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複雑PCI施行後のDAPTの有効性および安全性
Efficacy and Safety of Dual Antiplatelet Therapy After Complex PCI
結論 複雑な経皮的冠動脈インターベンション(PCI)をうける患者において,長期の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の短期DAPTに対するベネフィットは,手技の複雑度が上昇するにしたがって大きくなった。これまでに確立されたほかのリスク因子と同様に,手技の複雑度もDAPT期間を考慮するための重要なパラメーターである。
コメント 冠動脈インターベンションの技術,使用器具は常に進歩している。ステントを使い始めた1980年代には,抗血小板併用療法によるステント血栓予防にインパクトがあった。高圧拡張,拡張後の血管へのフィットの超音波による確認などをする時代の抗血小板薬の必要性が20世紀と同一か否かには,疑問がある。抗血小板薬は必ず出血イベントを増加させる。併用すれば出血リスクは増える。併用期間が延長すれば出血リスクはさらに増える。本研究結果は,効果とリスクのバランスに注目し,抗血小板併用療法の長期化を「複雑病変」に限局しようとする情報として価値がある。ランダム化比較試験に基づいて一般的患者集団の標準治療を転換するという発想から,血栓イベントリスクの高い小集団を見出して選択的介入をしようとする個別化医療,precision medicineへの方向に向けて価値のある研究である。(後藤信哉

目的 薬剤溶出性ステントによる複雑PCI施行後,至適DAPT期間は不明である。本研究は,短期(3~6ヵ月)および長期(12ヵ月以上)のDAPTの有効性および安全性をPCIの複雑度に応じて比較した。複雑PCIは,3枝病変の治療,3つ以上のステント留置,3つ以上の病変を治療,分岐部に2つのステントを留置,総ステント長>60mm,慢性完全閉塞のうち1つ以上にあてはまるものと定義した。有効性主要評価項目:MACE(心臓死,心筋梗塞,ステント血栓症)。安全性主要評価項目:大出血。
方法 Medline,Cochrane database,EMBASE,tctmd,ClinicalTrials,Clinical Trial Results,Cardiosource,主要な心血管関連学術集会のアブストラクトおよび発表より検索。
対象:短期(3~6ヵ月)および長期(12ヵ月以上)のDAPTを比較したRCT。
対象 6試験(PRODIGYOPTIMIZERESETEXCELLENT,SECUTIRY,ITALIC
9,577例(複雑PCI施行1,680例+非複雑PCI施行7,897例)。追跡期間中央値392日。
主な結果 ・複雑PCI施行例
複雑PCI施行は1,680例(17.5%)で,全体の85%は新世代DESを留置されていた。
複雑PCI施行例は非施行例にくらべ,糖尿病有病率(35.8% vs. 30.8%,p=0.006)が高かったが,それ以外は同様であった。
複雑PCI施行はMACE(補正後HR 1.98,95%CI 1.50-2.60,p<0.0001),冠血栓イベント(補正後HR 2.36,95%CI 1.70-3.22,p<0.0001),ステント血栓症(definite/probable,補正後HR 2.25,95%CI 1.30-3.90,p=0.004),心筋梗塞(補正後HR 2.29,95%CI 1.64-3.20,p<0.0001)の予測因子であった。

・長期と短期の比較
複雑PCI施行患者では,長期DAPTは短期DAPTにくらべ,MACEリスクが低下したが(補正後HR 0.56,95%CI 0.35-0.89),非複雑PCI施行患者では有意差を認めなかった(補正後HR 1.01,95%CI 0.75 -1.35,交互作用p=0.01)。

・長期DAPTのベネフィット
長期DAPTのMACE抑制に対するベネフィットは,手技の複雑度が上がるにつれて大きくなった(高リスク手技が0:補正後HR 1.01,95%CI 0.75-1.35,高リスク手技が1または2:補正後HR 0.67,95%CI 0.44-1.04,高リスク手技が3以上:補正後HR 0.22,95%CI 0.05-1.06,交互作用p=0.01)。

・長期DAPTの大出血リスク
長期DAPTと大出血リスク上昇の関連は,複雑PCI施行患者(補正後HR 1.81,95%CI 0.67-4.91),非複雑PCI施行患者(補正後HR 1.75,95%CI 0.98-3.12)のいずれにおいても同様であった(交互作用p=0.96)。
文献: Giustino G, et al. Efficacy and Safety of Dual Antiplatelet Therapy After Complex PCI. J Am Coll Cardiol 2016; 68: 1851-64. pubmed
関連トライアル ARCTIC-Interruption, CREDO, DES留置とDAPT実施期間, DES留置後のDAPTの至適期間, DES留置後のDAPT延長投与, DES留置後のDAPT期間:短期と長期の比較, DES留置後長期DAPTによる死亡率, EXCELLENT, ITALIC, OPTIMIZE, PARIS, PRODIGY type of stent, PRODIGY impact of clinical presentation, PRODIGY in-stent restenosis, SECURITY, Varenhorst C et al
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