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Cea Soriano L et al Low-dose aspirin and risk of intracranial bleeds
結論 低用量aspirinと全病型の頭蓋内出血リスク上昇との関連は認められなかったが,1年以上の使用では,くも膜下出血リスク低下との関連がみられた。
コメント 低用量aspirinの頭蓋内出血リスク上昇について,1年以上の服用が非外傷性くも膜下出血を減少させ,外傷性硬膜下血腫を増加させたとする興味ある論文である。地域住民をベースとしたコホートで,血圧,画像所見などがないため,脳内出血への影響については明らかにできていない結果があるかもしれない。(岡田靖

目的 aspirinは虚血性血管イベントの二次予防薬として広く用いられており,一次予防薬としての有効性も期待されている。しかし,その安全性については評価が定まっていない。本試験では予防用量(低用量)aspirinの新規使用に関連する頭蓋内出血リスク(脳内出血/硬膜下血腫/くも膜下出血)を定量化した。
デザイン 地域住民をベースとした前向き登録研究におけるコホート内症例対照解析。
セッティング 多施設,英国。
期間 登録期間は2000年1月1日~2012年12月31日。追跡期間中央値5.4年。
対象患者 11,611例。英国プライマリーケアのデータベースThe Health Improvement Network(THIN)に登録されている40~84歳,プライマリーケア施設に2年以上登録,1年以上の処方歴,過去3年間の来院記録が1回以上の患者で,新規に低用量(75~300mg/日)aspirinを処方された199,079例+年齢・性別・登録開始からの期間・前年の来院回数を1:1でマッチングさせた低用量aspirin非処方例のうち,頭蓋内出血発症例1,611例(頭蓋内出血群)および頻度マッチングにより年齢・性別・頭蓋内出血発症年を合致させた10,000例(対照群)。
【除外基準】低用量aspirinの処方歴,がん/アルコール依存症/血液凝固障害/食道静脈瘤/慢性肝疾患の既往,追跡期間1年超の時点で≧70歳かつ追跡期間を通してプライマリーケア来院回数が2回未満。
【患者背景】コホート全体の年齢中央値は64.0歳。喫煙は頭蓋内出血群15.3%,対照群11.9%,それぞれのアルコール多量摂取(≧42ユニット/週)1.4%,0.9%,低体重(BMI 15~19kg/m2)6.0%,3.5%。既往症:心筋梗塞7.6%,7.5%,一過性脳虚血発作(TIA)/虚血性脳卒中18.4%,8.8%,心筋梗塞以外の虚血性心疾患12.4%,14.5%,頭蓋内出血既往4.0%,0.5%,高血圧60.8%,58.0%,脂質異常症25.1%,24.9%,糖尿病18.9,18.3%,心房細動18.1%,10.1%,心不全7.3%,4.9%,重度腎不全(eGFR 0~29 mL/分/1.73m2)3.4%,1.5%,頭蓋内出血発症前年の転倒8.9%,2.7%,認知症6.3%,2.5%。
治療法 はじめて低用量aspirinを処方された日を開始日として追跡を開始し,低用量aspirin非処方例と1:1でマッチングさせた。追跡は頭蓋内出血/がん/アルコール依存症/血液凝固障害/食道性静脈瘤/慢性肝疾患の発症,死亡,90歳,2013年12月31日までのいずれかもっとも早いものまで行った(追跡期間最大値14年)。
頭蓋内出血の発症は,追跡期間中のReadコードから同定された2,092例から,まずTHINの先行試験の対象となった者を同定し,さらにそれ以外の者をHospital Episode Statistics(HES)から,最後に残った者の電子カルテの記述にもとづきスクリーニングした。
追跡完了率
結果

●評価項目
頭蓋内出血の内訳は脳内出血743例(46.1%),硬膜下血腫483例(30.0%),くも膜下出血385例(23.7%),うち402例(25.0%)が死亡した。
頭蓋内出血の発症リスク比は,頭蓋内出血の既往(RR 8.42,95%CI 5.66-12.51)でもっとも高く,血液透析(RR 2.88,1.08-7.70),重度腎不全(RR 1.80,1.28-2.53),TIA/虚血性脳卒中(RR 1.86,1.59-2.17)においても高かった。
低用量aspirinの現服用と頭蓋内出血発症との関連は認められなかった(RR 0.98,0.84-1.13)。用量(75mg,150~300mg)や使用期間(<1年,1~<5年,≧5年)との関連もみられなかった。
低用量aspirinの現服用と脳内出血(RR 0.98,0.80-1.20),硬膜下血種(RR 1.23,0.95-1.59),くも膜下出血(RR 0.77,0.58-1.01)の関連も認められなかった。用量との関連も認められなかったが,長期使用(≧1年)については,くも膜下出血のリスク低下との関連がみられた(RR 0.69,0.50-0.94)。
低用量aspirinの現服用は非外傷性くも膜下出血のリスク低下と関連していた(RR 0.66,0.48-0.90)。
低用量aspirinの現服用は外傷性硬膜下血腫のリスク上昇と関連しており(RR 1.39,1.00-1.93),特に長期使用(≧1年)についてはより顕著であった(RR 1.66,1.08-2.54)。

●有害事象

文献: Cea Soriano L, et al. Low-dose aspirin and risk of intracranial bleeds: An observational study in UK general practice. Neurology 2017; 89: 2280-2287. pubmed
関連トライアル Cea Soriano L et al, Gaist D et al, Garcia Rodriguez LA et al, Garcia Rodriguez LA et al (Circulation), Garcia-Rodriguez LA et al, TIMI II Pilot and Clinical Trial
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