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メタ解析
P2Y12阻害薬の性差
Potent P2Y12 Inhibitors in Men Versus Women
結論 RCTにおいて,強力なP2Y12阻害薬の有効性および安全性は,男女で同程度であった。本結果より,強力なP2Y12阻害薬を投与する患者の選択にあたっては,性別により影響されるべきではない。
コメント 心房細動では女性が男性よりも血栓性リスクが高い,あるいはアスピリンの一次予防は,女性では脳卒中発症に対して有効だが,男性では心筋梗塞に対して有効であるなど,血栓性疾患の発症や抗血栓薬の有効性について性差があることを示唆する成績が時々報告されている。しかし,これら男女差の成績は,報告によって必ずしも一貫していない。年齢,体重や心血管系リスク因子には,しばしば明確な性差があり,そのことが性差の交絡因子になっている可能性は,いつも否定できない。クロピドグレル反応性が女性で低下しているというデータがあり,本研究では最近の強力なP2Y12阻害薬の臨床試験の性差についてメタ解析した。結果はMACEおよび出血についても性差を示唆するものはなかった。(島田和幸

目的 現在のガイドラインでは,急性冠症候群後の患者に対しprasugrel,ticagrelorなどの強力なP2Y12阻害薬の使用が支持されている。しかし,RCTの対象患者には女性が少ないため,女性におけるこれらの薬剤の有効性および安全性は十分に確立されていない。そこで,安定/不安定冠動脈疾患(CAD)患者において,強力なP2Y12阻害薬の相対的な有効性および安全性の性差を検討した。有効性主要評価項目:主要有害心事象(MACE)。安全性主要評価項目: TIMI大出血
方法 2006年1月~2016年6月に出版された研究をMEDLINE,PubMed,ClinicalTrials.gov,Cochrane databasesより検索。
検索対象:CAD患者において,P2Y12阻害薬(prasugrel,ticagrelor,cangrelorを含む)の心血管に対する有効性および安全性を検討した第III相,第IV相試験。実薬/プラセボ対照,治療期間は考慮しなかった。
除外:両群でより強力なP2Y12阻害薬が投与されている,臨床上の有効性/安全性評価項目の報告がない,評価項目発症数が100例以下。
対象 7試験。TRITON-TIMI 38(prasugrel vs. clopidogrel),PLATO(ticagrelor vs. clopidogrel),CHAMPION PCICHAMPION PLATFORM(cangrelor vs. clopidogrel),TRILOGY ACS(prasugrel vs. clopidogrel),CHAMPION PHOENIX(cangrelor vs. clopidogrel),PEGASUS-TIMI 54(ticagrelor vs. プラセボ)。
87,840例(男性63,346例,女性24,494例)。
主な結果 ・MACE
強力なP2Y12阻害薬は,clopidogrelまたはプラセボと比較して,男女ともにMACEを抑制した(交互作用p=0.93)。
女性:強力なP2Y12阻害薬群8.3% vs. clopidogrel/プラセボ群9.8%,HR 0.86,95%CI 0.78-0.94,p=0.002, I2=22.6%。
男性:7.3% vs. 8.6%,HR 0.85,95%CI 0.80-0.90,p<0.001,I2=0%。

以下の項目について,交互作用は認められなかった。
・心筋梗塞(交互作用p=0.65)
女性:5.2% vs. 6.2%,HR 0.87,95%CI 0.78-0.96,p=0.01,I2=0%。
男性:4.7% vs. 5.9%,HR 0.84,95%CI 0.76-0.91,p<0.001,I2=37.1%。

・心血管死(交互作用p=0.86)
女性:3.5% vs. 4.1%,HR 0.87,95%CI 0.76-1.01,p=0.06,I2=0%。
男性:2.7% vs. 3.2%,HR 0.85,95%CI 0.77-0.95,p=0.002,I2=0%。

・ステント血栓症(definite/probable,交互作用p=0.94)
女性:1.4% vs. 2.3%,HR 0.59,95%CI 0.28-1.22,p=0.16,I2=69.1%。
男性:1.6% vs. 2.6%,HR 0.61,95%CI 0.42-0.89,p=0.009,I2=66.3%。

・冠動脈バイパス術(CABG)に関連しないTIMI出血基準大出血(交互作用p=0.62)
女性:1.6% vs. 1.3%,HR 1.28,95%CI 0.87-1.88,p=0.21,I2=54.7%。
男性:1.4% vs. 1.0%,HR 1.52,95%CI 1.12-2.07,p<0.01,I2=67.0%。

・CABGに関連しないTIMI出血基準大/小出血(交互作用p=0.76)
女性:3.3% vs. 2.5%,HR 1.54,95%CI 1.16-2.05,p=0.003,I2=61.5%。
男性:2.3% vs. 1.6%,HR 1.45,95%CI 1.09-1.93,p=0.01,I2=77.6%。

・全死亡(交互作用p=0.99)
女性:3.9% vs. 4.3%,HR 0.89,95%CI 0.78-1.01,p=0.07,I2=0%。
男性:3.2% vs. 3.4%,HR 0.89,95%CI 0.81-0.99,p=0.02,I2=12.0%。
文献: Lau ES, et al. Potent P2Y12 Inhibitors in Men Versus Women: A Collaborative Meta-Analysis of Randomized Trials. J Am Coll Cardiol 2017; 69: 1549-59. pubmed
関連トライアル ACCOAST predictors of bleeding, ACS後の患者における新規経口抗凝固薬の追加効果, CHAMPION PHOENIX sex differences, DES留置後のDAPT期間:短期と長期の比較, GRAPE Registry, PEGASUS-TIMI 54 diabetic patients, PEGASUS-TIMI 54 time from P2Y12 inhibitor withdrawal, PLATO renal function, PLATO sex difference, TRILOGY ACS elderly patients, TRITON-TIMI 38 diabetes, TRITON-TIMI 38 discharge aspirin dose, TRITON-TIMI 38 PCI, 心筋梗塞患者におけるDAPT延長による心血管イベント二次予防
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