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高齢慢性硬膜下血腫患者に対する抗血栓療法
Anticoagulant and antiplatelet use in seniors with chronic subdural hematoma: Systematic review
結論 高齢の慢性硬膜下血腫(cSDH)患者において,抗凝固療法の再開は再出血リスク上昇と関連していたが,抗血小板療法とリスク上昇との関連は不明であった。抗血栓療法の至適再開時期については,今後の研究が必要である。
コメント 高齢者の慢性硬膜下血腫の再発に抗凝固療法の再開が関連し,抗血小板薬の再開の関与は不明であったという。抗血栓薬の再開に際しては転倒のリスクと抗血栓薬対象疾患のリスクを勘案して判断せざるを得ないが,今後,抗凝固薬や抗血小板薬の種類毎のリスク評価も今後必要であろう。(矢坂正弘

目的 フレイルの高齢者では転倒リスクが上昇することから,cSDHが多くみられる。このような患者ではしばしば抗血栓療法を必要とする病態を有するが,抗血栓療法を再開するかどうかは難しい選択である。本研究は,高齢cSDH患者において,抗凝固療法/抗血小板療法を再開するかどうか検討した(2012年まで検索した前回のレビュー[Br J Neurosurg 2014; 28: 2-7]のアップデート)。主要評価項目:追跡期間中の内科的/外科的介入を必要とする再出血,血栓塞栓イベント。
方法 Medline,Embase(OVIDインターフェースを使用),ISI Web of Knowledge, Google Scholar,PLOS,Cochran Register for Systematic Reviews databaseにて,2012年1月~2016年12月まで検索。全言語を対象とした。先行のシステマティックレビューの参考文献のスクリーニングも行った。エビデンスレベルをGRADE(the Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)にて評価した。CRD42016038920。
検索対象:(1)抗凝固薬療法/抗血小板療法中に外傷性硬膜下血腫/cSDHが発症した>65歳の患者に対し,外科的治療/介入後,抗凝固薬療法/抗血小板療法の再開を評価している試験,(2)各群>10例を対象としている前向き/後ろ向き観察研究または介入研究。
除外:治療用量の代わりに予防用量の抗凝固薬を考慮,SDH発症前の抗血小板療法のみ検討,ケースシリーズ研究,SDHではなく頭蓋内出血にフォーカスをあてた研究など。
対象 7研究。すべて後ろ向きコホート研究で,日本の研究を含む(Neurol Res 2015; 37: 985, Neurosurg Rev 2013; 36: 145, Br J Neurosurg 2014; 28: 204)。GRADEスコアは4研究が2点(低評価),2研究が3点(中等度評価),1研究が3~4点(中等度~高評価)。
対象患者数は計2,275例。平均年齢72.0歳,女性29.8%,各研究の例数163~479例。患者の大部分が局所麻酔下にて1ヵ所の穿頭孔を施術されていた。
主な結果 ・再出血
抗凝固療法と抗血小板療の複合データを報告した4研究のうち,抗凝固療法/抗血小板療法が再出血の有意なリスク因子であるとしたのは1研究のみであった(OR 3.90,95%CI 1.53-10.26)。
2研究では抗凝固療法のみを考慮し,両研究とも数値的には再出血リスクは上昇していたが,有意差がみられたのは1研究のみであった(OR 1.75,95%CI 0.18-16.86;OR 2.7,95%CI 1.42-6.96)。
抗血小板療法のみを考慮した2研究では,再出血との関連はみられなかった(OR1.17,95%CI 0.33-4.14;OR 0.46,95%CI 0.10-1.59)。

・血栓塞栓イベント
抗凝固療法と抗血小板療の複合データを用いた1研究では,術後の血栓塞栓イベントのリスクは上昇しなかった(HR 1.00,95%CI 0.98-1.02)。なお,本研究の追跡期間は比較的短かった。

・抗血栓療法の再開時期
1研究では抗血小板療法の再開時期は再出血との関連がみられなかった(術後≦7日 15例,≦2ヵ月 15例,≧3か月 14例)。
1研究では,術後創傷治癒後に抗凝固療法を再開すると再出血のリスクが上昇した。
別の1研究では,抗血栓療法の至適再開時期を同定するのに十分な再発発症率が得られなかった。
文献: Nathan S, et al. Anticoagulant and antiplatelet use in seniors with chronic subdural hematoma: Systematic review. Neurology 2017; 88: 1889-1893. pubmed
関連トライアル ACS後の患者における新規経口抗凝固薬の追加効果, CADISS, Gaist D et al, NASPEAF, RE-LY concomitant use of antiplatelet, VTE二次予防の抗血栓療法の有効性および安全性, WAVE, ビタミンK拮抗薬の硬膜下血腫リスク, 抗血小板療法中のACS後の患者に対する新規抗凝固薬の使用
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