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NOR-TEST Norwegian Tenecteplase Stroke Trial
結論 急性脳梗塞患者において,tenecteplaseのalteplaseに対する優越性は認められなかったが,両剤の安全性プロファイルは同等であった。本試験対象患者の大部分は軽症脳卒中であった。重症脳卒中患者における有効性および安全性,またtenecteplaseがalteplaseに対し非劣性を示すかどうかについては,更なる試験が必要である。
コメント 急性脳梗塞におけるテクネテプラーゼのアルテプラーゼに対する優越性をRCTで比較した結果,優越性は認められず,安全性は同等であった。本研究対象患者の多くは軽症であったことや,テクネテプラーゼはアルテプラーゼよりフィブリン親和性が高いことから,従来のrt-PA静注療法で再開通率が低い内頸動脈や中大脳動脈閉塞を含む,より重症例での検討が望まれる。(矢坂正弘

目的 in vitro研究および動物モデルにおいて,tenecteplaseはalteplaseよりも血栓溶解プロファイルが良好かつ強力であることが示されている。心筋梗塞患者に対しては,大規模第III相試験において,tenecteplaseはalteplaseにくらべ死亡率ならびに症候性頭蓋内出血(ICH)が同程度で,脳以外の出血合併症は少なかったことが報告され,それ以降tenecteplaseが第一選択の血栓溶解薬となっている。広範な頭蓋内閉塞を有する急性脳梗塞患者に対する第IIb相試験では,tenecteplaseはalteplaseよりも臨床的転帰が良好で,再灌流率が高かった。血栓溶解療法適応の急性脳梗塞患者に対する別の第IIb相試験では,両剤で主要評価項目(24時間後の救済されたペナンブラ)に差異は認められなかった。本試験では,血栓溶解療法静注の適応を有する急性脳卒中患者において,tenecteplaseのalteplaseに対する安全性および有効性を比較した。主要評価項目:3ヵ月後の機能的転帰優良(modified Rankin Score[mRS]0~1)。副次評価項目:24~48時間以内に発症した全ICH,24~48時間以内に発症した症候性ICH,24時間後の著明な神経学的改善,3ヵ月後の序数的mRSシフト, 3ヵ月以内の死亡。
デザイン 第III相,PROBE,優越性試験。intention-to-treat解析。NCT01949948。
セッティング 多施設(13施設),ノルウェー。
期間 登録期間は2012年9月1日~2016年9月30日。追跡終了は2016年12月31日。
対象患者 1,100例。National Institute of Health stroke scale(NIHSS)で評価可能な障害を有し,症状発現後4.5時間以内または症状をともなう目覚め後4.5時間以内の来院,≧18歳,脳卒中前に自立しており,ノルウェーのガイドラインで血栓溶解療法静注の適応と判断された急性脳梗塞疑いの患者。目覚めに症状を呈していたか,発症時間不明の患者でも,DW-MRIとFLAIR-MRIのミスマッチが検出された場合は試験に登録し,オフラベルで治療を行った。血管内治療前のブリッジング療法として血栓溶解療法静注が適応,来院時に軽度の神経障害を呈していた>80歳,脳卒中既往,糖尿病合併例も登録した。
【除外基準】現在のエビデンスで禁忌とされている症例。
【患者背景】平均年齢はtenecteplase群70.8歳,alteplase群71.2歳。それぞれの男性58%,62%。目覚めに症状を呈していた患者4%,4%。退院時の最終診断:脳梗塞74%,77%,一過性虚血発作8%,7%,stroke mimics 18%,17%。脳卒中リスク因子:高血圧45%,43%,高コレステロール血症11%,12%,2型糖尿病13%,13%,心房細動9%,13%。平均NIHSSスコア5.6,5.8。発症-来院時間*79.0分,74.5分。発症-治療時間*118.0分,111分。
*:データが得られたのはtenecteplase群521例,alteplase群514例。
治療法 脳の単純CTを実施後,血栓溶解療法の適応を評価し,基準に合致した患者を以下の2群に無作為割付。救急治療室の研修医と看護師は割付を知らされたが,患者,脳卒中病棟の医師と看護師は盲検化された。
tenecteplase群:549例。0.4 mg/kg(単回ボーラス静注として最大40mg)。
alteplase群:551例。0.9 mg/kg(最大90mg,用量の10%を初回ボーラス静注,その後に用量の90%を1時間かけて静注)。
追跡完了率
結果

●評価項目
すべての評価項目について,両群間に有意差を認めなかった。
3ヵ月後の機能的転帰優良:tenecteplase群354例(64%),alteplase群345例(63%),OR 1.08,95%CI 0.84-1.38,p=0.52。
24~48時間以内の全ICH:47例(9%),50例(9%),OR 0.94,95%CI 0.60-1.45,p=0.82。
24~48時間以内の症候性ICH:15例(3%),13例(2%),OR 1.16,95%CI 0.51-2.68,p=0.70。
24時間以内の著明な神経学的改善:229例(42%), 214例(39%),OR 1.12,95%CI 0.89-1.43,p=0.97。
3ヵ月後の序数的mRSシフト:OR 1.12,95%CI 0.91-1.39,p=0.28。
3ヵ月以内の死亡:29例(5%),26例(5%),OR 1.12,95%CI 0.63-2.02,p=0.68。

●有害事象
重篤な有害事象:tenecteplase群145例(26%),alteplase群141例(26%),p=0.74。
7日後までのもっとも頻度の高い重篤な有害事象はICHで,それぞれ47例(9%),alteplase群50例(9%)であった(p=0.82)。

文献: Logallo N, et al. Tenecteplase versus alteplase for management of acute ischaemic stroke (NOR-TEST): a phase 3, randomised, open-label, blinded endpoint trial. Lancet Neurol 2017; 16: 781-8. pubmed
関連トライアル alteplase静注における治療時間の遅れ,年齢,脳卒中重症度の影響, alteplase投与後の脳内出血リスク(STT二次解析), Cappellari M et al, CLEAR III, DIAS-3, EARLY, ECASS III, ECASS III additional outcomes, ENCHANTED, ENCHANTED prior antiplatelet therapy, ENCHANTED renal impairment, EPITHET, HERMES, IPSS use of alteplase, IST-3, IST-3 18-month follow-up, IST-3 brain imaging signs, IST-3 three year follow-up, J-ACT, J-MARS, Kim BJ et al, SITS-ISTR, SITS-MOST, STRokE DOC, 虚血性脳卒中患者に対するrt-PA療法, 発症からalteplase静注までの時間と転帰
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