抗血栓トライアルデータベース
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GWTG-Stroke NOAC before stroke
結論 非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)服用中に発症した虚血性脳卒中に対するrt-PA投与経験は限られているが,本予備的解析によると,選択されたNOAC服用例に対するrt-PAは,投与を禁ずるようなリスクはなく,十分な忍容性があるようであった。NOAC服用中に発症した虚血性脳卒中に対するrt-PA投与の安全性および有効性については,更なる研究が必要である。
コメント 全米のビッグデータ(AHA/ASAのGWTG-Stroke登録患者)を用いた,発症前NOAC服用者の脳梗塞血栓溶解療法における出血イベントを分析した価値ある研究である。症候性頭蓋内出血の頻度が4.9%と高い点や,プロペンシティスコアを用いた検討でもワルファリンと有意差がない点は,脳出血が少ないとされるNOACの分析としては,むしろ意外な結果である。後ろ向き解析で選択バイアスもあり,最終服薬からrt-PA投与までの時間分析がない点については,服薬集団を用いたビッグデータで検討すべき今後の課題であろう。(岡田靖

目的 rt-PA静注は虚血性脳卒中患者の転帰改善に有効であるが,NOACを服用していた患者に関するデータはまだ少ない。本研究はGWTG-Strokeのデータを用い,NOACを服用していた患者では,抗凝固療法をうけていなかった患者にくらべ,rt-PA静注後の症候性頭蓋内出血およびrt-PA関連合併症リスクは上昇しないという仮説を検討した。主要評価項目:36時間以内の症候性頭蓋内出血,生命に関わる/重篤な出血,36時間以内のrt-PA関連合併症。
デザイン 前向き登録研究の後ろ向き解析。
セッティング 多施設(1,289施設),米国。
期間 登録期間は2012年10月1日~2015年3月31日。
対象患者 42,887例。当該期間にrt-PA静注をうけた虚血性脳卒中患者。
【除外基準】血管内治療施行,脳卒中発症前の抗血栓療法に関するデータがない,発症から4.5時間以上経過後または治験/実験的にrt-PA静注を施行,本研究参加外施設から,または参加外施設への搬送,脳卒中発症前にheparinまたはNOAC/warfarin以外の抗凝固療法をうけていた症例,warfarin服用例のうちPT-INR≧1.7の症例。
【患者背景】年齢中央値はNOAC群74歳,warfarin群79歳,非抗凝固療法群71歳。それぞれの女性51.4%,55.9%,50.1%。病歴:心房細動/粗動78.1%,77.3%,18.1%,人工心臓弁1.6%,6.0%,0.9%,脳卒中/一過性脳虚血性発作既往30.7%,36.0%,25.6%,冠動脈疾患/心筋梗塞31.5%,33.7%,23.6%,高血圧78.9%,81.1%,73.2%。入院前の抗血小板療法30.3%,27.1%,47.8%。National Institute of Health stroke scale(NIHSS)中央値12,13,9。発症-来院時間中央値60分,56分,60分。来院-治療時間65分,69分,61分。PT-INR中央値1.1,1.2,1.0。(ここにあげた項目はすべてp<0.001)
治療法 以下の3群に分類し,解析した。
NOAC群:251例。来院前の7日間にdabigatran(87例),rivaroxaban(129例),apixaban (35例)のいずれかを処方されていた症例。
warfarin群:1,500例。来院前の7日間にwarfarinを処方されていた症例(PT-INR<1.7)。
非抗凝固療法群:41,136例。rt-PA静注施行時に抗凝固療法をうけていなかった症例。
追跡完了率
結果

●評価項目
症候性頭蓋内出血の未補正発現率はNOAC群4.8%,warfarin群4.9%,非抗凝固療法群3.9%で,同程度であった(p=0.11)。補正後も,両群とも非抗凝固療法群に対し有意差を認めなかった(NOAC群:OR 0.92,95%CI 0.51-1.65,warfarin群:OR 0.85,0.66-1.10)。
生命に関わる/重篤な出血の未補正発現率はNOAC群0.4%,warfarin群0.9%,非抗凝固療法群0.8%。補正後,両群とも非抗凝固療法群に対し有意差はみられなかった(NOAC群:OR 0.38,0.05-2.71,warfarin群:OR 0.78,0.45-1.37)。
全rt-PA関連合併症の未補正発症率はNOAC群6.8%,warfarin群10.1%,非抗凝固療法群7.6%。補正後,両群とも非抗凝固療法群に対し有意差はみられなかった(NOAC群:OR 0.64,0.39-1.05,warfarin群:OR 0.90,0.75-1.08)。
院内死亡は,未補正ではNOAC群9.2%,warfarin群11.3%,非抗凝固療法群6.3%と有意差を認めたが(p<0,001),補正後は有意差はみられなかった(NOAC群:OR 0.93,0.59-1.48,warfarin群:OR 1.05,0.87-1.26)。
退院時の転帰良好(mRS 0~1)についても,有意差を認めなかった(NOAC群24.0%,OR 1.23,0.81-1.85,warfarin群17.7%,OR 1.09,0.89-1.33,非抗凝固療法群29.3%)。
プロペンシティスコアマッチング後も,同様の結果であった。

●有害事象

文献: Xian Y, et al. Use of Intravenous Recombinant Tissue Plasminogen Activator in Patients With Acute Ischemic Stroke Who Take Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants Before Stroke. Circulation 2017; 135: 1024-35. pubmed
関連トライアル Bhatia R et al, da Vinci, ECASS, GWTG-Stroke golden hour, GWTG-Stroke nonagenarian, GWTG-Stroke prior antithrombotic use, GWTG-Stroke Registry risk of sICH, GWTG-Stroke time to treatment, Hylek EM et al, IMS III, IST-3, Larsen TB et al, Madrid Stroke Network, Power A et al, Registry of the Canadian Stroke Network, SAMURAI rt-PA Registry early neurological deterioration, Seet RC et al, SITS-ISTR sex differences, SYNTHESIS Expansion
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