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Riksstroke optimal timing of AC
結論 脳内出血が発症した心房細動患者に対する抗凝固療法再開のタイミングは,発症7~8週間後がベネフィットが最大,リスクが最小である可能性が示唆された。
コメント 2005年から2012年にかけてのスウェーデンの全国登録研究で,脳出血発症後の心房細動患者の抗凝固療法の効果・リスクを分析した貴重な研究である。3年にわたる長期観察で,抗凝固療法が大出血リスクを上げずに虚血性脳卒中のリスクを低下させている点が注目される。
抗凝固療法再開のタイミングは7~8週が最適との示唆が得られているが,大部分がワルファリンを投与した成績であることから,NOAC時代となり新たな検討が行われるであろう。(岡田靖

目的 脳内出血が発症した心房細動患者において,出血発症後の抗凝固療法再開時期についてのエビデンスは乏しい。warfarin関連脳内出血患者234例の検討では,早期の出血再発リスクを避けるために10~30週後に遅らせるべきと結論されている一方,492例を対象としたシステマティックレビューでは,高リスク患者では3日後の再開を勧めている。本研究はスウェーデンの脳卒中登録研究(Riksstroke)のデータを用い,脳内出血が発症した心房細動患者において,抗血栓療法再開のタイミングと,重篤な血栓症および出血イベントの競合リスクの関連について,検討を行った。主要評価項目:虚血イベント(致死的/非致死的虚血性脳卒中,血栓イベント[心筋梗塞または全身性動脈血栓塞栓症]に直接/間接に起因する全死亡),出血イベント(致死的/非致死的脳内出血再発,直接/間接に死因となる全出血イベント)。
デザイン 登録研究。
セッティング 多施設,スウェーデン。
期間 試験期間は2005年7月1日~2012年12月31日。追跡期間中央値1.7年。
対象患者 2,619例。当該期間にRiksstrokeに登録された初発脳内出血患者のうち,心房細動の診断も有し,生存退院した症例。
【除外基準】外傷性脳内出血,硬膜下血腫,くも膜下出血,初発脳内出血発症後28日以内にイベント,退院時に抗凝固薬+抗血小板薬併用など。
【患者背景】平均年齢は78.0歳。女性40.7%。初発脳内出血発症前の要介護状態11.5%。病歴:糖尿病23.1%,虚血性脳卒中既往24.4%,虚血性心疾患27.2%,高血圧83.2%,心不全25.7%。脳内出血発症時の治療:抗凝固療法47.3%,抗血小板療法44.9%,抗凝固+抗血小板療法併用7.8%,スタチン27.6%。平均CHA2DS2-VAScスコア4.13。
治療法 抗凝固療法を再開した232例のうち59.5%,抗血小板療法をうけていた1,136例のうち58.9%は脳内出血発症から3ヵ月以内に処方。
追跡完了率
結果

●評価項目
追跡期間中の重篤な血栓塞栓イベントは379例(うち虚血性脳卒中79.7%),重篤な出血イベントは115例(うち脳内出血再発83.5%)発症した。28日の致死率は虚血性脳卒中(17.5%)のほうが脳内出血再発(37.5%)より低かった(p<0.001)。3年後の累積発症率は,血栓塞栓イベント14.5%,出血イベント4.4%。
高リスク患者において,抗凝固療法は血管死/非致死的脳卒中リスク低下と関連していた。大出血リスクの有意な上昇はみられなかった。抗凝固療法のベネフィットは,脳内出血の7~8週後に再開した場合に最大のようであった。
高リスク女性における3年以内の血管死/脳卒中再発の総合リスクは,脳内出血の8週後に抗凝固療法を再開した場合は17.0%であったが,抗血栓療法を行わなかった場合は28.6%であった(差の95%CI 1.4~21.8%)。
他のカテゴリーでは以下の通り。
高リスク男性:14.3% vs. 23.6%(差の95%CI 0.4~18.2%)。
低リスク女性:8.2% vs. 12.6%(差の95%CI -2.1~10.8%)。
低リスク男性:7.3% vs. 10.7%(差の95%CI -2.7~9.4%)。

●有害事象

文献: Pennlert J, et al. Optimal Timing of Anticoagulant Treatment After Intracerebral Hemorrhage in Patients With Atrial Fibrillation. Stroke 2017; 48: 314-20. pubmed
関連トライアル Chao TF et al, Lamberts M et al, Larsen TB et al, Nielsen PB et al, RAF, Swedish Atrial Fibrillation cohort study, Swedish Atrial Fibrillation Cohort Study: net benefit
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