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PEGASUS-TIMI 54 time from P2Y12 inhibitor withdrawal
結論 リスク因子を1つ以上有する心筋梗塞既往患者において,長期二次予防としてのticagrelorのベネフィットは,心筋梗塞後2年以上安定している患者やP2Y12阻害薬を1年以上服用していない患者にくらべ,P2Y12阻害薬の投与を継続した患者または投与を中止しても短期間で再開した患者のほうが大きいようであった。ticagrelorによる出血イベントの増加は,経過日数に関わらず同様であった。
コメント  PEGASUS試験では心筋梗塞後1年以上経過した症例において,アスピリン単剤よりもアスピリンとチカグレロールの併用により,心血管イベントリスクが低下し,重篤な出血イベントが増加することを示した。ランダム化前にはアスピリン単剤になる前に,抗血小板併用療法下にあった症例も多い。そのうち,P2Y12受容体阻害薬を直近に止めた症例では,リバウンド的に血栓イベントが上昇している可能性があると考えた。チカグレロールは出血を増やして血栓を減らす薬剤であるため,血栓イベントの高い症例において絶対的なメリットが大きい。PEGASUS試験のデータベースでは,P2Y12阻害薬を1年以内に中止して試験に参加した症例が約1万3千例いた。1年以上前にP2Y12阻害薬を中止した約5,000例と比較すると,近い過去に中止した症例のイベント発症率は高かった。特に,30日以内に中止した症例のイベントリスクは高かった。この結果は,1年以上経過した症例でもアスピリン・チカグレロールの併用群にて心血管イベント発症リスクが低かったとのPEGASUS試験の結果とも相同性がある。必ず出血が増えるとわかっているが,心血管イベントは減ることが示された薬剤をいつまで継続するか?の問題はランダム化比較試験の結果以上に個別の臨床医と患者の選択と考える。(後藤信哉

目的 PEGASUS-TIMI 54では,ticagrelorは心筋梗塞既往患者の主要有害心事象(MACE)発症率を15~16%減少させた。本解析では,P2Y12阻害薬を最近中止した患者では,心筋梗塞発症後数年経過した患者も含め,MACEリスクが著しく高くなり,治療の継続または再開がとくに有用となるという仮説を検証した。有効性主要評価項目:主要有害心事象(MACE;心血管死,心筋梗塞,脳卒中の複合)。安全性主要評価項目:TIMI出血基準大出血
デザイン
セッティング
期間 追跡期間は3年。
対象患者 18,761例。PEGASUS-TIMI 54登録患者(自然発症心筋梗塞の既往を有し,他に高リスクを1つ以上有する)21,162例のうち,割付前のP2Y12阻害薬の最終投与の記録がある症例。
【除外基準】登録時にP2Y12阻害薬を必要としている,または必要すると考えられる症例など。
【P2Y12阻害薬中止後の経過日数別の患者背景】年齢中央値は≦30日群65歳,>30日~1年群65歳,>1年群66歳*。それぞれの女性22%,23%,23%。臨床的特徴:高血圧78%,76%,76%(p=0.012),高脂血症80%,76%,77%*,糖尿病33%,30%,31%*,多枝冠動脈疾患68%,60%,58%*,当該心筋梗塞に対しPCI施行92%,87%,87%*,eGFR<60mL/分22%,22%,23%。*p<0.001
治療法 PEGASUS-TIMI 54は90mg群(ticagrelor 90mg 1日2回投与),60mg群(同60mg 1日2回投与),プラセボ群に無作為割付。全例にaspirin 75~150 mg/日を投与した。
本解析では,対象患者をP2Y12阻害薬中止後の経過日数により≦30日:7,181例,>30~360日:6,501例,>360日:5,079例の3つに分け,解析した。
追跡完了率
結果

●評価項目
プラセボ群では,P2Y12阻害薬投与を最近中止した患者は中止後>1年の患者にくらべ,リスク因子をより多く有していたが,多変量補正後もMACE発症リスクが高かった(傾向p=0.0097)。
中止後≦30日:HR 1.47,95%CI 1.12-1.93,p=0.0051。
中止後30日~1年:HR 1.28,0.98-1.67,p=0.073。
ticagrelor群(2群を統合)のプラセボ群に対するMACE抑制効果は,P2Y12阻害薬投与中止後の経過日数に依存した(投与中止後≦30日:HR 0.73,0.61-0.87,投与中止後30日~1年:HR 0.86,0.71-1.04,投与中止後>1年:HR 1.01,0.80-1.27,交互作用の傾向p<0.001)。
また,投与中止後≦30日のベネフィットは,心筋梗塞発症後の経過日数に関わらず一貫していた(<2年:HR 0.73,0.60-0.89,≧2年:HR 0.71,0.50-1.00)。
TIMI出血基準大出血は,ticagrelor群(2群を統合)で,プラセボ群に比して増加したが,P2Y12阻害薬中止後の経過日数による差はみられなかった(投与中止後≦30日:HR 3.36,1.91-5.92,投与中止後30日~1年:HR 2.89,1.69-4.94,投与中止後>1年:HR 2.67,1.43-4.98)。

●有害事象

文献: Bonaca MP, et al. Ischaemic risk and efficacy of ticagrelor in relation to time from P2Y12 inhibitor withdrawal in patients with prior myocardial infarction: insights from PEGASUS-TIMI 54. Eur Heart J 2016; 37: 1133-42. pubmed
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