抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
Yao X et al Renal outcomes in anticoagulated patients with atrial fibrillation
結論 経口抗凝固薬(OAC)を服用している非弁膜症性心房細動(NVAF)患者において,腎機能の低下は多くみられた。非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC),特にdabigatranおよびrivaroxabanはwarfarinにくらべ,有害腎臓転帰リスク低下と関連している可能性が示唆された。
コメント 抗凝固薬使用が腎機能低下に及ぼす影響を検討した,興味ある論文である。ワルファリンに比し,ダビガトラン,リバーロキサバンでは腎機能低下(eGFRの30%以上の低下,急性腎傷害)の割合が有意に低かった。ワルファリン群における腎機能低下は,特にINRが高い症例で顕著であったが,治療域あるいは治療域を下回る症例においても認められたことから,抗凝固作用以外の因子が関係している可能性がある。ただ,ディスカッションでもどのような可能性が考えられるかは記載されていない。この論文から学ぶべきことは,①DOACにおいて,腎機能低下はワルファリンに比し低いとはいえ,2年間で約1/4の症例がeGFRが30%以上低下すること,②定期的な腎機能評価は重要であることの再認識,であろう。(是恒之宏

目的 AF患者に対しては,生涯にわたるOAC(warfarinまたはNOAC)が適応となる。warfarin投与例の一部では,過度の抗凝固による腎機能の低下がみられる一方,NOACはwarfarinにくらべ,腎機能の良好な維持と関連することが示唆されている。本研究では,OAC 4剤(apixaban, dabigatran, rivaroxaban, warfarin)が腎臓転帰(eGFRの30%以上の低下,血清クレアチニンの2倍の上昇,急性腎傷害,腎不全)に及ぼす影響を比較した。
デザイン 後ろ向きコホート研究。
セッティング 多施設,米国。
期間 登録期間は2010年10月1日~2016年4月30日。平均治療期間10.7ヵ月。
対象患者 9,769例。処方データベースOptum-Labsより同定された,当該期間にOACを開始した≧18歳のNVAF患者で,治療開始前の12ヵ月間継続して保険に登録しており,登録時および追跡時に血清クレアチニン値を入手できた症例。
【除外基準】warfarin服用経験,弁膜症性AF,腎不全,AF以外の適応によるNOAC服用。
【IPTW法前の患者背景】平均年齢はapixaban群73.3歳,dabigatran群69.0歳,rivaroxaban群71.1歳,warfarin群74.3歳。それぞれの女性51.3%,37.2%,42.9%,45.4%。平均eGFR(mL/分/1.73m2)66.2,71.2,70.9,64.6。平均CHA2DS2-VAScスコア4.1,3.5,3.7,4.5。平均HAS-BLED出血リスクスコア2.5,2.1,2.3,2.7。
治療法 対象患者にapixaban, dabigatran, rivaroxaban, warfarinを投与した。
傾向スコアおよびIPTW法を用い,交絡因子を最小化した。
追跡完了率
結果

●評価項目
2年後の各累積リスクは,eGFRの30%以上の低下24.4%(apixaban群25.7%,dabigatran群23.6%,rivaroxaban群22.1%,warfarin群25.8%),血清クレアチニンの2倍の上昇4.0%(それぞれ3.3%,3.5%,2.7%,5.1%),急性腎傷害14.8%(14.9%,8.7%,12.1%,16.3%),腎不全1.7%(2.0%,1.0%,1.7%,1.8%)であった。
NOAC 3剤を統合すると,warfarinにくらべ,以下の低減と関連していた。
eGFRの30%以上の低下:HR 0.77,95%CI 0.66-0.89,p<0.001。
血清クレアチニンの2倍の上昇:HR 0.62,95%CI 0.40-0.95,p=0.03。
急性腎傷害:HR 0.68,95%CI 0.58-0.81,p<0.001。
各NOACをwarfarinと比較したところ,dabigatran,rivaroxabanは以下のリスク低減と関連していたが,apixabanと腎臓転帰との関連は認めなかった。
[dabigatran]
eGFRの30%以上の低下:HR 0.72,95%CI 0.56-0.93,p=0.01。
急性腎傷害:HR 0.55,95%CI 0.40-0.77,p<0.001。
[rivaroxaban]
eGFRの30%以上の低下:HR 0.73,95%CI 0.62-0.87,p<0.001。
血清クレアチニンの2倍の上昇:HR 0.46,95%CI 0.28-0.75,p<0.01。
急性腎傷害:HR 0.69,95%CI 0.57-0.84,p<0.001。

●有害事象

文献: Yao X, et al. Renal Outcomes in Anticoagulated Patients With Atrial Fibrillation. J Am Coll Cardiol 2017; 70: 2621-32. pubmed
関連トライアル Abraham NS et al, ARISTOTLE renal function, Chan YH et al, Chang SH et al, dabigatran,rivaroxaban,apixabanの間接比較, Graham DJ et al, GWTG-Stroke NOAC before stroke, Jackevicius CA et al, Larsen TB et al, Lip GY et al, REAFFIRM, ROCKET AF temporary interruption, Yao X et al, 抗凝固療法中の心房細動患者における死因
関連記事