抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
メタ解析
DES留置患者における臨床症状による至適DAPT期間
Three, six, or twelve months of dual antiplatelet therapy after DES implantation in patients with or without acute coronary syndromes: an individual patient data pairwise and network meta-analysis of six randomized trials and 11 473 patients
結論 薬剤溶出性ステント(DES)留置後の至適抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の期間は,臨床症状により異なっていた。本メタ解析では,登録された急性冠症候群(ACS)患者の多くが比較的低リスクであったにもかかわらず,3ヵ月のDAPTは虚血リスク上昇と関連していた。一方,安定冠動脈疾患(CAD)患者では,3ヵ月のDAPTは安全のようであった。DAPT期間の延長は,臨床症状にかかわらず出血リスクを上昇させた。
コメント  抗血小板併用療法を継続すれば,重篤な出血イベントリスクは継続期間に応じて増加する。日本と異なり,欧米には25 mgのクロピドグレル錠がない。また,症例の雰囲気に応じて個別最適化医療を行う文化もない。一神教の世界では「正解は1つ」という世界でもある。われわれは八百万の神々の国にいる。われわれの世界では「正解は多数」ある。抗血小板併用療法の継続期間について,「正解は1つ」の世界では無限のランダム化比較試験が必要となる。1つの正解は3ヵ月かも,3.5ヵ月かも,6ヵ月かも,7ヵ月かも12ヵ月かもしれない。正解は個別の患者に応じて無限に存在する可能性もある。
 本論文は過去の論文を集積し,個別症例ごとに至適持続期間は異なるかもしれないとの仮説から出発している。一神教の世界からの研究であるが,急性冠症候群とそれ以外では正解が異なるかも知れないと考えている。急性冠症候群では6ヵ月以上続けた方がよいかもしれないと結論している。ランダム化比較試験,アウトカムリサーチは人類の均質性を前提としている。顔を近づければ,個人ごとの個体差は大きい。病気となれば,すべての患者は一人ずつ異なる特徴を持つ。人類は均一として出発したが,病態の相違により至適治療は異なる。次世代の個別化医療へと舵を切る必要がある。(後藤信哉

目的 ACS患者において,DES留置後の必須DAPT期間については議論が続いている。異なる期間のネットベネフィットの程度は,臨床症状によって異なる可能性がある。ACS患者ではDAPT期間延長が有益であることが示唆されているが,至適DAPT期間についてはデータが乏しい。本研究では,DES留置後の患者において,DAPTを1年未満に短縮することの安全性および有効性について検討した。主要評価項目:1年後のMIまたはステント血栓症(definite/probable)
方法 2015年8月,MEDLINE,Cochrane database,EMBASE,tctmd.com, clinicaltrials.gov,clinicaltrialresults.org,cardiosource.com,主要な国際心臓学会の抄録または発表より検索。
対象 対象:DESを留置したCADまたはACS患者において,短期DAPT(3~6ヵ月)または長期DAPT(1年以上)を比較している試験。
除外:DAPT期間1年と1年超を比較している,DESを留置されていない患者を登録。
主な結果 ・主要評価項目
≦6ヵ月のDAPTは1年のそれにくらべ,主要評価項目発症率は全体では同程度であった。ACS患者では,≦6ヵ月のほうが1年にくらべリスク上昇傾向がみられたが,安定CAD患者については差異を認めなかった(交互作用p=0.09)。
全例:短期群1.98%,長期群1.74%,HR 1.15,95%CI 0.88-1.51,p=0.31。
ACS患者:2.43%,1.67%,HR 1.48,95%CI 0.98-2.22,p=0.059。
安定CAD患者:1.67%,1.79%,HR 0.93,95%CI 0.65-1.35,p=0.72。

・大出血
6ヵ月のDAPTは1年のそれにくらべ,大出血発現率は同等または低かった(交互作用p=0.84)。
全例:短期群0.39%,長期群0.78%,HR 0.50,95%CI 0.30-0.83,p=0.008。
ACS患者:0.42%,0.82%,HR 1.48,95%CI 0.27-0.99。
安定CAD患者:0.34%,0.73%,HR 0.93,95%CI 0.20-1.08。

[ランドマーク解析(11,070例)]
主要評価項目について,6ヵ月のDAPTは1年のそれにくらべ,ACS患者では長期DAPTのほうがすぐれている傾向がみられたものの,有意差は認めなかった(交互作用p=0.07)。
全例:HR 1.02,95%CI 0.67-1.56,p=0.77。
ACS患者: HR 0.63,95%CI 0.32-1.24。
安定CAD患者:HR 1.44,95%CI 0.81-2.55。
MIおよび標的血管血行再建術については,ACS患者では長期DAPTが,安定CAD患者では短期DAPTがすぐれるという交互作用が認められたが,大出血に関しては,臨床症状にかかわらず,短期DAPTは大出血リスクが低かった(交互作用p=0.57)。

[ネットワークメタ解析]
ACS患者における主要評価項目について,3ヵ月のDAPTは1年のDAPTにくらべ発症率が高かったが(HR 2.08,95%CI 1.10-3.93),6ヵ月のDAPTでは有意差はなかった(HR 1.28,0.73-2.27)。安定CAD患者では有意差は認めなかった(3ヵ月:HR 0.85,0.52-1.39,6ヵ月:HR 1.18,0.66-2.11)。
全死亡は安定CAD患者,ACS患者の双方において短期,長期の間に有意差を認めなかった。
文献: Palmerini T, et al. Three, six, or twelve months of dual antiplatelet therapy after DES implantation in patients with or without acute coronary syndromes: an individual patient data pairwise and network meta-analysis of six randomized trials and 11 473 patients. Eur Heart J 2017; : . pubmed
関連トライアル DESを留置された糖尿病/非糖尿病患者におけるDAPT期間の比較, DES留置とDAPT実施期間, DES留置後のDAPT期間:短期と長期の比較, DES留置後長期DAPTによる死亡率, ITALIC, PRODIGY impact of clinical presentation, SECURITY
関連記事