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Larsen TB et al Effectiveness of self-managed oral anticoagulant therapy in patients with recurrent venous thromboembolism. A propensity-matched cohort study
結論 患者の自己管理による経口抗凝固療法(OAT)は,従来管理のOATにくらべ,静脈血栓塞栓症(VTE)再発率および全死亡率が有意に低かった。すべての主要血栓塞栓転帰は患者自己管理群のほうが少なかったが,出血は同程度であった。
コメント ビタミンK阻害経口抗凝固薬については,患者自身のモニタリングによる用量調整が有効性,安全性ともに効果的であることが予想される。本研究では,患者自身が週1回のモニタリングを行った患者自己管理群と,プロペンシティスコアのマッチングを用いた従来治療群との間で比較し,静脈血栓塞栓症の再発率と全死亡率について患者自己管理群で有意に低率であることを示した。しかしながら,週1回のモニタリングでは出血性イベントの低減はみられておらず,以前から指摘されている出血性イベントの多くは治療域で生じることを裏付ける結果であった点は興味深い。(山田典一

目的 ランダム化比較試験において,ビタミンK拮抗薬(VKA)を用いた患者自己管理 OATのVTEに対する有効性が示されている。本研究では,日常臨床のVTE患者において,患者自己管理 OATの有効性と安全性を従来管理OATと比較検討した。評価項目:VTE再発(肺塞栓症[PE]または深部静脈血栓症[DVT]),大出血(頭蓋内出血,消化管出血,さまざまな大出血,外傷性頭蓋内出血),全死亡。
デザイン 後向き,プロペンシティスコア合致コホート研究。
セッティング 多施設(自己管理群2施設),デンマーク。
期間 自己管理群(2施設)の登録期間は1996年6月1日~2012年6月30日,2008年4月1日~2012年12月31日。追跡期間は自己管理群6.9年,対照群6.7年。
対象患者 2,664例(自己管理群444例+対照群2,220例)。PEまたはVTE再発抑制のためOAT(warfarinまたはphenprocomoun)の適応を有する患者。自己管理群:当該施設にて抗凝固療法をうけているVTE患者。対照群:デンマークの全国患者登録より,プロペンシティスコアを合致させて1:5で抽出した,従来管理OATを行っているVTE患者。対照群は生存しており,当該日前の3ヵ月間にwarfarinまたはphenprocomounを処方されている患者とした。また両群とも,心房細動の診断または機械弁手術をうけておらず,長期OATの適応を有する患者(PEの一次診断を1回またはVTEの一次診断を複数回により定義)とした。
【除外基準】-
【患者背景】年齢中央値は自己管理群46.6歳,対照群46.8歳。それぞれの女性55.6%,55.6%。PE 42.6%,42.6%。DVT 86.0%,80.5%。VKA治療期間中央値35.3ヵ月,32.1ヵ月。平均HAS-BLED出血リスクスコア0.6,0.5。平均Charlsonスコア0.8,0.7。手術54.7%,53.6%。心不全1.1%,0.7%。高血圧12.8%,11.4%。糖尿病4.3%,3.7%。癌5.9%,5.9%。慢性閉塞性肺疾患2.7%,1.9%。
治療法 2施設のデータベースから前向きに登録された自己管理患者データを収集し,全国患者登録と交差結合した。
自己管理群:444例。INRをモニタリングして,治療域を維持するためにVKA用量を調整するよう教育されている。
対照群:2,220例。従来管理のOATを実施。
追跡完了率
結果

●評価項目
5年間のVTE再発率は自己管理群1.33%/年で,対照群2.16%/年にくらべ低かった(HR 0.63,95%CI 0.41-0.95)。VTEイベントの75%がDVTであったが,自己管理群ではDVTリスク(HR 0.57,95%CI 0.35-0.93),PEリスク(HR 0.82,95%CI 0.39-1.74)ともに低かった。
大出血は自己管理群0.42%/年で,対照群0.45%/年と差を認めなかった(HR 0.90,95%CI 0.42-1.92)。
全死亡リスクは自己管理群で低かった(0.46%/年,1.13%/年,HR 0.41,95%CI 0.21-0.83)。
正味の臨床ベネフィット解析(加重:VTE=1,大出血=1.9)では,自己管理群のほうが良好であった(0.86,95%CI 0.00-1.72)。

●有害事象

文献: Larsen TB, et al. Effectiveness of self-managed oral anticoagulant therapy in patients with recurrent venous thromboembolism. A propensity-matched cohort study. Thromb Haemost 2016; 116: 524-9. pubmed
関連トライアル Hokusai-VTE East Asia patients, INSPIRE, Martinez C et al, XALIA, 急性VTE治療における新規経口抗凝固薬とビタミンK拮抗薬の比較
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