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メタ解析
VKA関連出血に対する4F-PCC
Benefits and harms of 4-factor prothrombin complex concentrate for reversal of vitamin K antagonist associated bleeding: a systematic review and meta-analysis
結論 4因子プロトロンビン複合体濃縮製剤(4F-PCC)は,ビタミンK拮抗薬(VKA)関連出血の中和に関し,有効かつ安全であった。
コメント 直接的トロンビン,Xa因子阻害薬使用時の重篤な出血合併症に対する中和剤の効果が注目されている。しかし臨床家としては,重篤な出血イベントに対し,輸血にて対応する経験を長年重ねている。成分輸血の技術も進歩し,病態に応じた血液成分輸血が可能となった。ワルファリンに代表されるビタミンK依存性の凝固因子阻害薬使用時には,第II, VII, IX, X因子の活性が低下する。近年の研究では,活性化血小板膜上におけるプロトロンビナーゼ複合体形成の重要性が示されている。そこで,これらの4つの因子を濃縮したPCCがワルファリン使用症例の重篤な出血時の止血に重要と考えられた。
本研究は,ランダム化比較試験と観察研究を混在させたメタ解析である。ランダム化比較試験の集積のメタ解析と異なり,エビデンスレベルは高くない。ただし,重篤な出血イベントの発症数は少なく,ランダム化比較試験の計画には困難性がある領域のため,臨床医が参考にする資料としては意味がある。ワルファリンの薬効はPT-INRと相関性がある。PT-INRの正常化は4F-PCCにより短縮した。ダビガトランの抗体,抗Xa薬の囮療法とは異なり,本研究では4F-PCCの使用により死亡率の減少が示唆されている。
ランダム化比較試験の結果にもとづく標準治療の転換という論理は,患者集団が一様な場合には機能する。抗凝固薬服用中に重篤な出血を起こした症例は,もともと出血リスクの高かった症例,個別に抗凝固薬が過剰であった症例など不均一である。エビデンスにもとづいた選択よりも,その場の臨床家の直感に応じた判断の方が信頼できる領域と考える。(後藤信哉

目的 PCCは,出血性合併症発症患者におけるVKAの中和に用いられる。本研究では,VKA関連出血患者において,4F-PCCのベネフィットとリスクを評価した。また,新鮮凍結血漿(FFP)または治療なしとの比較も行った。
方法 PubMed(1945~2015年8月),EMBASE(1947~2015年8月),CENTRAL(1976~2015年8月)にて検索した。最新のレビュー論文の文献リストのハンドサーチも行った。
検索対象:VKA関連出血患者に対する4F-PCCの使用を検討,INR正常化/死亡/30日以内の血栓塞栓性合併症/機能的転帰またはICU入院期間のいずれかを報告している試験。対照薬の有無は問わなかった。
除外:対象患者が5例未満,3F-PCCまたは活性化4F-PCCを使用,遺伝子組み換え第VIIa因子製剤併用を含む,など。
対象 19研究(2,878例)。このうちコホート研究は18件(前向き13件+後ろ向き5件),RCTは1件。
方法論的クオリティは,良好6件,中度9件,不良4件。
主な結果 ・INR正常化(16研究)
ベースライン時のINRの範囲は2.2から>20であった。4F-PCC投与後1時間以内のINRは範囲1.4~1.9(4研究),FFP投与1時間後では中央値4.5(範囲2.2~12.2)。
INR正常化までの時間について,3研究では4F-PCCをFFPとの比較を行った。前向きコホート研究1件では,INRが<1.6に低下するまでの時間は,4F-PCC群65分,FFP群256分。RCTでは,4F-PCC群のINR正常化までの時間はFFP群にくらべ短縮された(p<0.0001)。別の前向きコホート研究では,投与1時間後のINRは,4F-PCC群では1.5,FFP群では4.5であった。
まとめると,4F-PCCはFFPまたは治療なしにくらべ,INR正常化までの時間を短縮した。

・死亡率(17研究)
追跡期間は,10研究では7~90日,残りの研究は記載なし。
死亡率は,4F-PCC群0~43%(平均17%),FFP群4.8~54%(平均16%),治療なし群23~69%(平均51%)であった。
死亡率に関する4F-PCC群のORは以下の通り。
FFP群に対し:OR 0.64,95%CI 0.27-1.48,p=0.30,不均一性p=0.26。
治療なし群に対し:OR 0.41,95%CI 0.13-1.27,p=0.12,不均一性p=0.04。

・血栓塞栓性合併症(9研究)
血栓塞栓合併症は4F-PCC群0~18%(平均2.5%),FFP群6.4%(1研究のみ)。4F-PCC群とFFP群の間に有意差は認めなかった(p=0.54)。治療なし群についてはデータなし。

・機能的転帰(6研究)
RCTでは,止血について4F-PCC群とFFP群は同等であった。また,2研究では対照群を設けずに機能的転帰を評価し,いずれも4F-PCC群の転帰は不良であった(1研究ではmRS中央値5,もう1研究では64%がmRS 5~6)。また,別の研究ではmRS≧3は4F-PCC群10例(45%),治療なし群20例(71%)。残りの2研究では転帰スコアを用いていないが,治療に対する反応は良好で,機能的転帰は優良であった。
文献: Brekelmans MPA, et al. Benefits and harms of 4-factor prothrombin complex concentrate for reversal of vitamin K antagonist associated bleeding: a systematic review and meta-analysis. J Thromb Thrombolysis 2017; 44: 118-129. pubmed
関連トライアル warfarin中和におけるPCCとFFPの比較, 高齢心房細動患者における出血リスク:抗血小板薬と抗凝固薬の比較
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