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Tepper PG et al Ischemic Stroke in Nonvalvular Atrial Fibrillation at Warfarin Initiation: Assessment via a Large Insurance Database
結論 非弁膜症性心房細動(NVAF)患者において,warfarin投与開始直後30日間は脳梗塞リスクがわずかに上昇するようであったが,その後は有意に低下した。本結果より,直接作用型経口抗凝固薬を使用することでwarfarin開始によって引き起こされる一時的な凝固性亢進を避けられるという潜在的利点が新たに示された。
コメント ワルファリン導入早期に脳梗塞リスクが上昇するとの,これまでの報告と一致する報告である。ワルファリン導入初期には,凝固因子よりも生理的凝固阻止因子のプロテインCやプロテインSが強く抑制され,凝固亢進状態が一時的に惹起されることの関与が推察される。リスクの高い症例では,直接作用型経口抗凝固薬の導入を考慮するか,ワルファリンを導入するなら,PT-INRが治療領域に入るまでヘパリンを併用することが重要であろう。(矢坂正弘

目的 心房細動患者を対象とした試験では,warfarin投与直後に血栓塞栓リスクが上昇したことが報告されている。ただし,イベントは短期間に発症し,数が少ないため,この影響を研究するためには大規模なデータが必要となる。本研究では医療保険のデータベースを用い,warfarinを開始したNVAF患者における脳梗塞リスクを非warfarin投与例と比較した。
デザイン 後ろ向きコホート研究。
セッティング 多施設,米国。
期間 登録期間は2009年1月1日~2010年12月31日。追跡期間中央値415日。
対象患者 45,338例。Truven MarketScanデータベース登録者のうち,AFの一次/二次診断(1回以上の入院または30日以上間隔を開けた2回以上の外来診療による)をうけ,warfarin初回処方日(開始日)前に12ヵ月間継続して登録されていた成人患者44,313例のうち,warfarin/dabigatranを処方されていない患者(対照群)と傾向スコアが合致した症例(warfarin群,対照群各22,669例)。
【除外基準】一過性の周術期AF,AF診断時に心臓弁膜症/甲状腺機能亢進症,開始日前30日間に出血/脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)が発症した患者,開始日前6ヵ月間にwarfarinまたはdabigatranを処方されているか,外来でINRを2回以上測定した患者。
【患者背景】年齢中央値はwarfarin群74歳,対照群74歳。それぞれの女性40.8%,40.8%。AF診断日から開始日までの期間中央値27日,27日。平均CHADS2スコア*1.26,1.19。平均ATRIAスコア*1.72,1.65。平均チャールソン併存疾患指数*1.01,0.92。脳梗塞/TIA既往*2.4%,1.2%。出血既往*5.4%,3.6%。*p<0.0001
治療法 対照群は,登録期間中にwarfarin/dabigatranを処方されなかったNVAF患者のうち,性別・AF診断時の年齢・AF診断日・傾向スコアがwarfarin群と1:1で合致した者。潜在的交絡因子(AF診断時の年齢・性別・医療保険の種別・地域・チャールソン併存疾患指数・CHADS2スコア・脳梗塞/TIA既往・出血既往・併存疾患・薬物療法)をAF診断前の12ヵ月間にて同定した。開始日は相当するwarfarin群と同一とした。
追跡は脳梗塞の発症/保険解約/治療中止/治療変更/試験終了まで行った。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
開始日後30日間の脳梗塞発症率は,warfarin群の方が対照群にくらべ,数値的には高いものの有意差は認めなかった(最初の2日間に限定するとp=0.046)。それ以降は低かった。
30日間:27/1,836例(1.47%/年)vs. 18/1,837例(0.98%/年),p=0.17。
30日以降:134/16,543例(0.81%/年)vs. 406/37,248例(1.09%/年),p=0.01。
多変量Cox回帰によると,warfarinと開始日からの経過時間との間に交互作用がみられた(30日間:HR 1.46,95%CI 0.80-2.65,30日以降:HR 0.70,95%CI 0.57-0.85,補正後p=0.02)。
サブグループ解析の結果,CHADS2スコア≧2,年齢≧75歳,入院患者(外来患者に比し)においても30日間はwarfarin開始により脳梗塞リスクが上昇する傾向がみられ,それ以降はwarfarin群において同リスクが有意に低下した(24~38%)。warfarin投与と開始日からの経過時間の間に交互作用がみられた(p<0.05)。
開始日から30日間における大出血の発症率はwarfarin群(90/1,837例;4.9%/年)の方が対照群(59/1,843例;3.2%/年)にくらべ高く(p=0.01),それ以降も持続した(p<0.0001)。

●有害事象

文献: Tepper PG, et al. Ischemic Stroke in Nonvalvular Atrial Fibrillation at Warfarin Initiation: Assessment via a Large Insurance Database. Stroke 2017; 48: 1487-1494. pubmed
関連トライアル Abraham NS et al, ARISTOTLE major bleeding, ATRIA on and off anticoagulants, AVERROES bleeding, Chan YH et al, Chao TF et al, da Vinci, Deguchi I et al, ENGAGE AF-TIMI 48 previous stroke/TIA, Graham DJ et al, Hylek EM et al, Nielsen PB et al, Pearce LA et al, RAF, ROCKET AF elderly patients, ROCKET AF post hoc analysis, ROCKET AF temporary interruption, SPORTIF V, Tung JM et al, warfarinによるNVAF患者の脳卒中予防, 心房細動患者に対する脳卒中予防療法における年齢効果
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