抗血栓トライアルデータベース
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Jeong HG et al Stroke outcomes with use of antithrombotics within 24 hours after recanalization treatment
結論 前向き登録研究の後ろ向き解析において,血栓溶解療法開始から24時間以内の早期抗血栓療法は,再開通治療後の出血を増加させなかった。現行のガイドラインでは推奨されていないものの,一部の脳卒中患者に対しては,抗血栓療法の早期開始が有効である可能性がある。
コメント 脳梗塞急性期の再開通療法後早期の抗血栓療法が,症例を選べば安全であることが示された。本邦のrt-PA静注療法適正治療指針第二版では,投与後24時間は抗血栓薬を投与すべきでないが,血管造影や深部静脈血栓予防を目的としたヘパリン1日1万単位以下の抗凝固療法は考慮できると記されている。まずは,それらの目的で抗凝固薬を24時間以内に投与例された症例を多数蓄積し,投与の安全性や条件を本邦でも検討する必要があろう。(矢坂正弘

目的 脳梗塞患者における早期再開通の重要性は確立されているが,再開通後の治療については依然として明らかでない。再開通後に抗血栓療法をすみやかに開始することにより,さらなる虚血性障害が回避されると考えられるが,科学的エビデンスがないため,現行の臨床ガイドラインでは推奨されていない。ここでは,再開通治療後24時間以内に開始する早期抗血栓療法の有効性および安全性を,24時間経過後に開始する標準的抗血栓療法と比較した。主要評価項目:4~7日後の出血性変化,3ヵ月後のmodified Rankin Score(mRS)0~1。
デザイン 前向き登録研究の後ろ向き解析。
セッティング 単施設,韓国。
期間 登録期間は2007年7月~2015年3月。
対象患者 712例。確定された病変を有し,再開通療法をうけた脳梗塞患者。
【除外基準】抗血栓療法開始時間についての情報なし,再開通治療後の抗血栓療法を保留(抗血栓療法開始前の症候性出血性変化または重大な全身性出血などの超早期出血合併症,予後がきわめて深刻,外科治療を予定のため)。
【患者背景】平均年齢は早期抗血栓療法開始例68.3歳,標準的開始例70.0歳。それぞれの男性59.4%,52.0%。発症前mRSスコア0の割合86.0%,82.8%。平均発症-来院時間6.4時間,4.3±時間*。来院時National Institute of Health stroke scale(NIHSS)中央値11,13*。発症-治療時間8.2時間,4.9時間**。脳卒中の病型:大血管動脈硬化32.0%,20.7%,小血管閉塞4.2%,2.7%,心原性43.6%,56.6%,その他3.9%,2.3%,不明16.2%,17.6%。心房細動36.8%,51.2%**。脳卒中前抗血小板薬使用33.6%,43.0%( p=0.02),脳卒中前抗凝固薬使用7.9%,12.5%。初期の抗血栓療法:抗血小板薬単剤51.1%,59.4%,抗血小板薬2剤併用35.5%,22.3%,抗凝固薬13.4%,18.4%。*p=0.01,**p<0.01。
治療法 急性脳卒中の治療は,おもに現行ガイドラインにもとづく施設のプロトコルならびに担当医の判断にしたがって実施。抗血栓療法の開始は,追跡CT/MRI上の重大な出血の有無および患者の臨床的プロファイルにより担当医が決定した。
追跡完了率 100%。
結果

●評価項目
早期に抗血栓療法開始は456例(64%),標準的開始は256例(36%)であった。再開通療法の内訳は,静注単独が243例(34%),動脈内単独が229例(32%),静注-動脈内併用が240例(34%)。
出血性変化を認めた210例(29.5%)のうち,症候性出血性変化であったのは23例(3.2%)。mRSスコア0~1は265例(37.7%)。
早期抗血栓療法開始患者では,なんらかの出血性変化のリスク低下と関連していたが(OR 0.56,95%CI 0.35-0.89,p<0.01),症候性出血性変化(OR 0.85,95%CI 0.35-2.10,p=0.59),3ヵ月後のmRSスコア0~1(OR 1.09,0.75-1.59,p=0.65)との関連は認めなかった。
事後解析において,超早期(<12時間)抗血栓療法開始例では,出血性変化リスクを上昇させず,むしろ低下させた(OR 0.26,95%CI 0.12-0.52,p<0.01)。再開通治療の方法(血栓溶解療法静注,血管内治療)は,抗血栓療法の開始時期と臨床転帰の関連に有意な影響を及ぼさなかった。
151例(21%)で虚血性の早期神経機能低下を認めた(早期抗血栓療法開始患者98例,標準的開始患者53例)。多変量モデルにおいて,虚血性早期神経機能低下と早期抗血栓療法開始の有意な関連は認めなかった(OR 0.66,95%CI 0.40-1.11)。

●有害事象

文献: Jeong HG, et al. Stroke outcomes with use of antithrombotics within 24 hours after recanalization treatment. Neurology 2016; 87: 996-1002. pubmed
関連トライアル GWTG-Stroke prior antithrombotic use, 急性脳梗塞に対する血管内治療と薬物療法の比較
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