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Fukuoka Stroke Registry onset-to-door time
結論 脳卒中発症後6時間以内の早期来院は,再灌流療法実施の有無や脳卒中重症度にかかわらず,虚血性脳卒中後の転帰良好と関連していた。    
コメント 本論文のもっとも重要な点は,急性期虚血性脳卒中の前向きコホート研究において,再灌流療法を実施していない患者(91.7%)でも,軽症例(76.3%)でも,病院受診がより早期であるほど(発症6時間以内),改善がよく3ヵ月後の転帰が良好という結果である。より早期からの抗血栓療法,血圧管理や脳保護療法の開始,虚血部位における側副血行や脳微小循環の改善,加えて急性期合併症を予防する全身管理が良好な転帰と関連しているのであろう。大規模コホートにおける他国の検討でも同様の結果が得られるか,その検証が待たれる。(岡田靖

目的 先行研究より,脳卒中発症後の早期来院が転帰良好と関連することが示唆されている。しかし,それらの研究は再灌流療法をうけた患者を対象とし,良好な転帰はおもに超早期における再灌流療法によりもたらされたものである。本研究では,再灌流療法が行われなかった脳卒中患者,または軽症脳卒中患者(National Institute of Health stroke scale[NIHSS]≦4)において,早期来院が転帰良好と関連しているか検討した。主要評価項目:神経学的改善(入院中のNIHSSの≧4点改善または退院時スコア0)および機能的転帰良好(3ヵ月後のmodified Rankin Score[mRS] 0~1)。
デザイン 前向きコホート研究。UMIN 000000800。
セッティング 多施設,日本。
期間 登録期間は2007年7月~2014年12月。
対象患者 6,780例。脳卒中発症から7日間以内に研究参加病院に入院した患者。
【除外基準】脳卒中発症前からの障害(mRS≧2),院内発症脳卒中,3ヵ月後の機能的転帰不明。
【患者背景】発症-来院時間により,≦1時間:T0-1群(770例),>1~≦2時間:T1-2群(578例),>2~≦3時間:T2-3群(390例),>3~≦6時間:T3-6群(710例),>6~≦12時間:T6-12群(766例),>12~≦24時間:T12-24群(1,320例),>24時間:T24-群(2,246例)に分類した。
平均年齢はT0-1群70歳,T1-2群70歳,T2-3群71.7歳,T3-6群70.1歳,T6-12群70.4歳,T12-24群70.1歳,T24-群69.3歳(傾向p=0.001)。それぞれの男性64.2%,67.5%,62.1%,65.4%,64.6%,62.6%,63.2%。高血圧74.6%,78%,78%,78.5%,78.5%,80.5%,80.3%(傾向p=0.001)。脂質異常症* 46.9%,49.1%,49.7%,54.7%,52.1%,54.6%,59.9%。糖尿病* 21.6%,24.4%,27.4%,33.5%,28.2%,33.2%,34.6%。心房細動* 37.5%,29.4%,27.7%,23.8%,20.9%,19.9%,14.1%。脳卒中既往17.3%,16.8%,20.5%,19.7%,14.6%,16.6%,15.8%。救急車の使用* 83.4%,71.1%,70.3%,55.9%,56.7%,43.0%,25.6%。診療時間内の到着* 33.5%,40.5%,37.4%,42.1%,35.1%,55.2%,69.2%。NIHSSスコア中央値* 4,3,3,3,3,3,2。軽症脳卒中* 55.6%,60.7%,67.4%,70.4%,66.6%,74.4%,83.3%。*:傾向p≦0.001
治療法 stroke care unitを有する施設で,脳卒中専門の神経内科医が評価し,最適な治療を可及的すみやかに実施した。再灌流療法(静注/動注rtPA,機械的血栓除去術を併用した血管内治療,血管形成術,ステント留置術,急性期後の頸動脈内膜剥離術)は,通常発症6時間以内に行った。6時間後であっても,特別なケースについては再灌流療法を行った。
追跡完了率 100%
結果

●評価項目
発症-来院時間≦6時間は2,448例(36.1%)であった。
神経学的改善はT0-1群70.0%,T1-2群67.8%,T2-3群55.1%,T3-6群57.9%,T6-12群55.2%,T12-24群48.9%,T24-群48.3%(傾向p<0.001)。機能的転帰良好はそれぞれ65.2%,67.1%,63.1%,64.1%,60.7%,65.0%,71.0%で得られた(傾向p=0.002)。
発症-来院時間と主要転帰の関連について,ロジスティック回帰分析を用いて潜在的交絡因子(再灌流療法,入院時NIHSSなど)を補正した。T24-群と比較したOR(95%CI)は,発症-来院時間が6時間以内の場合に有意に上昇した。
神経学的改善:T0-1群2.79(2.28-3.42),T1-2群2.49(2.02-3.07),T2-3群1.52(1.21-1.92),T3-6群1.72(1.44-2.05),T6-12群1.52(1.28-1.81)。
機能的転帰良好:T0-1群2.68(2.05-3.49),T1-2群2.10(1.60-2.77),T2-3群1.53(1.15-2.03),T3-6群1.31(1.05-1.64)。
この関連は,再灌流療法を行わなかった6,216例,軽症脳卒中患者4,793例でも認められた。
[再灌流療法非実施]神経学的改善:T0-1群2.82(2.25-3.53),T1-2群2.36(1.88-2.96),T2-3群1.58(1.24-2.01),T3-6群1.74(1.45-2.09),T6-12群1.53(1.28-1.83)。
機能的転帰良好:T0-1群2.72(2.00-3.70),T1-2群2.10(1.54-2.87),T2-3群1.51(1.11-2.06),T3-6群1.32(1.05-1.67)。
[軽症脳卒中]神経学的改善:T0-1群3.07(2.38-3.96),T1-2群2.50(1.93-3.25),T2-3群1.53(1.16-2.03),T3-6群1.68(1.36-2.07),T6-12群1.36(1.11-1.67)。
機能的転帰良好:T0-1群2.63(1.87-3.71),T1-2群2.15(1.51-3.04),T2-3群1.57(1.10-2.22)。

●有害事象

文献: Matsuo R, et al.; Fukuoka Stroke Registry Investigators. Association Between Onset-to-Door Time and Clinical Outcomes After Ischemic Stroke. Stroke 2017; 48: 3049-3056. pubmed
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