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APEX Acute Medically Ill VTE Prevention with Extended Duration Betrixaban
結論 Dダイマーが上昇している急性内科疾患患者において,betrixaban長期投与はenoxaparin標準レジメンにくらべ,有効性は認められなかった。しかしながら,事前に定められた探索的解析では,二つの大きなコホートにおいて,betrixabanのベネフィットが示された。
コメント リスクを有した内科疾患による入院患者を対象とした期間を延長した静脈血栓塞栓症の薬物予防に関する大規模試験は,エノキサパリンを用いたEXCLAIM試験,アピキサバンを用いたADOPT試験,リバーロキサバンを用いたMAGELLAN試験のいずれも出血性イベントを有意に増加させ,安全性についての懸念が示されていた。しかし,今回のAPEX試験では途中で症例登録条件の変更はあったものの,経口抗Xa薬であるbetrixabanを用いた延長予防に関して,出血性イベントを増加させることなく一定の予防効果が示されたことは意義深いと考えられる。(山田典一

目的 ガイドラインでは,血栓塞栓症リスクが高い急性内科疾患患者に対し6~14日間の低用量非経口抗凝固薬投与を推奨しているが,退院後の治療期間延長はするべきではないとしている。しかし,退院後1ヵ月は静脈血栓塞栓症(VTE)リスクが顕著に上昇するとされ,至適治療期間は不明である。本研究では,急性内科疾患患者において,betrixabanの有効性および安全性を検討した。有効性主要評価項目:day 32~47の無症候性近位部深部静脈血栓症(DVT),day 1~42の症候性近位部/遠位部VTE,症候性非致死的肺塞栓症,VTEによる死亡。安全性主要評価項目:試験薬中止から7日後までのISTH出血基準大出血
デザイン 無作為割付,二重盲検,ダブルダミー試験。NCT01583218。
セッティング 多施設(460施設),35ヵ国。
期間 登録期間は2012年3月~2015年11月。
対象患者 7,513例。40歳以上,急性内科疾患(心不全,呼吸不全,感染症,リウマチ性疾患,脳梗塞)のため入院してから96時間以内,可動性制限がありVTEのリスク因子を有している患者。2014年6月4日にプロトコールを変更し,Dダイマー上昇または75歳以上の患者を対象とした。
【除外基準】-
【患者背景】平均年齢はbetrixaban群76.6歳,enoxaparin群76.2歳。各群の男性45.4%,45.8%。平均BMI 29.2kg/m2,29.5kg/m2。白人93.2%,93.7%。急性内科疾患:心不全44.6%,44.5%,感染症29.6%,28.2%,呼吸不全11.9%,12.6%,脳梗塞10.9%,11.5%,リウマチ性疾患2.9%,3.1%。Dダイマーが正常値上限の2倍以上に上昇62.3%,62.1%。
治療法 地域(北米,欧州など),コホート1(ベースライン時のDダイマー上昇[[正常値上限の2倍以上])またはコホート2(コホート1+75歳以上),腎障害度など24の基準で層別化後,以下の2群に無作為割付。
betrixaban群:3,759例。負荷用量160mg投与後,80mg 1日1回,35~42日間投与+プラセボ皮下注。
enoxaparin群:3,754例。40mg 1日1回,10±4日間皮下注+プラセボ経口投与。
重度の腎不全患者では,試験薬を50%減量した(betrixaban負荷用量80mg+40mg,enoxaparin 20mg)。また,P糖蛋白阻害薬併用例ではbetrixaban 40mg 1日1回投与とした。
追跡完了率
結果

●評価項目
いずれかの解析にて群間差が有意でない場合,その他の解析は探索的とみなすとしていた。有効性主要評価項目について,コホート1で有意差を認めなかったため,コホート2および全コホートの解析は探索的とみなした。
コホート1:betrixaban群132/1,914例(6.9%),enoxaparin群166/1,956例(8.5%),RR 0.81,95%CI 0.65-1.00,p=0.054。
コホート2:160/2,842例(5.6%),204/2,893例(7.1%),RR 0.80,0.66-0.98,p=0.03。
全コホート:165/3,112例(5.3%),223/3,174例(7.0%),RR 0.76,0.63-0.92,p=0.006。
大出血は両群で同程度であった。
コホート1:betrixaban群15/3,211例(0.6%),enoxaparin群17/2,310例(0.7%),RR 0.88,0.44-1.76,p=0.72。
コホート2:25/3,402例(0.7%),21/3,387例(0.6%),RR 1.19,0.66-2.11,p=0.56。
全コホート:25/3,716例(0.7%),21/3,716例(0.6%),RR 1.19,0.67-2.12,p=0.55。
頭蓋内出血はbetrixaban群2例,enoxaparin群7例,致死的出血は両群各1例。
全例における正味の臨床転帰(有効性+安全性主要評価項目)はbetrixaban群179/3,112例(5.8%)で,enoxaparin群233/3,174例(7.3%)より少なかった(RR 0.78,0.65-0.95,p=0.01)。

●有害事象

文献: Cohen AT, et al.; APEX Investigators. Extended Thromboprophylaxis with Betrixaban in Acutely Ill Medical Patients. N Engl J Med 2016; 375: 534-44. pubmed
関連トライアル ADOPT, ADVANCE, ADVANCE-2, AMPLIFY, CASSIOPEA, EINSTEIN-DVT and EINSTEIN-Extension, EINSTEIN-PE, ENGAGE AF-TIMI 48 dose and outcomes, Hokusai-VTE, Hokusai-VTE East Asia patients, LIFENOX, MAGELLAN, ODIXa-HIP, ODIXa-KNEE, Palareti G et al, PREVAIL, PREVENT 2004, PROTECT, RE-MODEL, RE-NOVATE, RECORD1, RECORD2, RECORD3, RECORD4, SAVE-KNEE, SAVE-HIP1, SAVE-HIP2, SAVE-ONCO, 内科疾患患者に対するVTE予防薬延長投与
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