿病30%,28%。高血圧78%,78%。高コレステロール血症47%,43%。現喫煙9%,9%。慢性呼吸不全6%,6%。肝疾患1.4%,2%。ACSの病型:STEMI 42%,41%,NSTEMI 48%,47%,不安定狭心症10%,12%。
治療法 施設,ACSの病型により層別化後,以下の2群にランダム化。
prasugrel群:713例。負荷用量60mg,維持用量5mg 1日1回。
clopidogrel群:730例。負荷用量300~600mg,維持用量75mg 1日1回。
全例で,入院時にaspirin 325mgを投与後,追跡期間に75~100mg/日を投与した。周術期の抗凝固薬およびGPIIb/IIIa受容体阻害薬の選択は担当医の裁量とした。
追跡完了率 追跡不能は23例(1.46%)。
結果

●評価項目
中間解析後,事前に定められた基準により有効性が認められないとして登録が中止された。
主要評価項目はprasugrel群121例(17.0%),clopidogrel群121例(16.6%)で,同程度であった(HR 1.007,95%CI 0.78-1.30,p=0.955)。
全死亡+MI(HR 1.02,0.71-1.45),CV死(HR 0.85,0.51-1.4),脳卒中(HR 0.55,0.22-1.37)にも有意差を認めなかった。
prasugrel群ではclopidogrel群にくらべて,数値的にはステント血栓症(ARC基準definite/probable)が少なく(0.7%,1.9%,HR 0.36,0.13-1.00,p=0.06),出血(BARC出血基準タイプ2,3,5)が多かったが(4.1%,20例,HR 1.52,0.85-3.16,p=0.18),いずれも統計学的有意差は認めなかった。

●有害事象

文献: Savonitto S, et al.; on behalf of the Elderly ACS 2 Investigators. A Comparison of Reduced-Dose Prasugrel and Standard-Dose Clopidogrel in Elderly Patients with Acute Coronary Syndromes Undergoing Early Percutaneous Revascularization. Circulation 2018; : . pubmed
関連トライアル GRAPE Registry, TRILOGY ACS elderly patients, TRITON-TIMI 38, TRITON-TIMI 38 discharge aspirin dose, TRITON-TIMI 38 PCI
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