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JPAD2 Japanese Primary Prevention of Atherosclerosis with Aspirin for Diabetes 2
結論 日本人2型糖尿病患者の心血管一次予防に関し,JPAD試験終了後10年にわたる追跡において,低用量aspirinは心血管イベントリスク低下と関連していなかった。一方,消化管出血リスク上昇との関連が認められた。
コメント 本研究の元となるJPAD studyの結論はネガティブだったが,65歳以上のサブグループでは,有意なアスピリンの効果があった(HR 0.68)。今回,追跡期間を延長して統計的パワーを増すことを試みたが,65歳以上の高齢者であってもHRは0.96で差がなかった。わが国で実施された,高齢者を対象とした,より大規模の低用量アスピリン一次予防試験JPPPでは,primary end pointに差はなく,secondary end point のMI, TIAでアスピリンの効果が見られ,逆に消化管出血が有意に増加した。JPPPオリジナル論文中のサブグループ別解析では,糖尿病群においても差がなかった。糖尿病は,現在は血圧,糖脂質代謝などの治療法の進歩により,心血管リスクが減少したため,アスピリンの効果が出にくくなったと考えられる。しかし,副作用である出血はアスピリンによって確実に増えるため,アスピリンの一次予防は薦められていない。アスピリンの一次予防に最適な対象者を見極めることは今後の課題として残されている。最近は,がん,特に直腸がんに対するアスピリンの予防効果に関心が寄せられている。(島田和幸

目的 2型糖尿病患者において,低用量aspirinによる心血管イベント一次予防の長期有効性および安全性についてはまだ結論が出ていない。そこで,JPAD終了後,登録患者全例を隔年で追跡し,長期低用量aspirin投与の安全性および有効性を検討した。有効性主要評価項目:心血管イベント(突然死,冠動脈/脳血管/大動脈関連死,非致死的急性心筋梗塞,不安定狭心症,新規発症労作性狭心症,致死的/非致死的脳卒中,一過性脳虚血発作[TIA],非致死的大動脈/末梢血管疾患)。安全性評価項目:出血性イベント(消化管出血,出血性脳卒中,全部位の出血)。
デザイン JPADはPROBE試験。NCT00110448。主要解析:per-protocolコホート,出血イベント:intention-to-treatコホートにおいて解析。
セッティング 多施設(163施設),日本。
期間 登録期間は2002年12月~2005年5月,追跡終了は2015年7月。追跡期間中央値10.3年。
対象患者 2,539例。JPAD参加患者(30~85歳の2型糖尿病患者)のうち,主要評価項目が発症しなかった症例。
【除外基準】心電図上の変化(ST偏位/異常Q波),冠動脈造影で確認された冠動脈疾患の既往,脳血管疾患既往(脳梗塞/脳出血/くも膜下出血/TIA),治療を必要とする動脈硬化性疾患,心房細動,抗血小板薬/抗凝固薬投与,重篤な胃・十二指腸潰瘍の既往,重篤な肝または腎機能障害など。
【患者背景】平均年齢はaspirin群65歳,非aspirin群64歳(p=0.002)。各群の男性57%,54%。BMI 24,24。糖尿病罹病期間中央値7.6年,6.7年。SBP 136mmHg,134mmHg(p=0.007),DBP 77mmHg,76mmHg(p=0.03)。脂質異常症55%,52%。現喫煙23%,19%(p=0.02),喫煙経験22%,20%。糖尿病細小血管合併症:網膜症16%,15%,腎症14%,13%,神経障害14%,11%。
治療法 JPADはaspirin群(992例。81~100mg/日投与),非aspirin群(1,168例)に無作為割付。他の薬剤との併用は全例において許可した。
追跡完了率 追跡完了は1,621例(64%)。
結果

●評価項目
per-protocolコホート(最初の割付治療を継続した2,160例)において,低用量aspirinは 有効性主要評価項目を抑制しなかった(aspirin群15.2% vs. 非aspirin群14.2%,HR 1.14,95%CI 0.91-1.42,p=0.2)。年齢,性別,血糖コントロール,腎機能,喫煙,高血圧,脂質異常症について多変量Cox比例ハザードモデルにて補正後も,同様の結果であった(HR 1.04,95%CI 0.83-1.30)。それぞれの因子についてのサブグループ解析でも,不均一性はみられなかった(すべての交互作用p>0.05)。
intention-to-treatコホート(2,539例)の解析でも,結果は一貫していた(6% vs. 5%,HR 1.01,95%CI 0.82-1.25,p=0.9)。
全出血イベント(aspirin群6% vs. 非aspirin群5%,p=0.2),出血性脳卒中(0.9% vs. 1.2%,p=0.4)は両群間に有意差を認めなかった。消化管出血はaspirin群25例(2%)で,非aspirin群12例(0.9%)にくらべ多かった(HR 2.14,95%CI 1.10-4.42,p=0.03)。

●有害事象

文献: Saito Y, et al.; JPAD Trial Investigators. Low-Dose Aspirin for Primary Prevention of Cardiovascular Events in Patients with Type 2 Diabetes: 10-year Follow-up of a Randomized Controlled Trial. Circulation 2017; 135: 659-70. pubmed
関連トライアル AAA, AAASPS 2003, APPRAISE, APPRAISE-2, aspirinの一次および二次予防効果(ATT), AVERROES, CAST-IST, CHANCE, CHARISMA, CHARISMA bleeding complications, COGENT, COGENT aspirin dose, COMPRESS, CREDO, CURRENT-OASIS 7 undergoing PCI, DES LATE, ECLAP, ESPRIT , INSPIRE, JAST, JPAD, JPAD cerebrovascular event, JPPP, JPPP stroke substudy, PEGASUS-TIMI 54 prevention of stroke, PERFORM, PPP, Steno-2 study, TRA 2P-TIMI 50 previous myocardial infarction, TRILOGY ACS elderly patients, WHS, 脳卒中/TIA後のDAPTによる二次予防
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