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高齢心房細動患者における出血リスク:抗血小板薬と抗凝固薬の比較
Bleeding risk of antiplatelet drugs compared with oral anticoagulants in older patients with atrial fibrillation: a systematic review and meta-analysis
結論 aspirinまたはclopidogrelを投与されている高齢患者は,経口抗凝固薬投与例にくらべ,大出血リスクは同程度であった。全出血ならびに頭蓋内出血リスクは,抗血小板療法のほうが低かった。
コメント 高齢者は血栓イベント,出血イベントリスクともに高いので,抗血栓薬の選択が難しい。過去のランダム化比較試験とコホート研究を集積して,抗血小板薬と抗凝固薬の出血イベントリスクの比較を探索した。
ワルファリンによる重篤な出血合併症は臨床医の「腕」により影響を受ける。一般論としての比較は困難である。ワルファリン群の重篤な出血イベントが抗血小板併用療法と同等というのは,臨床医の感覚とマッチする。全体として,ワルファリンの方が抗血小板薬より出血イベントが多いという本研究の結果は,実臨床を反映していると考える。(後藤信哉

目的 先行研究より,長期抗血小板療法による出血リスクは,抗凝固療法によるそれより高いことが示されている。しかしながら,80歳代の心房細動患者に対する試験などからは,抗血小板療法による大出血リスクは抗凝固療法と同程度と報告されており,高齢患者における抗血小板療法の出血リスクは,推定されていたより高い可能性がある。本研究では,高齢患者の抗血小板療法の出血リスクを抗凝固療法と比較した。主要評価項目:ISTH出血基準大出血
方法 MEDLINE,PubMed,EMBASE,Cochrane Libraryにて,それぞれの開始日から2016年1月まで検索。検索した論文のほか,最近のレビュー論文やガイドラインの文献リストのハンドサーチも行った。言語の制限は設けなかった。
検索対象論文:(1)RCTならびにバイアスリスクが低い非RCT(準RCT,非RCT,インターベンション実施前後に前向きに観察している研究,前向き/後ろ向きのパラレルコホート研究)。(2)抗血小板薬(aspirinなど)を抗凝固薬(warfarin,他のビタミンK拮抗薬,直接作用型経口抗凝固薬[DOAC])と比較。(3)65歳以上の患者を対象(>65歳の患者が70%以上,またはこの年齢層の患者を別に解析)。(4)患者を6ヵ月以上追跡し,出血イベント発症率を報告。
除外:症例管理研究,後ろ向きに過去の症例と比較している研究,断面解析研究,症例報告/症例シリーズ論文。周術期または手術後の出血性合併症についての研究。抗血小板薬+抗凝固薬併用例。
対象 11研究。RCT 7件(4,550例;AFASAK-1, SPAF-2AFASAK-2BAFTA,WASPO, AVERROES,Liu et al)+コホート研究4件(38,649例;Framingham,Buresly et al,Fosbol et al,Lamberts et al)。
AVERROES(aspirinとapixabanを比較)以外はaspirinまたはclopidogrelとwarfarinを比較。
抗血栓療法の適応病態:心房細動(全研究),急性冠症候群(3研究)。
主な結果 ・大出血(RCT 6件,2,652例+コホート研究3件,11,859例)
aspirinまたはclopidogrelの大出血リスクはwarfarinにくらべ,RCTでは同等,非RCTでは低く,全研究を統合した場合は有意差を認めなかった。
RCT:RR 1.01,95%CI 0.69-1.48,p=0.96,不均一性p=0.99,エビデンスのクオリティは中等度。
非RCT:RR 0.87,95%CI 0.77-0.99,p=0.03,不均一性p=0.56,エビデンスのクオリティは低い。
全研究:RR 0.86,95%CI 0.73-1.01,p=0.07,不均一性p=0.13。

・全出血(RCT 5件,1,882例+コホート研究2件,21,605例)
RCT:RR 0.73,95%CI 0.56-0.96,p=0.02,不均一性p=0.29。
非RCT:RR 0.69,95%CI 0.49-0.97,p=0.03,不均一性p=0.08。
全研究:RR 0.70,95%CI 0.57-0.86,p=0.0008,不均一性p=0.08。

・頭蓋内出血(RCT 3件,1,697例+コホート研究3件,24,059例)
RCT:RR 0.61,95%CI 0.28-1.32,p=0.21,不均一性p=0.83。
非RCT:RR 0.41,95%CI 0.24-0.70,p=0.001,不均一性p=0.82。
全研究:RR 0.46,95%CI 0.30-0.73,p=0.0008,不均一性p=0.92。

・全死亡(RCT 4件,2,214例+コホート研究1件,5,617例)
RCT:RR 1.20,95%CI 0.78-1.86,p=0.41,不均一性p=0.15。
非RCT:RR 0.93,95%CI 0.72-1.19,p=0.55,不均一性p=0.01。
全研究:RR 0.99,95%CI 0.82-1.21,p=0.96,不均一性p=0.03。

・サブグループ解析
80歳以上ではwarfarinのほうがaspirinより大出血リスクが高い可能性が示唆された(80歳以上:RR 0.80,95%CI 0.69-0.90,65~80歳:RR 0.87,95%CI 0.64-1.19)。二つの年齢層の間には有意差を認めなかった(p=0.62)。
文献: Melkonian M, et al. Bleeding risk of antiplatelet drugs compared with oral anticoagulants in older patients with atrial fibrillation: a systematic review and meta-analysis. J Thromb Haemost 2017; 15: 1500-1510. pubmed
関連トライアル ACS後の患者における新規経口抗凝固薬の追加効果, Lamberts M et al, NOACのwarfarinに比較しての死亡率抑制効果, RCTにおけるwarfarinとaspirinの出血リスク, RE-LY concomitant use of antiplatelet, 心血管疾患リスクを有する患者におけるaspirin+OAC併用とOAC単独投与の比較, 新規経口抗凝固薬4剤のwarfarinに対する有効性・安全性, 脳卒中/TIA後のDAPTによる二次予防
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