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PIONEER AF-PCI An Open-label, Randomized, Controlled, Multicenter Study Exploring Two Treatment Strategies of Rivaroxaban and a Dose-Adjusted Oral Vitamin K Antagonist Treatment Strategy in Subjects with Atrial Fibrillation who Undergo Percutaneous Coronary Intervention
結論 ステントを留置された心房細動患者において,rivaroxaban 15mg 1日1回+P2Y12阻害薬単剤12ヵ月投与,rivaroxaban 2.5mg 1日2回+1,6,12ヵ月の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)併用のいずれも,標準治療(ビタミンK拮抗薬[VKA]+1,6,12ヵ月のDAPT併用)にくらべ,臨床的に重要な出血リスクを有意に抑制した。有効性は信頼区間が広いものの,同程度であった。
コメント  EBMは「平均的症例」の「標準治療」の確立,その転換に役立つ。過去に「標準治療」が確立されていない領域のランダム化比較試験の結果の解釈は困難である。抗凝固薬,抗血小板薬ともに出血イベントリスクは上昇する。両者を併用すれば重篤な出血イベントが増加することは当然とされる。脳卒中リスクを有する心房細動例に抗凝固薬,PCI/ステント症例に抗血小板薬が推奨されていても,臨床家はPT-INRの標的を下げる,アスピリンを外す,クロピドグレルを減量する,などの個別調節を行う。本邦においてはさらにその傾向が強いと想定される。
 今回発表されたPIONEER AF-PCI試験では,PT-INR 2-3のワルファリンとアスピリン・クロピドグレルの抗凝固・抗血小板併用療法を現時点の標準治療に設定した。WOESTに比べDAPTの期間を短縮し,現状の治療実態を反映した今回の「標準治療」でも,1/4以上の症例が1年間に臨床的に意味のある出血イベントを経験した。
 オバマ大統領が主導するPrecision Medicine Initiativeが生まれていることからわかるように,「平均的症例」の「標準治療」の確立,その転換というEBMの世界の終わりを示しているのかもしれない。本研究は,PT-INR 2-3を標的としたワルファリンと抗血小板併用療法の組み合わせは出血イベントリスクが高く,投与量を減量したリバーロキサバン群では出血リスクが抑制された。「平均的症例」の「標準治療」という発想の終焉を示しているのだろう。(後藤信哉

目的 ステントを留置された心房細動患者に対し,VKA+DAPTによる3剤併用療法が標準治療となるが,出血リスクが上昇する。NOACはVKAに比べ出血リスクを低減させることが臨床試験の結果から示されており,その有用性が期待されている。rivaroxabanは非弁膜症性心房細動(NVAF)患者において脳卒中または全身性塞栓症のリスクを,また急性冠症候群後の患者の二次予防として心血管死,心筋梗塞,脳卒中のリスクを低減したが,ステントを留置された心房細動患者に対し,抗血小板薬単剤または2剤と併用した場合の有効性および安全性は不明である。本試験では,rivaroxabanの二つの治療ストラテジーについて,標準治療との比較を行った。主要評価項目:無作為化後12ヵ月間までの臨床的に重要な出血(TIMI出血基準にもとづく大出血,小出血,医学的介入を必要とする出血の複合)。副次評価項目:主要評価項目の各項目,有効性有害事象として重要な心血管イベント(心血管死,心筋梗塞,脳卒中の複合と各項目),ステント血栓症。
デザイン PROBE試験。NCT01830543。
セッティング 多施設,複数国。
期間 無作為割付期間は2013年5月10日~2015年7月30日。
対象患者 2,124例。18歳以上,ステント留置施行予定の発作性,持続性,永続性NVAF患者。登録基準は主としてスクリーニング前の1年以内に心房細動の診断を受けた症例としたが,PCI施行直前の3ヵ月間に心房細動に対する経口抗凝固療法をうけている場合は,1年以上前の心房細動発症例も対象とした。
【除外基準】脳卒中/TIA既往,臨床的に重篤な消化管出血から12ヵ月以内,クレアチニンクリアランス(CrCl)<30mL/分,原因不明の貧血(ヘモグロビン<10g/dL),出血リスクが上昇すると考えられる病態。
【患者背景】平均年齢は第1群70.4歳,第2群70.0歳,第3群69.9歳。各群の女性25.5%,24.5%,26.6%。白人93.4%,94.6%,94.1%。平均CrCl 78.3mL/分,77.5mL/分,80.7mL/分。ベースライン時のP2Y12阻害薬:clopidogrel 93.1%,93.7%,96.3%,prasugrel 1.7%,1.6%,0.7%,ticagrelor 5.2%,4.8%,3.0%。当該イベント:NSTEMI 18.5%,18.3%,17.8%,STEMI 12.3%,13.8%,10.7%,不安定狭心症20.7%,21.1%,23.7%。ステントの種類:DES 65.4%,66.8%,66.5%,BMS 32.6%,31.2%,31.8%,両方2.0%,2.0%,1.7%。心房細動の種類:持続性20.6%,20.6%,21.1%,永続性37.0%,33.6%,34.5%,発作性42.4%,45.8%,44.4%。第3群におけるTTR 65.0%。
治療法 シース抜去から72時間以内,INR 2.5以下となった後に以下の3群に無作為割付。無作為割付前にDAPT治療期間(1,6,12ヵ月),P2Y12阻害薬の種類(clopidogrel,prasugrel,ticagrelor)は担当医が決定した。
第1群(WOEST試験に類似したレジメン):709例。rivaroxaban 15mg 1日1回(中等度腎障害[CrCl 30~50mL/分]では10mg)+P2Y12阻害薬(clopidogrel 75mg 1日1回,またはprasugrel 10mg 1日1回もしくはticagrelor 90mg 1日2回[各群の15%まで])を12ヵ月併用。
第2群(ATLAS ACS 2-TIMI 51試験に類似したレジメン):709例。rivaroxaban 2.5mg 1日2回+DAPT(aspirin 75mg/日+上記P2Y12阻害薬のいずれか)。DAPT期間(1,6,12ヵ月併用)終了後は,rivaroxaban 15mg 1日1回(中等度腎障害では10mg)+aspirin 75~100mg/日を併用した。
第3群:706例。用量調整VKA(目標INR 2.0~3.0)+DAPT(第2群と同じ)。第2群と同様にDAPT期間(1,6,12ヵ月併用)終了後は,用量調整VKA(目標INR 2.0~3.0)+aspirin 75~100mg/日を併用した。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
安全性主要評価項目発現率は,第3群(26.7%)にくらべ,第1群では16.8%(HR 0.59,95%CI 0.47-0.76,p<0.001,NNT=11),第2群では18.0%(HR 0.63,95%CI 0.50-0.80,p<0.001,NNT=12)と,rivaroxabanをベースとした両治療群で有意に少なかった。
TIMI出血基準の重大な出血は,第3群3.3%に対し第1群では2.1%(p=0.234),第2群では1.9%(p=0.114),小出血は第1群1.1%(p=0.144),第2群1.1%(p=0.134),第3群2.2%で,同程度であった。医学的介入を要する出血は第1群14.6%(p<0.001),第2群15.8%(p=0.002),第3群22.6%で,rivaroxabanの両群で有意に少なかった。
サブグループ解析で有意な交互作用を認めたものはなかった。
重要な心血管イベントの複合は,第3群(6.0%)にくらべ,第1群では6.5%(HR 1.08,95%CI 0.69-1.68,p=0.750),第2群では5.6%(HR 0.93,95%CI 0.59-1.48,p=0.765)と,同程度であった。
心血管死は第1群2.4%(p=0.523),第2群2.2%(p=0.664),第3群1.9%,心筋梗塞はそれぞれ3.0%(p=0.625),2.7%(p=0.374),3.5%,脳卒中は1.3%(p=0.891),1.5%(p=0.530),1.2%,ステント血栓症は0.8%(p=0.790),0.9%(p=0.574),0.7%。
サブグループ解析で有意な交互作用を認めたものはなかった。

[post hoc解析](Circulation 2016;CIRCULATIONAHA.116.025783)
事後解析として,全死亡または有害イベントによる再入院について検討した。第3群(41.9%)にくらべ,第1群では34.9%(HR 0.79,95%CI 0.66-0.94,p=0.008,NNT=15),第2群では31.9%(HR 0.75,95%CI 0.62-0.90,p=0.002, NNT=10)と,rivaroxabanをベースとした両治療群で有意に抑制された。
全死亡+出血による再入院は第1群8.6%(p=0.032),第2群8.0%(p=0.012),第3群12.4%,全死亡+心血管疾患による再入院は第1群21.4%(p=0.001),第2群21.7%(p=0.011),第3群29.3%と,いずれもrivaroxabanをベースとした両治療群で有意に少なかった。
再入院は第1群34.1%(p=0.005),第2群31.2%(p=0.001),第3群41.5%で,rivaroxabanをベースとした両治療群で有意に少なかった。
p値はすべて第3群に対して)

●有害事象

文献: Gibson CM, et al. Prevention of Bleeding in Patients with Atrial Fibrillation Undergoing PCI. N Engl J Med 2016; 375: 2423-34. pubmed
関連トライアル ACCOAST, ACTION Registry-GWTG triple therapy, ARCTIC-Interruption, ATLAS ACS 2-TIMI 51, ATLAS ACS 2-TIMI 51 STEMI patients, ATLAS ACS-TIMI 46 , AVERROES, CURRENT-OASIS 7 undergoing PCI, DAPT, DAPT BMS or DES, EINSTEIN-DVT and EINSTEIN-Extension, EINSTEIN-PE, HORIZONS-AMI , ITALIC, Lamberts M et al, Lamberts M et al, Lamberts M et al, OPTIMIZE, PARIS, PEGASUS-TIMI 54, PRODIGY impact of clinical presentation, PRODIGY in-stent restenosis, REAL-LATE / ZEST-LATE, ROCKET AF, ROCKET AF East Asian patients, ROCKET AF elderly patients, ROCKET AF major bleeding, ROCKET AF post hoc analysis, ROCKET AF temporary interruption, ROCKET-AF persistent vs. paroxysmal, TRILOGY ACS elderly patients, TRITON-TIMI 38, TRITON-TIMI 38 discharge aspirin dose, VENTURE-AF, X-VeRT, XALIA
関連記事 [AHA 2016]PCI後の心房細動患者に対し,リバーロキサバンをベースとした抗血栓療法は標準療法より出血リスクを有意に低減-PIONEER AF-PCIより(C. Michael Gibson氏)