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PRAGUE-18
結論 冠動脈インターベンション(PCI)をうけた急性心筋梗塞(AMI)患者における虚血イベントならびに出血イベント予防について,prasugrelとticagrelorの直接比較を行ったところ,どちらかが他方より有効または安全という仮説は支持されなかった。信頼区間が広いものの,主要転帰は両群で同程度であった。
コメント 急性冠症候群を対象としてクロピドグレルとチカグレロールの有効性,安全性を比較した試験,クロピドグレルとプラスグレルの有効性,安全性を比較した試験は薬剤開発第3相試験として施行された。チカグレロールとプラスグレルの有効性,安全性を直接比較する試験を施行するインセンティブは開発企業にはない。本試験は,医師主導のランダム化比較試験である。チカグレロールとプラスグレルの有効性,安全性の比較を目指した。試験の途中において,両薬剤の有効性,安全性に大きな差異がないことが理解されたので中止された。認可承認を目指す試験ではないので,臨床医として大方の印象が確認できればよいのだ。
Circulationではpodcast: Circulation on the Runにて著者を迎えて研究についての議論をしている。本論文の著者の苦労などを知りたければ是非,Circulation on the Runを聞いてほしい。
Circulation on the Run November 22, 2016 issue)(後藤信哉

目的 ガイドラインではPCIをうけたAMI患者について,clopidogrelよりticagrelorまたはprasugrelの投与を推奨している。ガイドラインにおける両剤の推奨はクラス,レベルともに同一であるが,日常臨床では個々の患者に応じてどちらかが選択されている傾向がある。本試験では,primary PCI(pPCI)をうけるAMI患者において,prasugrelの有効性および安全性をticagrelorと直接比較した。有効性主要評価項目:全死亡,再梗塞,脳卒中,輸血や入院期間の延長を必要とする重篤な出血,緊急標的血管血行再建術。
デザイン PROBE,第IV相臨床試験。NCT02808767。
セッティング 多施設(14施設),チェコ。
期間 登録期間は2013年4月~2016年5月。予定追跡期間1年(本解析は30日間の結果)。
対象患者 1,230例。緊急(入院後120分以内)冠動脈造影(PCIの必要性は問わない)の適応を有するAMI患者。
【除外基準】脳卒中既往,重篤な出血から6ヵ月以内,長期経口抗凝固療法の適応,無作為割付前300mg以上のclopidogrel,または他の抗血小板薬の投与(aspirinおよび低用量clopidogrelは許容)。>75歳かつ体重<60kg。中程度また重度の肝機能障害,強力なCYP3A4阻害薬併用など。
【患者背景】平均年齢はprasugrel群61.8歳,ticagrelor群61.8歳。それぞれの男性77.1%,73.7%。入院時の症状:STEMI 89.6%,89.4%,左脚ブロック5.2%,4.9%,NSTEMI 5.2%,5.7%。高脂血症33.4%,35.4%。高血圧51.4%,51.2%。現喫煙64.0%,65.8%。BMI≧30kg/m2 33.2%,28.5%。糖尿病20.0%,20.8%。pPCI施行99.2%,99.2%。薬剤溶出ステント65.9%,64.4%。処置後のTIMI血流グレード 3:94.3%,94.8%。
治療法 以下の2群に無作為に割付け,試験薬を12ヵ月投与。
prasugrel群:634例。負荷用量60mg,維持用量10mg 1日1回投与(>75歳以上または体重<60kg以下の患者は5mg 1日1回)。
ticagrelor群:596例。負荷用量180mg,維持用量90mg 1日2回投与。
試験薬投与は試験参加同意取得直後からの開始を推奨したが,緊急外科的血行再建術の必要性を除外できない,または血行動態が不安定の場合は,投与開始を冠動脈造影後のPCI施行直前または直後に延期した。pPCI非施行例ではprasugrelを中止し,clopidogrelに置き換えた。手技施行や併用薬については術者の判断とした。aspirin投与(推奨用量 100mg/日)を必須とした。
退院前に退院後の長期治療を継続する費用と試験薬のclopidogrelに対するベネフィットについて医師と患者で話し合い,費用を負担できない場合は保険で全額償還されるclopidogrelへの切り替えを許可した。
追跡完了率
結果

●評価項目
本研究は両群の差異が認められなかったため,予定よりも早期に終了した。
無作為割付から7日以内の主要評価項目はprasugrel群4.0%,ticagrelor群4.1%(OR 0.98,95%CI 0.55-1.73,p=0.939)。
主要評価項目の各項目についても,すべて同程度であった。
全死亡:1.3% vs. 2.0%,OR 0.62,0.25-1.53,p=0.302。
再梗塞:1.0% vs. 0.7%,OR 1.41,0.40-5.03,p=0.594。
緊急標的血管血行再建術:1.4% vs. 1.2%,OR 1.21,0.45-3.26,p=0.714。
脳卒中:0.2% vs. 0.2%,OR 0.94,0.06-15.0,p=0.963。
輸血や入院期間の延長を必要とする重篤な出血:1.3% vs. 1.2%,OR 1.07 95%CI 0.39-2.96,p=0.900。
無作為割付から30日以内の副次評価項目(心血管死,非致死的MI,脳卒中)についても,両群間に差異はなかった(2.7% vs. 2.5%,OR 1.06,0.53-2.15,p=0.864)。
30日以内の出血は両群間で同程度であった。
TIMI出血基準大出血:0.6% vs 0.7%,OR 0.86,0.17-4.27,p=0.851。
BARC出血基準タイプ3:0.8% vs. 0.5%,OR 1.60,0.29-8.81,p=0.586。

●有害事象

文献: Motovska Z, et al. Prasugrel versus Ticagrelor in Patients with Acute Myocardial Infarction Treated with Primary Percutaneous Coronary Intervention: Multicenter Randomized PRAGUE-18 Study. Circulation 2016; 134: 1603-12. pubmed
関連トライアル ACCOAST-PCI, GRAPE Registry, PLATO total events, TRILOGY ACS elderly patients, TRITON-TIMI 38, TRITON-TIMI 38 discharge aspirin dose
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