抗血栓トライアルデータベース
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PROSPER antithrombotic treatment and outcomes
結論 虚血性脳卒中が発症した心房細動患者において,脳卒中前に適切でない抗凝固療法をうけていた患者の割合は高かった。治療域の抗凝固療法は中~重度の脳卒中発症および院内死亡リスクの低減と関連していた。
コメント 米国の大規模前向き登録研究(GTWG-Stroke)データを活用した,注目すべき研究である。わが国のregistry研究と同様,心房細動に対する抗凝固療法未実施は70%,ガイドラインに準じた治療ができない患者は84%に達している。治療域以下のワルファリン療法では脳卒中重症度が高く,抗血小板療法を実施されていた患者は約4割を占めている。CHA2DS2-VAScスコア評価によって,より多くの患者に治療域の抗凝固療法を普及させるべきであろう。(岡田靖

目的 抗血栓療法は心房細動患者における脳卒中の発症を抑制するが,実地臨床ではしばしばアンダーユーズがみられる。そこで,米国心臓協会/米国脳卒中協会によるGWTG-Strokeのデータを用い,既知の心房細動既往を有する虚血性脳卒中患者において,脳卒中発症前にガイドラインの推奨通りの抗血栓療法をうけていなかった割合を調査し,発症前の抗血栓療法と脳卒中重症度ならびに院内転帰との関連を検討した。主要評価項目:入院時の脳卒中重症度,院内死亡率。
デザイン 前向き登録研究の後ろ向き解析。
セッティング 多施設(1,622施設),米国。
期間 登録期間は2012年10月~2015年3月。
対象患者 94,474例。既知の心房細動/粗動を有していた,虚血性脳卒中のため当該期間にGWTG-Stroke参加施設へ入院した患者。
【除外基準】他の施設へ搬送,warfarin投与例のうち入院時INRデータのない症例,未分画heparin,低分子量heparin,argatroban,desirudin,fondaparinux,lepirudin,aspirin-dipyridamole,prasugrel,ticagrelor,ticlopidine投与例。
【患者背景】年齢中央値は非抗血栓療法群82歳,抗血小板療法群83歳,治療域未満warfarin群81歳,治療域warfarin群81歳,非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)群79歳。それぞれの女性59.0%,58.2%,56.6%,49.6%,51.9%。脳卒中/TIA既往28.6%,35.9%,41.3%,47.1%,44.9%。tPA静注13.8%,15.1%,11.7%,0.4%,3.3%。National Institute of Health stroke scale(NIHSS)中央値7,6,6,4,4。
治療法 脳卒中発症前の抗血栓療法は入院前の7日間に投与されていたものと定義し,以下の5群にわけて解析した。
非抗血栓療法群:28,583例。抗血栓療法を投与されていなかった症例。
抗血小板療法群:37,674例。aspirin,clopidogrel,aspirin+clopidogrel併用のいずれかを投与されていた症例。
治療域未満warfarin群:12,751例。warfarinを投与されていたが,入院時INRが治療域未満(>2)。
治療域warfarin群:7,176例。warfarinを投与されており,入院時INRが治療域(≧2)。
NOAC群:8,290例。dabigatran,rivaroxaban,apixabanのいずれかを投与されていた症例。
追跡完了率 データ入手率は脳卒中重症度81.7%,院内死亡率98.0%,modified Rankin Score(mRS) 52.0%。
結果

●評価項目
脳卒中発症前に治療域のwarfarinを投与されていたのは7,176例(7.6%),NOAC投与は8,290例(8.8%)で,79,008 例(83.6%)には治療域の抗凝固薬は投与されていなかった。高リスク患者(脳卒中前のCHA2DS2-VAScスコア≧2)91, 155例では,治療域の抗凝固薬が投与されていなかったのは76, 071例(83.5%)。
未補正の中~重度脳卒中発症率は,治療域warfarin群(15.8%,95%CI 14.8-16.7%)およびNOAC群(17.5%,16.6-18.4%)で,非抗血栓療法群(27.1%,26.6-27.7%),抗血小板療法群(24.8%,24.3-25.3%),治療域未満warfarin群(25.8%,25.0-26.6%)より低かった(p<0.001)。
補正後,非抗血栓療法にくらべ,治療域warfarin(OR 0.56,0.51-0.60),NOAC(OR 0.65,0.61-0.71),抗血小板療法(OR 0.88,0.84-0.92)は中~重度の脳卒中発症リスク低減と関連していた。
未補正の院内死亡率は治療域warfarin群(6.4%,5.8-7.0%),NOAC群(6.3%,5.7-6.8%)で,非抗血栓療法群(9.3%,8.9-9.6%),抗血小板療法群(8.1%,7.8-8.3%),治療域未満warfarin群(8.8%,8.3-9.3%)にくらべ低かった(p<0.001)。
補正後,非抗血栓療法にくらべ,治療域warfarin(OR 0.75,0.67-0.85),NOAC(OR 0.79,0.72-0.88),抗血小板療法(OR 0.83,0.78-0.88)は院内死亡リスク低減と関連していた。
退院時の機能的転帰優良(mRS 0~1)は,非抗血栓療法群16.0%にくらべ,抗血小板療法群(18.0%,OR 1.29,1.20-1.38),治療域未満warfarin群(18.0%,OR 1.24,1.13-1.35),治療域warfarin群(21.5%,OR 1.43,1.28-1.59),NOAC群(23.0%,OR 1.37,1.24-1.51)のほうが多かった。

●有害事象

文献: Xian Y, et al. Association of Preceding Antithrombotic Treatment With Acute Ischemic Stroke Severity and In-Hospital Outcomes Among Patients With Atrial Fibrillation. JAMA 2017; 317: 1057-1067. pubmed
関連トライアル BAT retrospective study, Lamberts M et al, Lamberts M et al, Ottosen TP et al
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