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GWTG-Stroke golden hour
結論 発症から60分以内の血栓溶解療法は,虚血性脳卒中患者に最良の転帰をもたらした。治療による自宅への退院についてのベネフィットは,発症直後から急速に低下した。本結果より,虚血性脳卒中に対し血栓溶解療法をより早く実施するため,脳卒中治療のシステムを改善する必要が示された。
コメント 6万例を超える米国のnational data GWTG-Strokeから,発症-tPA治療60分以内が4.5時間以内の治療枠の中で最良の転帰を示していることを明らかにした,価値ある論文である。発症-治療時間<60分をめざし,mobile stroke unitsの可能性,時間外勤務のスタッフ配置,覚知-救急搬送時間の短縮など,改善の余地が残されている。わが国でも法整備と脳卒中治療ネットワークシステムを立ち上げることが焦眉の急である。(岡田靖

目的 早期のrt-PA投与は虚血性脳卒中の転帰を改善する。しかし,(1)脳卒中発症後超早期(60分以内)に治療を行うことにより更なるベネフィットが得られるか,(2)4.5時間を通しての時間経過とrt-PAによるベネフィットの関連については明らかになっていない。本研究では,米国GWTG-Strokeのデータを用い,発症から4.5時間以内にrt-PAを投与された虚血性脳卒中患者を解析した。有効性主要評価項目:院内死亡率,退院後の状況(自宅,急性リハビリ施設,高度看護施設,死亡),退院時の歩行の状態(介助不要,介助がある時のみ歩行可能,歩行不能,死亡)。安全性主要評価項目:36時間以内の症候性頭蓋内出血,重篤な全身性出血。
デザイン 登録研究。
セッティング 多施設(1,456施設),米国。
期間 試験期間は2009年1月1日~2013年9月30日。
対象患者 65,384例。最後に健常な姿が確認されてから4.5時間以内にrt-PA療法をうけた虚血性脳卒中患者。
【除外基準】National Institute of Health stroke scale(NIHSS)データ欠損例。
【患者背景】平均年齢は60分以内群68.4歳,61~90分群69.8歳,91~180分群70.9歳,181~270分群67.6歳。それぞれの女性46.4%,47.4%,51.2%,49.4%。白人69.4%,71.0%,72.1%,69.6%。最後に健常な姿が確認されてから来院までの経過時間22分,32分,57分,125分。来院-治療時間30分,48分,74分,88分。NIHSS中央値12,12,10,8。病歴:心房細動/粗動19.2%,21.6%,22.6%,17.6%。冠動脈疾患/心筋梗塞22.2%,24.0%,25.9%,23.4%。脳卒中/TIA既往22.9%,21.1%,25.6%,24.6%。(ここにあげた項目は人種以外すべてp<0.001)
治療法 rt-PA静注。発症-治療時間は以下の通り。60分以内878例(1.3%),61~90分6,490例(9.9%),91~180分46,457例(71.1%),181~270分11,559例(17.1%)。
追跡完了率
結果

●評価項目
発症-治療時間中央値は141分(IQR 110~173)で,このうち878例(1.3%)は60分以内に治療された。
60分以内群は61~270分治療群にくらべ,転帰が良好であった。出血性合併症や院内死亡率の増加は認めなかった。
自宅への退院の可能性:補正後OR 1.25,95%CI 1.07-1.45,p=0.005。
退院後の自立歩行:補正後OR 1.22,1.03-1.45,p=0.02。
退院時の後遺障害なし(modified Rankin Score:mRS 0~1):補正後OR 1.72,1.21-2.46,p=0.003。
症候性頭蓋内出血:補正後OR 0.89,0.61-1.29,p=0.53。
重篤な全身性出血:補正後OR 0.77,0.34-1.73,p=0.53。
院内死亡率:補正後OR 1.12,0.84-1.48,p=0.44。
自宅への退院と発症-治療時間について,非線形の関連が認められた(p for nonlinearity=0.006)。自宅への退院の可能性は20分後から170分後まで右肩下がりとなり(15分ごとに10.5/1,000例減少),171分後から270分後までは傾きがゆるやかになった(15分ごとに2.6/1,000例減少)。自立歩行(15分ごとに9.6/1,000例減少)および院内死亡率(15分ごとに1.4/1,000例増加)に関しては線形の関連が認められた。

●有害事象

文献: Kim JT, et al. Treatment With Tissue Plasminogen Activator in the Golden Hour and the Shape of the 4.5-Hour Time-Benefit Curve in the National United States Get With The Guidelines-Stroke Population. Circulation 2017; 135: 128-39. pubmed
関連トライアル Gumbinger et al, GWTG-Stroke “golden hour” patients, GWTG-Stroke time to treatment, ICARO, Kruetzelmann A et al, Muchada M et al, Muchada M et al, NINDS rt-PA Stroke Study 1995, SAINT postthrombolysis ICH, SITS-ISTR within-day and weekly variations, Strbian D et al Ultra-Early Thrombolysis, TPA Bridging Study, 脳卒中発症後の機能的転帰の分布に対するalteplaseの影響
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