抗血栓トライアルデータベース
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結論 心房中隔動脈瘤または大型心房間シャントを伴う,卵円孔開存(PFO)に起因する最近の脳卒中既往患者において,PFO閉鎖+抗血小板療法併用は抗血小板療法単独より脳卒中再発率が低かった。PFO閉鎖は心房細動リスク上昇と関連していた。
コメント 比較的簡単な臨床的仮説検証試験はやり尽くされた感がある。本試験も複雑な仮定に基づく複雑なランダム化比較試験であり,仮説が試験により検証されたか否かは論文を読んでもわからない。
経食道エコーを丁寧に行うと20%程度の症例に卵円孔開存を認める。腹圧上昇時などに右左シャントになって静脈血栓が脳に塞栓するリスクはある。実際,少数例であるが出産時,潜水時などに奇異性塞栓を経験する。テクノロジーとしては,卵円孔を経カテーテル的に閉鎖することは可能である。しかし,本研究では閉鎖後の症例は心房細動が多いことを示唆した。
比較的若年の脳卒中であっても,卵円孔を介する奇異性塞栓であることを証明することはできない。それでも思い切って卵円孔閉鎖群と非閉鎖群にランダムに割り付けた。卵円孔閉鎖群では脳卒中,脳卒中・TIA・全身塞栓症の複合エンドポイントが少なかった。登録症例を絞り込んでいるので,若年で実際に奇異性塞栓である症例が本研究では多かった可能性はある。試験結果は興味があるが,日本を含めた世界の若年の脳梗塞症例一般に卵円孔閉鎖を勧める根拠になるか否かの判断は難しい。観察期間中の脳卒中,脳卒中・TIA・全身塞栓症の複合エンドポイントが少なくても卵円孔閉鎖時の術前後の合併症超えるメリットとは言えない。野心的研究ではあるが,標準治療転換のインパクトはない。(後藤信哉

目的 症例対照研究によってPFOと奇異性脳卒中の関連が示されているが,脳卒中再発抑制におけるPFO閉鎖の役割は依然として明らかではない。PFO閉鎖により脳卒中再発リスクは低下すると思われるが,複数のランダム化比較試験では,抗血栓療法に対するPFO閉鎖の優位性は示されていない。本研究では,心房中隔動脈瘤または大型心房間シャントを伴う,PFOに起因する最近の奇異性脳卒中患者において,PFO閉鎖+長期抗血小板療法,経口抗凝固療法(OAC),抗血小板療法単独のベネフィットを比較した。主要評価項目:致死的または非致死的脳卒中。副次評価項目:脳梗塞+一過性虚血発作(TIA)+全身性塞栓症,障害の残る脳卒中,脳梗塞,脳出血,TIA,全身性塞栓症,全死亡,血管関連死,デバイス植え込み成功,PFO閉鎖成功。安全性評価項目:重大または致死的な手技的または出血性合併症。
デザイン PROBE(Prospective, Randomized, Open, Blinded-Endpoint),非劣性試験。intention-to-treat解析。NCT00562289。
セッティング 多施設(34施設),フランス,ドイツ。
期間 登録期間は2008年12月~2016年12月。平均追跡期間は5.3年。
対象患者 663例。16~60歳,心房中隔動脈瘤(一次中隔または大型心房間シャント)を伴い,PFO以外に特定できる原因がない脳梗塞の発症から6ヵ月以内の患者。
【除外基準】-
【患者背景】[グループ1および2]平均年齢はPFO閉鎖群42.9歳,抗血小板療法単独群43.8歳。それぞれの男性57.6%,60.4%。当該イベント:頸動脈梗塞61.3%,59.1%,椎骨脳底梗塞38.7%,40.9%。心房中隔の異常:PFO+大型シャント66.0%,68.5%,PFO+大型シャント+心房中隔動脈瘤24.8%,26.4%,PFO+軽度~中等度シャント+心房中隔動脈瘤9.2%,5.1%。
[グループ1および3]平均年齢はOAC群43.8歳,抗血小板療法単独群44.7歳。それぞれの男性55.6%,58.6%。当該イベント:頸動脈梗塞55.6%,61.5%,椎骨脳底梗塞44.4%,38.5%。心房中隔の異常:PFO+大型シャント60.4%,71.3%,PFO+大型シャント+心房中隔動脈瘤32.1%,24.1%。PFO+軽度~中等度シャント+心房中隔動脈瘤7.5%。4.6%。
治療法 グループ1として,PFO閉鎖群(PFO閉鎖+長期抗血小板療法),抗血小板療法単独群,OAC群に1:1:1で無作為に割り付けた。また,個々の患者の状況に応じ,OAC禁忌の患者はPFO閉鎖群または抗血小板療法単独群に(グループ2),PFO閉鎖禁忌の患者は,OAC群または抗血小板療法単独群に割り付けた(グループ3)。
PFO閉鎖施行患者には抗血小板薬2剤併用療法(DAPT;aspirin+clopidogrel各75mg/日)を3ヵ月実施後,抗血小板薬単独療法を実施した。
OAC群にはビタミンK拮抗薬(目標INR 2~3)または直接経口抗凝固薬(DOAC)を投与した。
抗血小板療法単独群またはPFO閉鎖群では,aspirin,clopidogrel,aspirin+徐放性dipyridamoleを使用した(DAPTが用いられたPFO閉鎖施行後3ヵ月を除く)。
PFO閉鎖の抗血小板療法単独に対する優越性の検討は,グループ1と2のデータを統合(PFO閉鎖群238例,抗血小板療法単独群235例),OACと抗血小板療法単独の比較は,グループ1と3のデータを統合(OAC群187例,抗血小板療法単独群174例)して行った。
追跡完了率 グループ1および2:追跡不能は抗血小板療法単独群2例。
グループ1および3:追跡不能はOAC群5例,抗血小板療法単独群1例。
結果

●評価項目
患者登録が予定より遅かったことから,2014年12月18日に登録を中止し,全例の追跡を2016年12月18日まで行うこととした。
[PFO閉鎖群と抗血小板療法単独群の比較]
脳卒中発症はPFO閉鎖群0/238例で,抗血小板療法単独群14/235例にくらべ抑制された(HR 0.03,95%CI 0-0.26,p<0.001)。
脳卒中+TIA+全身性塞栓症の複合は,PFO閉鎖群3.4%で,抗血小板療法単独群8.9%にくらべ抑制された(HR 0.39,95%CI 0.16-0.82,p=0.01)。
TIA,障害の残る脳卒中,大出血,重篤

●有害事象
PFO閉鎖群における手技的合併症は14 例(5.9%)。心房細動/粗動の新規発症率は,PFO閉鎖群4.6%のほうが抗血小板療法単独群0.9%より高かった(p=0.02)。重篤な有害事象の発生率は,PFO閉鎖群35.7%,抗血小板療法単独群33.2%(p=0.56)。

文献: Mas JL, et al.; CLOSE Investigators. Patent Foramen Ovale Closure or Anticoagulation vs. Antiplatelets after Stroke. N Engl J Med 2017; 377: 1011-1021. pubmed
関連トライアル CLOSURE I, FORI, PC Trial, RESPECT
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