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メタ解析
alteplase投与後の脳内出血リスク(STT二次解析)
Risk of intracerebral haemorrhage with alteplase after acute ischaemic stroke: a secondary analysis of an individual patient data meta-analysis
結論 alteplase投与例では,正味の転帰は発症-治療時間(発症-治療時間が短いほど転帰良好が増加),脳卒中重症度(脳卒中重症度が高いほど脳内出血の絶対リスクが増加)の双方により予測できる。発症-治療時間が4.5時間以内の場合,alteplase投与により転帰良好が得られる可能性は死亡リスクを上回るが,特に重症脳卒中患者に対しては早期治療が重要である。
コメント 本メタアナリシスの結果から,rt-PA血栓溶解療法の転帰を規定する因子が,発症から投与までの時間(短いほど転帰良好)と脳梗塞の重症度(重症ほど頭蓋内出血のリスクが上昇)であることと,4.5時間以内のrt-PA血栓溶解療法の有効性が改めて示されるとともに,重症例ではできるだけ早期の投与が頭蓋内出血を回避し,良好な転帰を得るために重要であることが強調されている。脳梗塞発症後,より早期にrt-PA血栓溶解療法を受けることができるように,脳梗塞発症時の専門病院への救急搬送体制や病院到着後の院内治療体制の確立と改善が重要と思われる。(矢坂正弘

目的 先行のRCTより,alteplaseは急性脳梗塞発症後4.5時間以内に投与された場合に転帰良好のオッズ比を改善することが示された。しかしながら,alteplaseは投与後48時間以内の脳出血リスクを増加させる。本研究はSTT(Stroke Thrombolysis Trialists’)の二次解析として,さまざまなタイプの患者においてalteplaseが頭蓋内出血,死亡,機能不全リスクにおよぼす影響を検討した。
方法 急性脳梗塞患者において行われ,終了したalteplaseに関する第III相試験をすべて対象とし,システマティックレビュー(Lancet 2013; 379: 2364)およびalteplase販売企業による試験データより同定した。主要評価項目:脳内出血(7日以内の2型実質性出血,24~36時間以内の SITS-MOST定義出血[NIHSSの4点以上の悪化をともなう2型実質性出血],7日以内の致死的脳出血)。
対象 9試験(NINDS A, NINDS B, ECASS I, ECASS II, ATLANTIS A, ATLANTIS B, ECASS III, EPITHT, IST-3)。
6,756例(alteplase群3,391例+対照群3,365例)。患者背景:平均年齢71歳。女性45%。平均発症-治療時間4.0時間。平均National Institute of Health stroke scale(NIHSS)12。高血圧既往60%,脳卒中既往18%,糖尿病既往16%,心房細動既往24%。抗血小板薬服用33%。
主な結果 ・脳内出血
alteplaseはすべてのタイプの出血リスクを上昇させた。ベースライン時の特性で補正後も,結果は同様であった。
2型実質性出血:alteplase群231/3,391例(6.8%)vs. 対照群44/3,365例(1.3%),OR 5.55,95%CI 4.01-7.70,過剰絶対リスク 5.5%(4.6-6.4)。
SITS-MOST出血:124/3,391例(3.7%)vs. 19/3,365例(0.6%),OR 6.67,4.11-10.84,過剰絶対リスク3.1%(2.4-3.8)。
致死的脳出血:91/3,391例(2.7%)vs. 13/3,365例(0.4%),OR 7.14(3.98-12.79),過剰絶対リスク2.3%(1.7-2.9)。

・脳内出血リスクと脳卒中重症度の関連
脳内出血の比例的な増加は,治療の遅れ,年齢,ベースラインの脳卒中重症度にかかわらず同様であったが,脳内出血の過剰絶対リスクは脳卒中重症度と正相関した。
SITS-MOST脳内出血の過剰絶対リスクは以下の通り。NIHSS 0~4:1.5%(0.8-2.6%),同5~10:2.4%(1.4-4.2%),同11~15:3.3%(1.8-5.5%),同16~21:3.4%(1.9-5.8%),同≧22:3.7%(2.1-6.3%)(p=0.0101)。

・発症-治療時間≦4.5時間の患者における転帰
4.5時間以内に治療を受けた患者では,alteplaseによる転帰良好(mRS 0~1)の絶対増加(6.8%,4.0~9.5%)は,致死的脳内出血(2.2%,1.5~3.0%),90日以内の全死亡(0.9%,-1.4~3.2%)の絶対増加を上回った。
文献: Whiteley WN, et al.; Stroke Thrombolysis Trialists' Collaboration. Risk of intracerebral haemorrhage with alteplase after acute ischaemic stroke: a secondary analysis of an individual patient data meta-analysis. Lancet Neurol 2016; 15: 925-33. pubmed
関連トライアル alteplase静注における治療時間の遅れ,年齢,脳卒中重症度の影響, Cappellari M et al, ECASS III, ECASS III additional outcomes, ENCHANTED, EPITHET, IST 1997, IST-3 18-month follow-up, IST-3 brain imaging signs, IST-3 three year follow-up, Madrid Stroke Network, PATCH, Power A et al, SITS-ISTR, SITS-ISTR 2010, SITS-ISTR weight >100kg, SITS-ISTR young patients, SITS-ISTR/VISTA, SITS-MOST, 虚血性脳卒中患者に対するrt-PA療法, 脳卒中発症後の機能的転帰の分布に対するalteplaseの影響, 発症からalteplase静注までの時間と転帰
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