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ProACS Portuguese National Registry of Acute Coronary Syndromes
結論 急性冠症候群(ACS)患者において,先行aspirin投与はベースラインの転帰不良を予測することから,心血管(CV)リスクマーカーとしての役割が確立されている。しかし本結果は,リスク分類スコアに有害予後変数として先行aspirin投与を含めることを支持しないものであった。
コメント 従来,動脈硬化性疾患やそのハイリスクの患者に対して,アスピリンは心血管疾患の発症を抑制することが知られている。これらはプラセボ対照の無作為化比較試験で繰り返し示された。また,観察研究では,ACS(急性冠症候群)患者は発症前にアスピリンを服用していると重症化を抑制する,あるいは1ヵ月後の死亡率が抑制されることなどが報告されていた。すなわち,アスピリン服用はACSに対して抑制的に働くという概念である。一方,本論文のようにACS患者の予後を規定する因子を解析すると,「発症前アスピリン服用」はむしろ悪化因子となる成績が得られている。これら矛盾する成績の理由の1つに,観察期間の違いがある。すなわち,発端となるACSの後,短期的にはイベント発生に対して抑制的に作用するが,1年以上長期的にフォローアップすると,ACS発症前のアスピリン服用の理由となったハイリスク要因の交絡因子が優勢になる結果,見かけ上アスピリンがイベント発症を促進しているかのような結果となり,「因果の逆転」が生じると解釈される。(島田和幸

目的 CV疾患患者では二次予防のための低用量aspirinの推奨が確立されており,ACS患者では初回受診時から必須となっている。また高リスク患者に対する一次予防にも用いられることなどから,多くの患者ではACS診断前にaspirinを服用していることが推測される。TIMIリスクスコアでは,主要有害心イベントの予測因子としてACS前7日間のaspirin服用を組み込んでいる。しかし,それらのデータは不安定狭心症/非ST上昇型心筋梗塞(MI)患者のみを対象とし,10年以上前に収集されたものであることから,先行aspirin投与が現代の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の時代でも独立した予後予測因子であるかは不明である。本研究では,ACS患者において先行aspirin投与がCVリスクマーカーであるかを評価し,現代の侵襲的治療をうけた患者におけるリスクスコアについて,先行aspirin投与の役割を検討した。主要評価項目:全死亡かつ/またはCV再入院。
デザイン コホート研究。NCT01642329。
セッティング 多施設(33施設),ポルトガル。
期間 登録期間は2010年10月~2014年11月。追跡期間1年。
対象患者 5,533例。>18歳,疼痛発症から48時間以内に入院したACSの明白な診断(直近の欧州ガイドラインにもとづくST上昇型MI[STEMI],非ST上昇型MI[NSTEMI],不安定狭心症)を有する患者。
【除外基準】血行再建術後のMI,二次性MI,当該入院中の死亡,追跡データがない患者。
【患者背景】平均年齢は先行aspirin非投与群64歳,先行aspirin投与群69歳*。それぞれの男性71.9%,72.0%。CVリスク因子:高血圧64.5%,84.4%*,糖尿病25.4%,41.5%*,脂質異常症52.5%,69.8%*,現喫煙32.7%,16.2%*,BMI≧25kg/m2 27.3%,27.6%(p=0.009)。CV既往:MI 9.0%,50.1%*,PCI 5.2%,37.1%*,冠動脈バイパス術(CABG)1.8%,12.7%*,末梢血管疾患3.8%,11.4%*,虚血性脳卒中5.6%,12.7%**p<0.001
治療法 当該ACS発症前7日以内のaspirin服用の有無により,先行aspirin投与群3,770例(68.1%)と非投与群1,763例(31.9%)に分類。
人口学的データ(年齢,性別),CVリスク因子(高血圧,糖尿病,脂質異常症,現喫煙),既往症(MI,PCI,CABG,虚血性脳卒中),入院前および入院中のaspirin以外の薬物治療,入院時の診断(STEMI,NSTEMI,不安定狭心症)をマッチングさせた各群756例を抽出し,傾向スコアマッチング解析を行った。
追跡完了率
結果

●評価項目
[傾向スコアマッチング前の解析]
潜在的交絡因子を調整後,先行aspirin投与群では非投与群にくらべ,主要評価項目リスクが上昇した(調整HR 1.29,95%CI 1.10-1.51,p=0.002)。
このリスク上昇は主に,先行aspirin投与群でCV再入院リスクが有意に高かったことによるものであり(調整HR 1.38,95%CI 1.14-1.67,p=0.001),全死亡には有意なリスク上昇を認めなかった(調整HR 0.97,95%CI 0.75-1.26,p=0.832)。
[傾向スコアマッチング後の解析]
先行aspirin投与群では非投与群にくらべ,主要評価項目(調整HR 1.07,95%CI 0.84-1.37,p=0.592),全死亡(調整HR 0.93,95%CI 0.63-1.37,p=0.712),CV再入院(調整HR 1.03,95%CI 0.78-1.36,p=0.836)の有意なリスク上昇を認めなかった。

●有害事象

文献: Ruivo C, et al., Portuguese National Registry of Acute Coronary Syndromes, Portuguese Society of Cardiology Prior exposure to aspirin in acute coronary syndrome patients: a cardiovascular risk marker or a predictor of adverse outcome? A contemporary data of a national registry. J Thromb Thrombolysis 2017; : . pubmed
関連トライアル APPRAISE-2 post hoc analysis, GRAPE Registry, PCI-CURE, TRANSLATE-ACS aspirin dose, TRILOGY ACS secondary analysis , TRITON-TIMI 38 discharge aspirin dose
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