抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
メタ解析
PCI施行ACS患者のDAPT実施期間
Duration of Dual Antiplatelet Therapy in Patients with an Acute Coronary Syndrome Undergoing Percutaneous Coronary Intervention
結論 急性冠症候群(ACS)患者において,12ヵ月の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は延長投与にくらべ,大出血は低減したが,心筋梗塞が増加した。心血管死ならびに全死亡については,有意差はみられなかった。一部の患者では短期DAPTが妥当かもしれないが,他の患者集団では延長投与が適切である可能性がある。出血と虚血イベントの両リスクを考慮に入れると,個々の患者に対するアプローチが必要である。
コメント 急性冠症候群(ACS)患者の薬剤溶出性ステント(DES)留置後,血管内皮の回復を待って,いつまで抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を続けるべきか,日常実地臨床に直結する疑問である。DAPT継続1年後に単剤(アスピリンもしくはクロピドグレルなど他薬)に切り換えることを標準治療とすると,それより短期間で単剤に切り換えても血栓症リスクは増えずに,出血リスクを減らせるか,あるいは,1年以上長期間DAPTを継続した方が血栓症リスクをさらに減少して,かつ出血リスクも増やさないか,これらの疑問を解決するために,さまざまな臨床試験が実施されてきた。本論文も,これらの試験をメタ解析したもののひとつである。結論は,1年間のDAPTと比較して,3~6ヵ月の短期間DAPTでも血栓症リスクは増えない。しかし,1年以上継続した方が,出血リスクは多少増えるが心筋梗塞リスクを減らすハイリスク患者群も存在する,ということである。これらを選別する臨床・手技関連リスクスコアが考案されているが,欧米人と日本人は血栓・出血リスクが異なるので,日本人独自の成績が必要である。(島田和幸

目的 最近のAHA/ACCガイドラインでは,ACS患者に対し1年間のDAPTを推奨している(Class IIb)。Udellらのメタ解析(Eur Heart J 2016; 37: 390)では,1年以上のDAPT延長は虚血イベント抑制と関連していたが,大出血が増加した。しかしながら,同解析ではPEGASUS-TIMI 54(心筋梗塞発症から1~3年経過後の患者を含む)ならびにCHARISMA(ステント留置後,異なるDAPT期間を検討するためにデザインされた試験ではない)が含まれていた。本メタ解析では,PCI施行ACS患者について,至適DAPT期間を検討した。
方法 PubMed,Embase,Scopus,Google Scholar,ClinicalTrials.govにて,それぞれの開始日から2017年3月1日まで検索。言語の制限は設けなかった。最近10年間における主要心血管関連学会抄録のスクリーニング,関連研究の文献リストのハンドサーチも行った。
検索対象:異なる期間のDAPTを比較したRCT(≦6ヵ月[短期],12ヵ月,>12ヵ月[延長]),ACS患者において,心血管および出血転帰に関するデータを提供している研究。
対象 8試験(RESETは3ヵ月 vs. 1年,I-LOVE-IT 2,ITALICISAR-SAFE は6ヵ月 vs. 1年,PRODIGYARCTIC-Interruption DAPT試験DES LATEは1年 vs. >1年のDAPTを比較)。
12,917例(短期群6,464例+長期群6,453例)。
本解析はACS患者のみを対象とした。
DAPTの構成薬としてもっとも多かったのはaspirin+clopidogrelで,prasugrelは2試験,ticagrelorは1試験で投与された。
DAPT試験およびPRODIGYでは1/4以下の患者にBMSが用いられたが,それ以外の試験ではもっぱらDESが用いられた。
DAPT期間の比較は(1)短期(≦6ヵ月)vs. 12ヵ月または延長(>12ヵ月),(2)12ヵ月 vs. 延長,に層別化した。
主な結果 12ヵ月のDAPTは延長投与にくらべ,心筋梗塞は増加したが大出血リスクは低下した。それ以外については有意差は認められなかった。

・心血管死(7試験)
≦6ヵ月群1.9%,12ヵ月/延長群1.8%,RR 1.04,95%CI 0.67-1.60,I2=0%,p=0.88。
12ヵ月群1.1%,延長群0.9%,RR 1.17,0.73-1.86,I2=0%,p=0.52。

・心筋梗塞(8試験)
≦6ヵ月群2.7%,12ヵ月/延長群2.5%,RR 1.08,0.79-1.47,I2=0%,p=0.63。
12ヵ月群3.4%,延長群1.7%,RR 2.00,1.47-2.73,I2=0%,p<0.0001。

・definite/probableステント血栓症(8試験)
≦6ヵ月群0.77%,12ヵ月/延長群0.47%,RR 1.56,0.81-2.99,I2=0%,p=0.18。
12ヵ月群1.2%,延長群0.5%,RR 2.26,0.98-5.22,I2=39%,p=0.06。

・大出血(8試験)
≦6ヵ月群1.1%,12ヵ月/延長群1.2%,RR 0.91,0.49-1.69,I2=17%,p=0.77。
12ヵ月群1.3%,延長群2.2%,RR 0.58,0.34-0.98, I2=34%,p=0.04。

・全死亡(7試験)
≦6ヵ月群2.9%,12ヵ月/延長群2.7%,RR 1.06,0.77-1.45,I2=0%,p=0.60。
12ヵ月群2.1%,延長群1.8%,RR 1.15,0.82-1.61, I2=0%,p=0.42。

全項目について,出版バイアスはみられなかった。
文献: Bavishi C, et al. Duration of Dual Anti-Platelet Therapy in Patients with an Acute Coronary Syndrome undergoing Percutaneous Coronary Intervention: A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Am J Med 2017; : . pubmed
関連トライアル ARCTIC-Interruption, DAPT BMS or DES, DAPT myocardial infarction, DES留置とDAPT実施期間, DES留置患者における臨床症状による至適DAPT期間, , DES留置後のDAPTの至適期間, DES留置後のDAPT延長投与, DES留置後のDAPT期間:短期と長期の比較, DES留置後長期DAPTによる死亡率, ITALIC, OPTIMIZE, PARIS, PCI施行患者における抗血栓療法:2剤併用と3剤併用の比較, PRODIGY impact of clinical presentation, PRODIGY in-stent restenosis, RESET, SECURITY, Varenhorst C et al, ステント留置術施行患者におけるTAPTの有効性および安全性, 心筋梗塞患者におけるDAPT延長による心血管イベント二次予防, 複雑PCI施行後のDAPTの有効性および安全性
関連記事