抗血栓トライアルデータベース
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OCEAN-TAVI registry
結論 経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)施行前の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は,抗血小板薬単剤療法(SAPT),抗血小板療法なしにくらべ,出血リスクを上昇させた。強度の低い抗血小板療法は,血栓イベントと関連しなかった。現在の医療状況では,抗血小板薬単剤もしくは術前抗血小板療法を行わずにTAVIを施行することが,有害イベントを増加させず,合理的であるかもしれない。

目的 TAVI施行前には,PCIでの経験にもとづいてDAPTが行われている。しかし,TAVIは冠インターベンションにくらべ出血リスク上昇と関連しており,また手技中の緊急開胸手術のリスクもある。本研究は,TAVI施行患者において,術前抗血小板療法の臨床ベネフィットを評価した。主要評価項目:入院中の出血,輸血,全死亡,心筋梗塞,脳卒中,弁血栓症。
デザイン 前向き登録研究の後ろ向き解析。UMIN-ID 000020423。
セッティング 多施設(9施設),日本。
期間 試験期間は2013年10月~2015年7月。
対象患者 540例。症状を有する,重度の大動脈弁狭窄症(NYHA class≧II),大動脈弁圧較差>40mmHgまたは大動脈弁通過最高流速>4.0m/秒,大動脈弁口面積<1.0cm2,エドワーズSapien XT生体弁を用いたTAVIを施行する症例。
【除外基準】二尖または非石灰化大動脈弁,外科的生体弁植込み不成功,重度の大動脈逆流,透析中,経心尖部/経腸骨/経大動脈TAVI施行,TAVI施行前に抗凝固薬を投与。
【出血の有無別の患者背景】年齢中央値は出血例86歳,非出血例84歳(p=0.003)。それぞれの女性76.5%,64.3%(p=0.005)。うっ血性心不全90.0%,78.4%(p=0.001)。高血圧75.9%,75.1%。糖尿病24.1%,24.6%。術前の抗血小板療法:なし10.0%,17.0%(p=0.033),SAPT 27.1%,32.7%,DAPT 62.9%,50.3%(p=0.006)。術後の抗血栓療法(院内死亡例を除く531例):なし0.6%,0%,SAPT 9.8%,7.6%,DAPT 73.6%,80.7%,術前の抗血小板療法なしまたはSAPTからDAPTへの変更17.2%,36.1%(p<0.001),抗凝固薬3.7%,1.4%,SAPT+抗凝固薬10.4%,8.4%,DAPT+抗凝固薬1.8%,1.9%。
治療法 通常,TAVI施行の1週前にSAPT(aspirin 100mgまたはclopidogrel 75mg)またはDAPT(上記薬剤を併用)を投与。手技開始時には体重により調整した未分画heparinを投与し,手技中はACT 250~300秒を維持するよう追加投与を行った。術後は,止血が得られてから(通常1日後)SAPT,DAPT,SAPT+抗凝固薬,DAPT+抗凝固薬のいずれかを開始した。抗血栓療法のレジメンおよびタイミングは担当医の裁量とした。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
入院中,全出血は170例(31.4%),輸血は156例(28.9%),全死亡は9例(1.7%),脳卒中は14例(2.6%),心筋梗塞は3例(0.6%),弁血栓症は0例に発生した。出血はアクセス部位163例,頭蓋内出血1例,心タンポナーデ5例,消化管出血1例。
DAPT群の全出血は36.5%で,SAPT群(27.5%,p=0.049),抗血小板療法なし(21.3%,p=0.010) にくらべ多かった。
術前抗血小板療法をうけなかった患者において,血栓イベントリスク上昇はみられなかった。
多変量ロジスティック回帰分析の結果,TAVI施行前のDAPTはSAPT(OR 2.05,95%CI 1.16-3.65,p=0.014),抗血小板療法なし(OR 2.30,95%CI 1.08-4.90,p=0.031)にくらべ,全出血リスクを上昇させた。

●有害事象

文献: Hioki H, et al.; And on behalf of OCEAN-TAVI investigators. Pre-procedural dual antiplatelet therapy in patients undergoing transcatheter aortic valve implantation increases risk of bleeding. Heart 2016; 103: 361-7. pubmed
関連トライアル PRODIGY impact of clinical presentation, TAVI施行後の抗血小板療法
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