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TARDIS
結論 症状発現後48時間以内の急性脳梗塞または一過性脳虚血発作(TIA)患者において,抗血小板薬3剤併用療法はガイドライン準拠の抗血小板療法にくらべ,脳卒中の再発リスクまたは重症度を低減せず,出血リスクが上昇した。抗血小板薬3剤併用療法を日常臨床にルーチン的に使用することは推奨されない。
コメント 発症48時間以内の急性脳梗塞またはTIA患者における抗血小板薬3剤併用療法(アスピリン+クロピドグレル+ジピリダモール)が2剤併用療法(アスピリン+クロピドグレル,またはアスピリン+ジピリダモール)とRCTで比較された。抗血小板薬3剤併用療法は2剤併用療法と比較して再発リスクや重症度の低減を示さず,出血リスクが上昇した。抗血小板薬2剤併用療法で神経症候が増悪する場合,抗血小板薬の追加よりも他の治療(十分な輸液,スタチン投与,脳保護薬,抗凝固薬など)を考慮すべきかもしれない。(矢坂正弘

目的 脳梗塞およびTIAの再発リスクは,イベント直後にもっとも高く,その後の数週間で低下する。aspirinは早期の再発リスクを抑制するが,抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)はさらに有効性が高く,抗血小板薬の選択の重要性は単剤使用の場合より低くなる。急性期の二次予防においてDAPTが単剤療法よりも優れているならば,抗血小板薬3剤を用いた短期の強化療法はさらに有効性が高いことが期待される。proof-of-mechanism試験やproof-of-concept試験では,3剤併用療法は単剤療法またはDAPTよりも血小板凝集,血小板-白血球結合,白血球活性化の阻害効果が高いことが示されている。本研究では,非心原性脳梗塞またはTIA患者において,抗血小板薬3剤併用療法(強化療法)の安全性および有効性を,ガイドラインに準拠した抗血小板療法(標準療法)と比較した。有効性の主要評価項目:90日以内の脳卒中/TIA再発率および重症度。安全性の主要評価項目:出血。
デザイン PROBE(prospective,randomised,open,blinded endpoints),intention-to-treat解析。ISRCTN47823388。
セッティング 多施設(106施設),4ヵ国(デンマーク,ジョージア,ニュージーランド,英国)。
期間 登録期間は2009年4月7日~2016年3月18日。追跡期間は90日。
対象患者 3,096例。脳梗塞の再発リスクが高く,下肢筋力低下・発語障害・神経画像陽性半盲を伴う非心原性脳梗塞か,10分以上の下肢筋力低下・孤立性発語障害を伴う非心原性TIAを有する患者。
【除外基準】<50歳,孤立性感覚症状・顔面筋力低下・めまい,心原性と推測される脳卒中またはTIA,実質性出血または他の頭蓋内出血,症状の原因が非虚血性,aspirin・clopidogrel・dipyridamoleの必要性または禁忌,十分量の抗凝固薬を要する,発症前の非自立,重度高血圧。
【患者背景】平均年齢は強化療法群69.0歳,標準療法群68.9歳。それぞれの男性63%,63%。既往症:高血圧60%,58%,脂質異常症44%,45%,心房細動0%,<1%,脳卒中12%,10%,虚血性心疾患13%,13%,末梢動脈疾患3%,2%。当該イベント:脳梗塞72%,71%,TIA 27%,28%。発症-ランダム化時間中央値29.3時間,29.3時間。血栓溶解療法11%,11%。
治療法 症状発現から48時間以内に,国と当該イベント(脳卒中 vs TIA)で層別化後,以下の2群にランダム化し,試験薬を30日間投与した。血栓溶解療法静注をうけた患者は,治療から24時間経過後にランダム化した。
強化療法群:1,556例。aspirin(負荷量300mg投与後,通常75mg/日)+clopidogrel (負荷量300mg投与後,75mg/日)+dipyridamole(徐放性200 mg 1日2回または100mg 1日3~4回)。
標準療法群:1,540例。aspirin+dipyridamoleまたはclopidogrel単独(強化療法群と同様の用量を投与)。
追跡完了率 97%。
結果

●評価項目
強化療法群で大出血(致死的なものを含む)が有意に増加し,主要評価項目の有意な減少を認めず,条件付き検出力分析にて試験を継続しても主要評価項目に有意差が示されない可能性が高いことが示唆されたため,データモニタリング委員会の勧告より,試験登録は早期に中止となった。2016年4月12日,試験運営委員会が同様のデータと補助的解析を評価し,試験登録中止に同意した。
90日後までに198例(6%)で脳卒中再発またはTIAが発生し,強化療法群と標準療法群で有意差は認めなかった(93/1,540例[6%] vs 105/1,530例[7%];調整共通OR 0.90,95%CI 0.67-1.20,p=0.47)。
死亡(mRS 6)はそれぞれ1%,<1%(調整共通OR 1.92,95%CI 0.76-4.84,p=0.17)。
出血は強化療法群で通常療法群より増加した(305/1,541例[20%] vs 139/1,531例[9%];調整共通OR 2.54,95%CI 2.05-3.16,p<0.0001)。

●有害事象

文献: Bath PM, et al.; TARDIS Investigators. Antiplatelet therapy with aspirin, clopidogrel, and dipyridamole versus clopidogrel alone or aspirin and dipyridamole in patients with acute cerebral ischaemia (TARDIS): a randomised, open-label, phase 3 superiority trial. Lancet 2018; 391: 850-9. pubmed
関連トライアル EARLY, ESPRIT 2006, GEMINI-ACS-1, PRoFESS acute ischemic stroke, PRoFESS disability and cognitive function, SOCRATES subgroup analysis, 脳梗塞再発予防におけるaspirin早期投与の効果
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