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Zupanic E et al
結論 認知症を有する若齢の急性虚血性脳卒中患者は,血栓溶解療法静注(IVT)の実施率が低かった。IVTをうけた患者において,認知症患者は対照患者より3ヵ月後の居住状態および機能的転帰が不良であったが,症候性脳内出血(sICH)および死亡には差異を認めなかった。

目的 認知症は急性虚血性脳卒中に対するIVTの禁忌ではない。しかし,これまでの血栓溶解療法に関する試験の大半では,80歳代以上の患者は除外または登録者数が少なく,これらの年齢層に対するIVT使用についてのガイドラインの勧告は異なっている。また,認知症患者に対するIVTの使用および転帰についての最近のデータは不足している。本研究では,認知症を有する急性虚血性脳卒中患者に対するIVTの使用および転帰を調査し,認知症が使用率の低さまたは転帰不良と関連しているか,検討を行った。
デザイン 縦断的コホート研究。
セッティング 多施設,スウェーデン。
期間 登録期間は2010~2014年。
対象患者 8,111例。スウェーデンの認知症患者登録(SveDem),急性脳血管疾患クオリティ登録(Riksstroke)より同定された,認知症を有する急性虚血性脳卒中患者1,356例(認知症群)および年齢(±3歳)・性別・脳卒中発症年・地域を合致させた,認知症のない急性虚血性脳卒中患者6,755例(対照群)。
【対照群の除外基準】SveDemに登録されたことがある,認知症/錯乱症候群(confusional syndrome)の診断をうけたことがある,抗認知症薬の服用経験がある患者。
【患者背景】[年齢別(≦80歳)]初回脳卒中時の年齢中央値は認知症群77歳,対照群76歳。それぞれの女性45.2%,46.7%。薬剤数6剤,4剤(p<0.001)。心房細動24.8%,18.7%(p=0.003)。血栓溶解療法6.7%,11.8%(p=0.002)。
[年齢別(>80歳)]初回脳卒中時の年齢中央値は認知症群86歳,対照群86歳。それぞれの女性61.6%,62.4%。薬剤数6剤,5剤(p<0.001)。心房細動37.5%,32.8%(p=0.006)。血栓溶解療法7.1%,8.2%。
治療法 スウェーデンのガイドラインでは,2014年まで>80歳の患者に対するIVTを推奨していなかったため,≦80歳の2,841例(認知症群436例+対照群2,405例)と>80歳の5,270例(920例+4,350例)に層別化して解析を行った。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
IVTをうけたのは,認知症群94例(7.0%),対照群639例(9.5%)で,認知症群のほうが少なかった(OR 0.68,95%CI 0.54-0.86)。
認知症群は対照群にくらべ脳卒中前の自立が少なく(52.8% vs 87.1%,p<0.001),IVTをうけた患者はうけなかった患者にくらべ自立が多かった(90.5% vs 80.7%,p<0.001)。
脳卒中前の日常生活動作(ADL)自立例に限定した解析では,認知症とIVT実施の関連は消失したが(OR 0.79,95%CI 0.60-1.06),≦80歳では有意性が持続した(OR 0.58,95%CI 0.36-0.94)。
IVTをうけた症例について,認知症群と対照群でsICH発症率(7.4% vs 7.3%),3ヵ月後の死亡率(22.0% vs 18.8%)には有意差はなかったが,機能的転帰不良(modified Rankin Score[mRS] 5~6)は認知症群のほうが2倍多かった(56.1% vs. 28.1%)。
補正後の解析では,IVTをうけた認知症群はIVTをうけた対照群よりも,3ヵ月後のmRSスコア(OR 3.65,95%CI 2.06-6.45),介護施設入居率が高かった(4.39,95%CI 2.07-9.31)。

●有害事象

文献: Zupanic E, et al. Thrombolysis in acute ischemic stroke in patients with dementia: A Swedish registry study. Neurology 2017; 89: 1860-8. pubmed
関連トライアル ASTRAL influence of arterial occlusion, Gattringer T et al, ICARO-2, Sarikaya H et al, SITS-ISTR unknown-onset stroke, SITS-ISTR young patients
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