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メタ解析
ACS後のDAPTとの関連における出血関連死
Bleeding-Related Deaths in Relation to the Duration of Dual-Antiplatelet Therapy after Coronary Stenting
結論 薬剤溶出性ステント(DES)留置後の出血イベントは,1年以内の死亡と強く関連していた。短期抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は長期DAPTにくらべ,出血関連死リスク低下と関連していた。これは,短期DAPT群における全死亡率の低さが根底にあるためかもしれない。
コメント 急性冠症候群にてステント治療をうけた症例は,抗血小板併用療法をうけることになる。ステント留置部位の形状,局所血流などは個別の症例により異なる。血栓イベントリスクが高く,長期の抗血小板併用療法が必要な症例と,短期の継続にて十分な症例が混在していると想定される。しかし,個別に至適抗血小板併用療法期間を決める論理は存在しない。
長期の抗血小板併用療法では,多少重篤な出血イベントが増えても,致死的なステント血栓症が減少すれば意味があるとの発想もあった。本研究は探索的研究ではあるが,出血イベント発症例では死亡リスクも高いことを再確認する結果となった。ステント血栓症が致死的であることは実感できるが,臨床データベースを集積すれば,出血イベントも致死的とわかったということになる。個別最適化の理論はないが,致死的なステント血栓症予防のために長期の抗血小板併用療法を行うか,致死的な出血イベント予防のために抗血小板併用療法を短期化するか,は困難な問題である(後藤信哉

目的 先行研究より,DES留置後一部の患者では1年のDAPTは必要でなく,6ヵ月,あるいは3ヵ月で十分である可能性が示唆されている。また,いくつかのRCTやメタ解析により,長期DAPTは短期DAPTにくらべ全死亡率上昇と関連する可能性も示唆されているが,この関連の機序については不明である。本研究では,DES留置後の出血,死亡,DAPT期間の関連について,メタ解析を行った。主要評価項目:出血関連死(出血イベント発現後1年以内の死亡を出血関連死の可能性ありと判断)。
方法 MEDLINE,Cochrane database,Embase,主要な循環器/臨床試験ウェブサイト,主要学会抄録より検索。言語,出版日,出版形態の制限は設けなかった。
検索対象:DES留置後,異なる期間のDAPTを比較したRCT。
対象 RCT 12件,34,880例(短期DAPT[≦6ヵ月]群17,364例+長期DAPT[≧1年]17,516例)。
EXCELLENT, ITALIC, OPTIMIZE, SECURITY, RESET, PRODIGYからは個々の患者データが,ARCTIC-Interruption, DAPT, DES-LATE, I LOVE IT 2, ISAR-SAFE, OPTIDUALからは集計データが得られた。
個々の患者データが得られた6件の総患者数は11,473例(短期DAPT群5,730例+長期DAPT群5,743例)。
主な結果 [個々の患者データが得られた6件の解析]
・DAPT期間の比較
短期DAPTは長期DAPTにくらべ,出血発現率低下と関連していた(HR 0.66,95%CI 0.49-0.88,p=0.004)。

・出血と全死亡の関連
出血発現例は非発現例にくらべ死亡率が高く,時間調整多変量解析によると,出血は出血発現後1年以内の全死亡の独立予測因子であったが,1年を超えるとその関連は消失した。
30日以内:HR 11.66,95%CI 6.91-19.71,p<0.0001。
1ヵ月~1年:HR 2.80,95%CI 1.37-5.71,p=0.005。
1年累積:HR 6.93,95%CI 4.53-10.60,p<0.0001。
1年超:HR 0.71,95%CI 0.18-2.87,p=0.63。

・心筋梗塞と全死亡
心筋梗塞も出血と同様に,発症後1年以内では全死亡の独立予測因子であったが,1年を超えるとその関連は消失した。
30日以内:HR 26.45,95%CI 16.15-43.32,p<0.0001。
1ヵ月~1年:HR 3.25,95%CI 1.55-6.81,p=0.002。
1年累積:HR 10.19,95%CI 6.78-15.30,p<0.0001。
1年超:HR 1.53,95%CI 0.63-3.72,p=0.35。

[全12件の解析]
・DAPT期間の比較
短期DAPTは長期DAPTにくらべ,全死亡率低下と関連していた(HR 0.85,95%CI 0.73-1.00,p=0.05)。これは出血関連死発生率が低かったことによるものであった(HR 0.65,95%CI 0.43-0.99,p=0.04)。出血に関連しない死亡は,両群間で同程度であった(HR 0.90,95%CI 0.75-1.07)。

[modified ITT集団(短期DAPT群16,744例+長期DAPT群17,100例=全33,834例)]
短期DAPTは長期DAPTにくらべ,出血関連死発生率は低かったが(HR 0.59,95%CI 0.37-0.95,p=0.02),非出血関連死発生率は両群で同程度であった(HR 0.90,95%CI 0.74-1.10,p=0.30)。

すべての解析について不均一性はみられず,また出版バイアスも認めなかった(p=0.74)。
文献: Palmerini T, et al. Bleeding-Related Deaths in Relation to the Duration of Dual-Antiplatelet Therapy After Coronary Stenting. J Am Coll Cardiol 2017; 69: 2011-2022. pubmed
関連トライアル ARCTIC-Interruption, DAPT, DAPT BMS or DES, DAPT late mortality, DESを留置された糖尿病/非糖尿病患者におけるDAPT期間の比較, DES留置とDAPT実施期間, DES留置患者における臨床症状による至適DAPT期間, , DES留置後のDAPTの至適期間, DES留置後のDAPT延長投与, DES留置後のDAPT期間:短期と長期の比較, DES留置後長期DAPTによる死亡率, EXCELLENT, ITALIC, PRODIGY impact of clinical presentation, PRODIGY in-stent restenosis, RESET, SECURITY, 複雑PCI施行後のDAPTの有効性および安全性
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