抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
Maniwa N et al Anticoagulation combined with antiplatelet therapy in patients with left ventricular thrombus after first acute myocardial infarction
結論 左室血栓(LVT)を有する初発急性心筋梗塞(AMI)患者において,適切な抗凝固療法は出血イベントを増加させずに塞栓イベント発症率を低下させることが示唆された。
コメント 初回発症の急性心筋梗塞後の左室内血栓の出現とその後の塞栓症発症を後ろ向きに調査した,わが国の単独施設の成績である。抗凝固療法や抗血小板療法は実地診療のもとで施行された。したがって本試験のみでは,何らかの推奨をするためのエビデンスレベルはそれほど高くない。しかし,1,850例を5~6年追跡した貴重な成績であり,エコーなどでの左室血栓の検出率は5%と比較的低く,左室血栓の関連リスク因子は今までと一致している。左室血栓例に対し,抗血小板薬は100%(DAPT 47%),抗凝固薬を追加したのは80%。3剤併用(抗凝固+DAPT)は38%であったが,1年後は12%に減少した。ハイリスク症例には治療域(INR1.6~2.6)に管理した抗凝固療法が塞栓症の予防に有効であり,出血の増加もないことを示した。また,6ヵ月以降にも半数が塞栓症を発症しており,長期の抗凝固療法がより安全であることが示された。(島田和幸

目的 前壁AMI患者におけるLVT発症率は4~15%と報告されている。欧米のガイドラインでは,AMI後のLVTを有する患者に対し3~6ヵ月以上,出血リスクの上昇がなければ無期限のビタミンK拮抗薬投与を推奨している。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行例に対しては抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)が行われるが,DAPTへ長期抗凝固療法を追加することにより,出血イベントを増加させずに全身性塞栓症を抑制できるかどうかは不明である。本研究では,AMI後のLVTが全身性塞栓症に及ぼす影響を調査し,LVT合併AMI患者において,抗凝固療法の状態と塞栓/出血イベントとの関連を検討した。主要評価項目:全身性塞栓症。副次評価項目:大出血(GUSTO出血基準の中等度~重度の出血,生命に関わる出血)。
デザイン 後ろ向き研究。
セッティング 単施設,日本。
期間 登録期間は2001~2014年。追跡期間中央値5.4年。
対象患者 1,850例。AMI発症から1ヵ月以内に入院した患者連続例。
【除外基準】MI既往例,当該入院中に死亡またはAMI発症後48時間以内に合併症のため他院へ搬送,冠動脈塞栓によるAMI。
【LVTの有無別の患者背景】平均年齢はLVT群62歳,非LVT群68歳*。それぞれの男性80%,74%。高血圧62%,67%。高コレステロール血症65%,56%。糖尿病46%,40%。心房細動9%,8%。脳梗塞/一過性脳虚血発作既往7%,12%。平均CHADS2スコア 1.7,1.7。平均CHA2DS2-VAScスコア 2.4,2.7。平均HAS-BLED出血リスクスコア 2.4,2.4。前壁梗塞92%,39%*。左室駆出(LVEF)36%,46%**p<0.001
治療法 LVTは経胸壁心エコー,左心室造影,心臓MRIにより評価した。
退院時,LVTが検出された92例に対し,抗血小板薬は100%,DAPT(aspirin+clopidogrel,prasugrel,ticlopidineのいずれか)は47%,経口抗凝固薬(OAC)は79%,3剤併用療法(OAC+DAPT)は38%に処方されていた。
追跡完了率
結果

●評価項目
LVTは92例(5.0%)で検出された。
追跡期間中の全身性塞栓症発症は,LVT群15/92例(16.3%)のほうが非LVT群51/1,758例(2.9%)より多かった(log-rank test,p<0.001)。多変量解析によると,全身性塞栓症の独立予測因子は以下の通りであった。
LVT:HR 4.00,95%CI 2.11-7.23,p<0.001。
心房細動:HR 3.25,95%CI 1.63-6.02,p=0.002。
LVEF(1%につき):HR 0.96,95%CI 0.93-0.98,p=0.002。
ビタミンK拮抗薬を服用していたLVT合併例84例について,TTR別に検討を行った。塞栓イベントはTTR≧50%群1/34例(2.9%)のほうが同<50%群9/50例(18.0%)より少なかった(p=0.036)。大出血は同程度であった(TTR≧50%群 9% vs. 同<50%群8%,p=0.89)。

●有害事象

文献: Maniwa N, et al. Anticoagulation combined with antiplatelet therapy in patients with left ventricular thrombus after first acute myocardial infarction. Eur Heart J 2018; 39: 201-8. pubmed
関連トライアル FRAMI, GISSI-2 Connected Study, Gueret P et al
関連記事