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PEGASUS-TIMI 54 prevention of stroke
結論 心筋梗塞既往を有する高リスク患者において,脳卒中リスクは高く,約1/3が致死的または後遺障害が中等度~重度であった。ticagrelor 60 mg 1日2回の低用量aspirinへの追加は,出血性脳卒中リスクを上昇させずにリスクを低減したが,大出血リスクは上昇した。高リスク冠疾患患者に対する強力な抗血小板療法は,冠イベントだけでなく脳卒中リスク低減の点からも考慮すべきである。
コメント 心筋梗塞既往患者に対するアスピリン+チカグレロール長期併用療法が,出血性脳卒中リスクを増加させることなく脳卒中の発症を有意に低下させたとする,意義ある研究成果である。発症した脳卒中の重症度の比較も検討されており,興味深い。心血管病に対する抗血小板療法のアウトカム評価に心臓病,脳卒中の統合的な予防効果が求められている。(岡田靖

目的 PEGASUS-TIMI 54では,安定した心筋梗塞既往患者において,ticagrelor の低用量aspirinへの追加は主要な有害心血管イベントリスクを低減し,ticagrelor 60mg 1日2回投与の長期二次予防の使用が認可された。本解析では,この認可用量に焦点をあて,脳卒中の発症率,予測因子,転帰について検討した。PEGASUS-TIMI 54の有効性主要評価項目:心血管死+心筋梗塞+脳卒中の複合,安全性主要評価項目:TIMI出血基準大出血
デザイン 無作為割付,二重盲検,プラセボ対照試験。NCT01225562。
セッティング
期間 追跡期間中央値33ヵ月。
対象患者 14,112例。PEGASUS-TIMI 54登録患者(50歳以上,自然発症の心筋梗塞既往から1~3年以内,以下の追加リスクを1つ以上有する症例:65歳以上,薬物療法を要する糖尿病,2度目の自然発症心筋梗塞既往,多枝病変,慢性腎障害)21,162例のうち,ticagrelor 90mg群またはプラセボ群に割り付けられた症例。
【除外基準】試験期間中にP2Y12受容体拮抗薬または抗凝固薬を投与予定,出血性疾患,頭蓋内出血既往,中枢神経系腫瘍,頭蓋内血管異常,消化管出血発症から6ヵ月以内,前月に大手術施行。なお試験早期にプロトコールを変更し,脳卒中既往患者を除外することとした。変更前に登録された脳卒中患者は,試験薬を中止した。
【脳卒中発症の有無別の患者背景】年齢中央値は非発症群65歳,発症群67歳*。それぞれの女性24%,28%。白人87%,83%。BMI 28,27。血圧130/80mmHg,138/80mmHg(SBPのみ*)。高血圧既往77%,88%*。高コレステロール血症77%,76%。現喫煙17%,15%。糖尿病32%,42%(p=0.003)。eGFR<60mL/分23%,39%*。心房細動既往4%,15%*。TIA既往1%,2%。脳卒中既往0%,1%(p=0.031)。*p<0.001
治療法 PEGASUS-TIMI 54はticagrelor 60mg群(60mg 1日2回投与),同90mg群(90mg 1日2回投与),プラセボ群の3群に無作為割付。全例に低用量aspirinを投与した。
追跡完了率
結果

●評価項目
全体で213例に脳卒中が発症した。内訳は,虚血性181例(85%),出血性16例(8%),不明16例(8%)。脳卒中の18%は致死的,15%は30日後の後遺障害が中等度~重度(mRS 3~5)であった。
ticagrelor 60mg群はプラセボ群にくらべ,脳卒中発症リスクを抑制した(HR 0.75,95%CI 0.57-0.98,p=0.034)。これは虚血性脳卒中リスク低減によるものであった(HR 0.76,0.56-1.02)。
出血性脳卒中発症はticagrelor群8例,プラセボ群9例とまれで,有意差はみられなかった。
ticagrelor 60mg群はプラセボ群にくらべ,TIMI出血基準大出血が増加したが(HR 2.32,1.68-3.21,p<0.001),頭蓋内出血(HR 1.33,0.77-2.31,p=0.31),致死的出血(HR 1.00,0.44-2.27,p=1.00)は増加しなかった。また,ticagrelor 60mg群はプラセボ群にくらべ,有効性主要評価項目を抑制した(HR 0.84,0.74-0.95,p=0.0043)。全死亡は同程度であった(HR 0.89,0.76-1.04,p=0.14)。
冠動脈疾患患者において,強力な抗血小板薬をプラセボ対照とした4試験(CHARISMATRA2P-TIMI 50DAPT ,PEGASUS-TIMI 54)44,816例のメタ解析では,脳卒中(HR 0.72,0.60-0.85,p<0.001),虚血性脳卒中(HR 0.66,0.54-0.81,p=0.0001)の減少がみられた。出血性脳卒中は増加しなかった(HR 1.29,p=0.48)。

●有害事象

文献: Bonaca MP, et al. Prevention of Stroke with Ticagrelor in Patients with Prior Myocardial Infarction: Insights from PEGASUS-TIMI 54 (Prevention of Cardiovascular Events in Patients With Prior Heart Attack Using Ticagrelor Compared to Placebo on a Background of Aspirin-Thrombolysis in Myocardial Infarction 54). Circulation 2016; 134: 861-71. pubmed
関連トライアル APPRAISE, APPRAISE-2, ATLAS ACS 2-TIMI 51, ATLAS ACS 2-TIMI 51 STEMI patients, CHARISMA, CHARISMA bleeding complications, CHARISMA subgroup analysis, DAPT, DES LATE, JPPP stroke substudy, PEGASUS-TIMI 54, PEGASUS-TIMI 54 diabetic patients, PEGASUS-TIMI 54 peripheral artery disease, PEGASUS-TIMI 54 renal function, PEGASUS-TIMI 54 time from P2Y12 inhibitor withdrawal, Physicians' Health Study 1991, PLATO, PLATO history of stroke, PLATO renal function, PLATO total events, SOCRATES, TRA 2P-TIMI 50, TRA 2P-TIMI 50 diabetes mellitus, TRA 2P-TIMI 50 new ischemic stroke, TRA 2P-TIMI 50 previous myocardial infarction, TRA 2P-TIMI 50 prior ischemic stroke, TRA 2P-TIMI 50 stent thrombosis, TRA 2P-TIMI 50 thienopyridine, TRANSLATE-ACS aspirin dose, TRILOGY ACS elderly patients, TRITON-TIMI 38 discharge aspirin dose, TRITON-TIMI 38 PCI, WHS, 安定循環器疾患に対する低用量aspirin, 心筋梗塞患者におけるDAPT延長による心血管イベント二次予防, 脳卒中/TIA後のDAPTによる二次予防
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