抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
PEGASUS-TIMI 54 multivessel coronary disease
結論 心筋梗塞既往を有する多枝冠動脈疾患(MVD)患者は主要心血管イベント(MACE)および冠イベントリスクが上昇しており,MVDのない症例にくらべ,長期ticagrelor投与により両転帰とも大幅な相対的,絶対的リスク低下が認められた。ticagrelorはTIMI大出血リスクを上昇させたが,頭蓋内出血または致死的出血は増加しなかった。心筋梗塞既往を有するMVD患者において,ticagrelorは長期抗血小板療法の有効な選択肢である。
コメント より長期かつ強力な抗血小板薬とアスピリンのDAPT(2剤抗血小板薬療法) がリスク因子を有する心筋梗塞発症1~3年後の患者に有効であることを検証した試験(PEGASUS-TIMI 54)は,PLATOやDAPT試験の結果を受けて計画されたものである。P2Y12受容体拮抗薬のチカグレロルは,クロピドグレルに比し肝での代謝を受けないため即効性で,かつ強力である。本論文は,多枝疾患というさらにハイリスクのサブグループを対象とした事前設定の解析である。当然,多枝疾患は1枝疾患に比しイベント発症が高率であり,仮説は証明されやすいはずである。しかし,両者のHR(ハザード比)は0.82と0.87で,差はわずかである。一方,大出血のHRも2.27に比し2.67と1枝疾患群に比し高めである。したがって,本試験の解析と本質的に差はない。抗血栓薬療法は,その虚血抑止効果と出血性副作用の頻度をいかに最適にするかが問われている。DAPT(チカグレロル+アスピリン)かチカグレロル単独かの比較試験が必要である。(島田和幸

目的 心筋梗塞既往およびMVD患者は冠イベント再発リスクが高い。本研究は,PEGASUS-TIMI 54の事前に定められた解析として,心筋梗塞既往を有するMVD(当該イベント時,複数の異なる主要冠領域に>50%の狭窄を有する)患者において,ticagrelor長期投与のプラセボに対する有効性および安全性を検討した。有効性主要評価項目:MACE(冠血管死,心筋梗塞,脳卒中の複合)。安全性主要評価項目:TIMI出血基準大出血
デザイン 無作為割付,二重盲検試験。NCT01225562。
セッティング 多施設,複数国。
期間 追跡期間中央値33ヵ月。
対象患者 21,162例。心筋梗塞発症から1~3年で,以下の追加的リスクを1つ以上有する症例(>65歳,薬物療法を要する糖尿病,2度目の自然発症心筋梗塞,慢性腎臓病,MVD)。
【除外基準】-
【MVDの有無別の患者背景】年齢中央値はMVDあり群63歳,なし群68歳。それぞれの男性81.0%,69.2%。白人85.6%,88.1%。糖尿病27.7%,38.7%。高血圧76.5%,79.1%。脂質異常症78.7%,74.0%。当該イベントがST上昇型心筋梗塞55.0%,51.6%。PCI施行歴93.0%,68.5%。
(ここにあげた項目はすべてp<0.0001)
治療法 本試験はticagrelor 90mg群(90mg 1日2回投与),ticagrelor 60mg群(60mg 1日2回投与),プラセボ群に無作為割付。全例に低用量aspirinを投与した。
追跡完了率
結果

●評価項目
12,558例(59.4%)がMVDを有していた。
プラセボ群では,MVD例はMVDのない症例にくらべ,MACEならびに冠イベントのリスクが高かった。
MACE:MVDあり9.37% vs. なし8.57%,補正後HR 1.24,95%CI 1.03-1.50,p=0.026。
冠イベント:7.67% vs. 5.34%,補正後HR 1.49,1.19-1.87,p=0.0005。
ticagrelorはプラセボに比べ,MVDの有無にかかわらずMACEを抑制した(交互作用p=0.61)。
MVDあり:7.94% vs. 9.37%,補正後HR 0.82,0.72-0.94,MVDなし:7.60% vs. 8.57%,補正後HR 0.87,0.74-1.03。
冠イベント,冠血管死についても同様の結果であった。
冠イベント(交互作用p=0.09);MVDあり:補正後HR 0.76,0.66-0.88,MVDなし:補正後HR 0.95,0.77-1.16。
冠血管死(交互作用p=0.057);MVDあり:補正後HR 0.64,0.48-0.85,MVDなし:補正後HR 0.99,0.7-1.41。
ticagrelorはプラセボにくらべ,MVDの有無にかかわらずTIMI大出血を増加させた(交互作用p=0.58)。
MVDあり:2.52% vs. 1.08%,補正後HR 2.67,1.81-3.93,MVDなし:2.36% vs. 1.03%,補正後HR 2.27,1.44-3.58。
頭蓋内出血または致死的出血は増加しなかった(交互作用p=0.98);MVDあり:補正後HR 1.21,0.69-2.12,MVDなし:補正後HR 1.20,0.61-2.38。

●有害事象

文献: Bansilal S, et al. Ticagrelor for Secondary Prevention of Atherothrombotic Events in Patients With Multivessel Coronary Disease. J Am Coll Cardiol 2018; 71: 489-496. pubmed
関連トライアル ATLAS ACS 2-TIMI 51 STEMI patients, DAPT BMS or DES, EUCLID revascularization, OPTIMIZE, OXVASC age-specific risks of bleeding, PEGASUS-TIMI 54, PEGASUS-TIMI 54 diabetic patients, PEGASUS-TIMI 54 over time efficacy and safety, PEGASUS-TIMI 54 peripheral artery disease, PEGASUS-TIMI 54 prevention of stroke, PEGASUS-TIMI 54 renal function, PEGASUS-TIMI 54 time from P2Y12 inhibitor withdrawal, PLATO, PLATO history of stroke, PLATO renal function, PLATO sex difference, PLATO total events, PLATO undergoing CABG, RESTORE, SOCRATES, SOCRATES subgroup analysis, SWEADEHEART ticagrelor vs. clopidogrel, TRA 2P-TIMI 50 diabetes mellitus, TRA 2P-TIMI 50 new ischemic stroke, TRA 2P-TIMI 50 previous myocardial infarction, TRA 2P-TIMI 50 stent thrombosis, TRA 2P-TIMI 50 thienopyridine, TRITON-TIMI 38 discharge aspirin dose, TRITON-TIMI 38 PCI, 心筋梗塞患者におけるDAPT延長による心血管イベント二次予防
関連記事