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メタ解析
脳卒中発症後の機能的転帰の分布に対するalteplaseの影響
Effects of Alteplase for Acute Stroke on the Distribution of Functional Outcomes: A Pooled Analysis of 9 Trials
結論 脳梗塞発症後4.5時間以内にalteplase静注を開始すると,80歳以上を含むすべての年齢層において,また脳卒中重症度にかかわらず,機能的転帰のレベルを改善する可能性が増加した。ベネフィットは治療開始が早いほど大きかった。
コメント 脳梗塞急性期のrt-PA血栓溶解療法の有効性を検証した9つのRCTに登録された6,756例のメタ解析において,高齢者を含むすべての年齢層で重症度にかかわらず,t-PA血栓溶解療法が機能予後を改善させることと,発症から治療開始までの時間が短いほど転帰が良いことが示された。本治療が均てん化し,さまざまな医療圏で標準医療として行えることが期待される。(矢坂正弘

目的 脳梗塞発症後4.5時間以内にalteplase静注を開始することにより,臨床転帰優良(modified Rankin Score:mRS0~1)の可能性が上昇する。脳卒中転帰データの解析として,個々の患者の改善ならびに全体の患者における機能的転帰の分布改善という二つのアプローチがあるが,ここでは後者の解析として,alteplaseが機能的転帰レベルの分布に及ぼす影響について,発症-治療時間,年齢,脳卒中重症度の観点から検討を行った。
方法 alteplaseをプラセボまたは非盲検の対照薬と比較したRCT 9件について,事前に定められたプール解析。順序ロジスティック回帰モデルにより,発症-治療時間,年齢,脳卒中重症度,関連する相互作用項目を調整後,治療の差を評価した。また,すべてのmRSスコアを同等に加重するHowardらの順序アプローチを適用して,alteplaseの正味のベネフィット(alteplase投与により改善すると考えられる推定症例数-悪化すると考えられる推定症例数)を推定した。
対象 RCT 9試験(NINDS A,NINDS B,ECASS I,ECASS II,ATLANTIS A,ATLANTIS B,ECASS IIIEPITHETIST-3)。
6,756例(alteplase群3,391例,対照群3,365例)。
患者背景:平均71歳,平均National Institute of Health stroke scale(NIHSS) 12±7時間,女性45%,発症-治療時間4.0±1.2時間(3時間以内23%,3時間超4.5時間41%,4.5時間超35%,データなし1%)。高血圧既往60%,脳卒中既往18%,糖尿病既往16%,心房細動既往24%。抗血小板薬使用33%。
主な結果 ・発症-治療時間と機能的転帰
alteplaseによる治療は,発症-治療時間を4.5時間に拡大してもベネフィットが認められた。発症-治療時間が6時間までの患者集団(平均4.0時間)における転帰優良(mRS 0~1対2~6)はOR 1.28,95%CI 1.15-1.42。
mRSを二分した解析では,治療開始が早いことはalteplaseによるベネフィットを享受する患者の割合が大きくなることと関連していた(mRS 0~1対2~6,mRS 0~2対3~6,mRS 0~3対4~6,mRS 0~4対5~6の比較ではすべてp<0.05。mRS 0と6の患者数が少なかったため,mRS 0対1~6,mRS 0~5対6の比較は有意差なし)。
治療開始が遅れた場合,患者の年齢およびベースラインの脳卒中重症度のいずれも,alteplaseによる転帰改善効果に対して有意な影響を認めなかった。また脳卒中重症度は,発症-治療時間とalteplaseによる転帰改善の確率の関係に有意な変化をきたさなかった(p=0.72)。
治療群,発症-治療時間,年齢の3方向相互作用についての検討からは,高齢者ではalteplase治療が有効である時間枠が最低4.5時間後まで延長することが示された。なお,これは若齢患者も同様であった。
比例仮説を回避する順序解析では,脳卒中発症後4.5時間以内に治療が行われた患者(平均3時間20分)において,1,000例につき55例(95%CI 13-91)でベネフィット(mRSの1点以上の改善)が認められた(p=0.004)。脳卒中発症後3時間以内に治療が行われた患者(平均2時間20分)においては,1,000例につき122例(95%CI 61-171)で正味のベネフィットが認められたが,発症-治療時間が4.5時間を超えた患者(平均5時間20分)では,ベネフィットが認められたのは1,000例につき20例(95%CI -31-75)のみであった。
文献: Lees KR, et al.; Stroke Thrombolysis Trialists’ Collaborators Group. Effects of Alteplase for Acute Stroke on the Distribution of Functional Outcomes: A Pooled Analysis of 9 Trials. Stroke 2016; 47: 2373-9. pubmed
関連トライアル alteplase静注における治療時間の遅れ,年齢,脳卒中重症度の影響, Cappellari M et al, ECASS III, ECASS III additional outcomes, ENCHANTED, EPITHET, HERMES, IST-3 18-month follow-up, IST-3 clinically important subgroups, IST-3 hyperdense artery sign, IST-3 mortality, J-MARS, Kim BJ et al, Power A et al, PRACTISE gender difference, SITS-EAST stroke recurring within 3 months, SITS-ISTR within-day and weekly variations, SITS-MOST multivariable analysis, VISTA contraindications, 虚血性脳卒中患者に対するrt-PA療法, 発症からalteplase静注までの時間と転帰
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